表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/26

03 彼氏の顔も思い出せず、どうやら恨んでいると思われる相手を受け入れざるを得ない。

 まって!まって!!私彼氏・・・いるよね?

 これも浮気になる?

 いや、ちょっと待って、私結婚したから彼氏のほうが浮気?!


 現実逃避するのはこの辺にして現実を直視しなくちゃ。


 ハルバートの銀髪サラサラロングヘアーに紫の瞳って何?

 日本人みたいに薄い顔じゃ・・・日本!!そう、日本よ!!私が居たのはっ!!

 いや、日本は置いておいて、ハルバートの顔の話よ。

 いや、日本も大事!!


 ハルバートってば、日本では出会えない西洋の造形美!!私の知る俳優様方よりも美しい。

 きっと脱いでもご期待に答えます。な体のはず。

 因みに今の私の瞳はグリーンよりの青。


 じっと見上げる私を不審に思ったようでハルバートが私を見下ろし問いかけてきた。

「なんだ?」

「いえ、何でもありません」

 慌てて首を振り、視線を外す。


 ユリアーノはハルバートと初夜を迎えるくらいなら死んだほうがましだと思っている。事が伝わってくる。

 その他のことは、好悪の感情くらいしか解らないのだけど、ハルバートを強く拒否していることだけは解る。


 私、ハルバートと寝られる?

 まぁ、体は私のものじゃないし・・・。

 私にはそこまで強い拒否感はないんだけど・・・。


 彼氏、裏切ることになっちゃうよね?

 彼氏の名前も顔も思い出せないけど・・・。


 ハルバートにこそ中身が入れ替わっていることを相談すべきなんじゃないかしら?

 でも元々愛し合っているような雰囲気でもないし・・・。

 どうすればいいんだろう?

 でも、ユリアーノじゃないみたいだって言ったくらいにはユリアーノのことを知っているのよね?


 ハルバートとの初夜・・・まぁ、できなくはないと思う・・・けど・・・。

 それでいいのかっていう思いがある。

 ハルバートはちょっとありえない程の男前だし・・・。夢見心地に済ませれば・・・。

 ちょっと節操がないかな?


 彼氏の顔と名前が思い出せなくてちょっと凹んだ。

 けれど、思い出せないのは罪の意識を感じなくてちょうど良かったのかも知れない。

 ユリアーノはハルバートを絶対受け入れられない。  

 今にも死にそうな気分になっているもの。

 頭では理解していても心が受け付けられない感じ。だと思う。


 あれ?ユリアーノの感情が解るって事はユリアーノと一つの体で同居している状態なのかな?


 私があれこれ思考を飛ばしている間に、一通りの挨拶は済んだのか、人の波が少し遠ざかった。ほっと一息つく。

 近づいて来る人を見て瞬きをする。

 ハルバートの背後にハルバートの側近、ランドールが現れ、飲み物を渡してくれる。

「ありがとうございます」

 ランドールは私の礼に驚き「いえ」とだけ答えてハルバートに耳打ちした。


「陛下がいらしたそうだ」

 陛下?!

 陛下って王様ってことだよね?

 そんな人が結婚式に来るくらいの地位があるってこと?!

 陛下を思い出そうとしたけれど思い出せない。

 陛下が目の前に現れて、初めて陛下だと認識した。

 陛下とユリアーノは個人的にも付き合いがある・・・。

 それ以上は思い出せなくて、諦める。


 やっぱり会わないとその人のことは思い出せないのかな? そして王命を受けた時の事を思い出した。

 陛下がこの結婚の原因なんだ・・・。


 私、この先ずっとユリアーノとしてやっていくことになるのかな?

 それともまた何かのきっかけで金神夏弦に戻れるのかしら?



「陛下、態々(わざわざ)のお越しありがとうございます」

 ハルバートが礼を述べ、私は日本人の癖で頭を下げそうになり、慌てて膝を折る。


「オリステーレとコンチェスタの婚姻だからな。来ないわけにはいかないだろう?」

「ありがとうございます」

「仲良くな」


 その言葉には複雑な思いがいろいろ混じっている感じがした。

 私の顔をじっと見て、何かを諦めるように目を伏せ、それだけで陛下は退場していった。


「お見送りしなくてもよろしいのですか?」

「今日は私達が主役だからな。親達が見送っているだろう」

 お父様、陛下に無礼討ちされてなければいいけど・・・。


 私は納得して一口、ワインを飲んで喉を潤した。

 お酒を渡されたことで、ユリアーノは成人しているのね。となんとなく思った。

 ただ、ここの世界の成人が何歳なのかが解らないんだけど。



 ほとんど記憶もないのにお式、披露宴、陛下との謁見?が無事終わって私はハルバートに連れられて、オリステーレの屋敷についた。

 馬車に初めて乗りました。

 サスペンションがない乗り物がここまでダイレクトにお尻に来るとは思ってもいませんでした。

 この後、初夜も待ってるんだよね?

 もう、クタクタです。眠りたい・・・。



 屋敷に着くなり前を歩く義母が口を開く。

「本当に信じられないわ!コンチェスタとの婚姻なんて!」

 その一言で義母の後を歩いていたハルバートの妹のヴィレスタが青ざめたのが目の端に映った。


 義父が義母をなだめるように溜息ひとつついて口を開いた。

「マリアンネ、この婚姻に不平を漏らすようなことはしてはいけない。懲罰がある。当主の妻として、母としての義務を果たしなさい」

 義母は唇を噛み、忌々(いまいま)しそうに私を睨みつけた。

「解っていますわ」


 王命に反すると懲罰があるのか・・・。

 当然だよね。いきなり死刑とかあるのかな?

 当然、初夜、拒めないってことよね?

 そこは二人の問題?

 ユリアーノは受け入れられないけれど、ハルバートの気持ちは正直解らない。


「私たちは部屋へ引き上げるよ」

 義父が私達に声を掛け、私は感謝を伝える。

「今日はありがとうございました」

 義父はにっこりと意味深な笑みを残して義母と二人で階段を上がっていった。


 ヴィレスタは私の顔をうかがっていたが、ハルバートが私を呼んだ事で、諦めたように階段を登っていった。


「ユリアーノ、こっちだ」

 ずらりと並び立つ家人(けにん)たちにハルバートが告げる。

「ユリアーノは私の妻だ。敬うことが出来ない者はさっさと辞めるがいい。二度同じことを言わせるな。お前たちの仕えるべき主の一人だ。解ったな?」

「はい」


 (うやうや)しく膝を折っているが、一体何人がその言葉に従うのだろう?

 アウェイ感が半端ない。


「よろしくお願いしますね」

「ララ」

 三十歳くらいのメイドが一歩前へ出てきた。

「ユリアーノの専属メイドだ。(うち)に勤めて長い。道理も解っている。何でも言うがいい」

「ありがとうございます。ララ、よろしくね」

 ララは膝を折り、了承した。


 ララに言われるまま私の部屋に案内される。

 落ち着いて考える時間が欲しいと思っているが、私の望みは叶いそうにもない。


 楽な服に着替えさせてもらって、軽い食事を提供され、紅茶を飲み、一息ついた。

 この何がなんだか解らない状態で初夜を迎えることになるんだろうか?

 回避できるものなら回避したいんだけど・・・。 


 初夜のことを考えるとユリアーノの強い反発を受けた。嫌なら意識を閉ざしているといいよ。と心の中で思う。

 暫くするとユリアーノの感情を感じられなくなってしまった。


 浴室くらい一人になりたいと思ったけれど、浴室のほうが人口密度は高かった。

 三人につきっきりで全身くまなく洗い上げられた。大人になって人に体を洗われることがこんなに恥ずかしいなんて!もう羞恥で死にそう・・・。

 

 髪を乾かし整えられ・・・

 ちょ、ちょっと待って!!

 今、なにげに呪文のようなもの唱えなかった?

 それで何もないところから風が吹いて髪を乾かしたよね?

 えっ?なに?ここって魔法がある世界なの?!


 って言うことは地球じゃないってことよね?!!


 内心、パニック発作を起こしているような状態になっているけれど、鏡に映るユリアーノはほんのちょっと顔がひきつっている程度。

 私も魔法が使える?

 そのことに思い至ってちょっとワクワクした。


 バスローブを脱がされ、ベビードールのようなネグリジェを着せられ、その上にナイトローブを羽織らされた。

 因みに紐一本解いたら、裸体になる仕様のネグリジェである。


 夫婦の寝室にララに案内される。

 なんかこう、今からやります感が強くてちょっと恥ずかしくて、引く。

 

 ハルバートはバスローブ一枚の姿で、やる気満々のようだ。

 これは初夜は避けられないようね・・・。

 真面目に腹を括らなくてはならないみたいだ。 


 氷だけが入った空のグラスを差し出され、受け取ると薫り高いブランデーのようなものが注がれる。

 ユリアーノは成人、間もないよね?さすがにロックはキツくない?

 喉乾いているし、せめて水割りとかにしてほしいんだけど。


 私はハルバートに渡されたグラスをナイトテーブルに置き、別のグラスに水を注ぎ半分ほどを飲んだあと、ハルバートに渡されたグラスに持ち替え、口をつけた。


 超高級品だ・・・美味しい・・・おかわり欲しい・・・!!


 ハルバートは私の一挙手一投足見逃すまいと私を見つめ続けている。

「緊張している花嫁に何も言葉をかけてくださらないのですか?」

「どんな言葉をかけてもお前を傷つけることに、変わりないだろう?」


 ほんの少し自嘲気味に聞こえたのは私の気のせいだろうか?

「優しい言葉を掛けられて嫌がる女は少ないですよ」

「ふっん。それも相手次第だろう?」


「折角結婚したのですもの、私は幸せになりたいですわ」

 ハルバートの目が見開かれ、驚愕の表情になる。

「私と幸せになれるのか?」

「幸せにはしてくださらないのでしょうか?」

 私はグラスの酒を飲み干し、グラスをナイトテーブルに置いたのが合図になった。


 

 ハルバートの想像以上の情熱的な夜に私は驚き続けることになった。

 初心者相手にこれはないわ〜とも思ったけれど、ハルバートに余裕ができたのは夜も深い時間になってからだった。

 貪られ、食い尽くされるような激しい時間が終わり、一息つくと、第二幕があけられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ