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21、本当の気持ち



 はあああああ。


 ミラに心配をかけないように、心の中で大きく溜め息をつく。


 昨日は気分転換に図書館に行くつもりだったのに、余計にややこしくなってしまった気がする。



 うーん。

 本当にこのままヘレナとエリック様の婚約がまとまっちゃったらどうしよう。


 バッドエンド回避のためには、メアリー様と結ばれるのが一番いいと思っていたんだけど……。


 そう思うと、心に痛みが走る。


 また……。

 昨日と同じ、私の心は()()にも抵抗を感じている。



 しかしこの先の展開は一体どうなってしまうんだろう。

 

 だってロジャーがなぜか私を気に入ってくれている時点で、もうすでに小説の展開とはかなり違っている。


 そこへ、エリック様がヘレナとの婚約話まで出てきた上に、メアリー様はなぜかエドワード殿下と距離を縮めて行っているようで。



 ……こんなに展開が違うってことは、ひょっとしてメアリー様と結ばれなくてもバッドエンドが回避できるのかな?


 元はといえば、メアリー様を取り合うことが原因のバッドエンドだもんね。

 それじゃあメアリー様と結ばれなくても平気ってことなのかな。


 そう思った途端に気持ちが軽くなる。



 あ、でもヘレナとの婚約話は実際に進んでしまってるのよね……。


 また現実に引き戻されるかのように気持ちが沈む。


 心の浮き沈みを上手にコントロールできない。


 ああ、あっちもイヤだこっちもイヤだと思っている自分にも、状況を都合よく解釈している自分にも、少し嫌気が差す。



 悶々と考えていると、ミラが部屋に入ってきた。


「レイラお嬢様、今メアリー王女様の侍女の方がいらしてお茶のお誘いを受けたのですが……」


 私は思わずガバッと立ち上がり答えた。


「メアリー様が?! うん、すぐ行く!」




◇◇◇




 二つ返事で私はメアリー様に会いにきていた。


 数日ぶりにお会いするメアリー様は相変わらず愛らしい。



「レイラ、この前はその……大丈夫だった?」


 メアリー様は気遣うような表情で私を見つめる。


「ええ、はい! 私は元気です」


 この前、殿下の執務室で話した時、逃げるようにして帰ってしまったものね。


 メアリー様に心配をかけたくなくて笑顔で答えた。


「殿下にはたっぷり怒っておいたから」

 そう言って、メアリー様はその可愛らしい顔に真剣な表情を浮かべている。



 私のことを心から思ってくれていることが伝わってきて心が温まった。


 そして、メアリー様に怒られる殿下の姿を想像して少し笑ってしまう。

「ふふ」


 そんな私に気づいたのか、メアリー様もつられて笑い出す。


 二人でくすくす笑い合った後、メアリー様は徐に口を開いた。


「私、殿下をお慕いしてるの」

 そう恥ずかしげに、でもはっきりと言った彼女の顔はとても優しい。


 それを見た瞬間、私の心は安堵する。



 よかった……!

 私は強くそう思ってしまった。



 殿下とメアリー様の言動から二人の絆の結びつきを薄々感じていた。

 それでも小説の強制力によって、ストーリーは変わらず展開していくのではないかという、正体の見えない不安な気持ちも感じていた。



 でも、メアリー様はエドワード殿下を好きになった。

 そして、エドワード殿下がそんなメアリー様を大事に想っていることは火を見るよりも明らかだ。


 その事実に私は心からほっとしていた。


 そんな自分に、もう気持ちはごまかせないのだと気づく。



 小説の展開がどうだとか、だからこれ以上踏み込んではいけないとか、そんなことはもうただの言い訳にしか過ぎなかった。


 自分を含めたみんなが、今この世界に生きる“生身の人間”で心が刻々と動いている。



 私の心は――――



 メアリー様は私の手をそっと握って言った。


「レイラも大切な人がいらっしゃるでしょう?」


「はい。……私、エリック様が好きです」



 そうだ、私……もうどうしようもなく彼が好き。

 大好きなんだ。


 気持ちを認めてしまったら、溢れてくるのは愛おしさばかり。



「きっと公爵様も同じ気持ちですよ。レイラもわかっているのでしょう?」


 メアリー様のその優しい笑顔に、声を出したら涙が溢れてしまいそうで私はそっと頷いた。



 ヘレナと婚約なんかしてほしくない。


 ううん、それが他の誰であってもそう思うだろう。



 私は、彼の傍に居たい。


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