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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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俺が頑張るしかないのか

天文17年(1548年夏)17歳


「旅行なんてね! ダメ! ダメ! ダメよ! 絶対ダメ! そんな遊びなんて……この国を統一してからにしなさいよ!」


「豊穣神様、ここから先は私がやらなくても、信長が西を、氏親が東をまとめてくれるはずです。少し時間が掛かるかもしれませんが、この時代のことはなるべくこの時代の者に任せる方がいいと思います……いかがでしょうか……」


「ダメと言ったらダメよ! 私が転生させたあなた……そのあなたが……この国を統一して……民を幸せにする……それでないとダメに決まっているでしょ! でないと、私が頑張ったことにならないでしょ! 私の功績にならないでしょ! そんな事……分かるでしょ!  世の中そういうものよ……しっかりしてほしいわね!」


でしょ、でしょ……て、言われてもな……

まあ神様だしな。仕方ないか。


「……そういうものなのですね? ……分かりました。では、もう少しだけ、もう少しだけですよ。頑張ります」


「もう少しだけ! 最後までよ。最後まできっちり頑張りなさいよ! いいわね!」


『最後まで』って……どういうこと? もしかして、死ぬまで……やらせるつもりなの! 人助けで死んで……転生したのに…… すごく損した気分。忙しいばかりの人生だよな。


それに……死ぬまで頑張ったりしたら、この国の外まで飛び出していくことになるぞ。日本だけでなく、世界の歴史まで変わっちゃうぞ! 世界規模で歴史を弄くって良いのだろうか?


そもそも豊穣神様って……この国が担当じゃないの? 他の国まで影響及ぼしたら、その国の神様に怒られるでしょ? この神様は、どこの国まで担当しているのかな?


「問題ないわよ」


短い回答だな……俺の心の声も聞こえている訳ね。転生した当初、俺には大して興味を持っていなかったのにな! 期待もしていなかったのにな!


「今はあなたに期待しているわよ」

「そうですか。大変ありがとうございます」


思い起こせば、ここまで俺は良く頑張ったと思うよ!

頑張った人は休暇を楽しんで良いよ……とか、少しくらいご褒美があっても! 優しさがあっても! いいと思うよ。


……この切実な心の声には反応なしなのか!


「信長はこの時代きっての英傑です! 私なんかより、ずっと、ずっと優秀です。私は本当にただの人。そこらにいる普通の人です。やっぱり英傑に任せた方が……」


「本当に英傑だと思っている……」

「そりゃね。確かに……信長だって完璧ではないですよ。しかし頭脳明晰で決断力もある。カリスマ性もあるから癖のある部下も、喜んで彼に従っていますよ」


「それだけではないわよね」

「……心が多少ですが……若干繊細なところがありますけど……部下にとってはそこが魅力になっていまして……」


「それで……」

いくさで人をたくさん殺すと、繊細な心に多少……」


「多少……なに?」

「心が多少病むかも……」


「あなたは、たくさん殺してきたけど心を病んでいないわよね」

「……」


あれ……待てよ……じゃあ俺はどういう人間? 鈍いのか? 

それとも、戦国時代は転生先だから現実感がないとか!


そんな訳ないだろ! 俺だって人間だよ! 罪の意識はある。心の負担もあるに決まっている。たくさんの人を楽しんで殺せる訳がないだろ。だけどね、何もしなければ罪なき民が無意味に死んでいくのだ! 誰かがやらないといけないでしょ! 仕方がないでしょ! だからね。無理してやってきたのだ。


「信長は心が弱いの! 頭が良いだけじゃダメなの。信長は、あなたの部下でいる方が能力を発揮できるのよ。氏親なんか、あなたより凡人じゃないの!」


神様! 言い切っちゃったよ……


確かに、俺の責任で大量殺人をやっているから、信長は心に負担を感じることなく、恵まれた才能と勤勉さを発揮できているのだろうな。


ちくしょう論破するなよ。やります。やりますよ! 


仕方がない、やらないといけないことは、さっさと済ませようか。

軍師の勘助と幸隆、それに将軍の信長を交えて、日本統一に向けた戦略会議だ!

いらつく俺とは違い、3人とも楽しそうな顔をしているな。


俺に……休みを寄越せよな……


「まずは西国の現状確認だ。忍者調査隊や正直屋系列店からの報告によると、数カ国を治めているような大名は大内家、尼子家、大友家、三好家の四家。勢いがありそうな家は、島津家、龍造寺家、毛利家、長宗我部家といったところ。それ以外の大名は、小規模な大名ばかりだ」


「西国の大名たちの状況だが、相変わらず領地争いを繰り返している。この国は、どこでも同じことをやっているな。いくさをすれば農民兵が死ぬ、農民兵が死ねば、米を作る人が減る。作る人が減れば米の収穫が減る」


「米の収穫が減るから、他領にいくさを仕掛けて米を奪う。いくさで農民兵が死ぬ。この繰り返しを、ダラダラと繰り返しているだけだ。その間に民だけが疲弊して無意味に死んでいく。大バカ野郎たちだよ!」


「領地経営はできない。搾取するしか脳がない。そんな大名に国の土地を私有化させ、勝手放題やらせていてはダメだ。無能な大名たちには、さっさとこの国から退場してもらわないといけない」


「信長! 今の段階で、将軍家である北畠家から『臣従せよ!』と、西国の大名に命令すればどうなると思う」

「忍者調査隊の調査によれば、ほとんどの大名が臣従したがっているようです」


「彼らが臣従したがる理由は何だろう?」

「西国の大名が臣従するだけでは、不十分なのですか?」


「西国の大名が早く臣従したがる理由が問題なのだ。彼らは北畠幕府も室町幕府と同じ道をたどると見ている。『早めに臣従しておけば領地は安堵される。どうせ起こる北畠幕府内部の権力争いに上手く介入できれば、自領も権力も増やすことができる』というのが奴らの考えだ」


「確かに、彼らを無条件で臣従させるわけにはいきませんな。土地の領有を認めず、役職と仕事に見合った収入を銭で支払う仕組み――これに従わせることを絶対条件にする必要がありますな。つまり奴らから、領地を全て取り上げなければなりません」と勘助。


「その条件に従わせるのは難しいだろうな! 『先祖代々命を賭けて切り取った領地を何だと思っているのだ!』と怒り狂うに決まっている。『領地を取り上げられても、臣従するしか選択肢がない』と大名に諦めてもらう何かが必要だろう」


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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