3.誰?~選択~
満天の星空。
整った芝生をサクサクと進む。
何だか色々突然起こって、全然頭がついてこない。
何をバカなこと言ってるんだろうって思うのに、実際に見た襲われていた人々、焼けた町の姿は夢にしてはリアルすぎた。
夢だったら熱さ、痛み、匂いを感じないはずだものね・・・・・・
「そこにいるのは誰だ」
「?!」
声と共に、大きな木の陰から姿を現したのは、すらりと背は高く、。
フードをかぶっているせいで良く見えないが、切れ長のどこか寂しげな瞳が印象的な男性だ。
綺麗な深い青色。なぜか瞳がほんのり光って見える。
しまった。何となくあの神様達以外はこの神界とやらにはいないと思っていたので、油断した。
なんと説明したものか・・・・・・
「ここで何をしている。」
「私はルタといいます。えっと・・・ここに召喚された?アプサラス…天女?らしいです」
自分で説明してしてみても、意味がわからない。これまで30年以上日本の一般人やっていたのだ。
急に舞台の救世主役をやれと言われてもできるわけない。
「なっ!!そんな馬鹿な。召喚は失敗したはずだ!」
「え?」
大根役者のセリフが観客に届いたのか?
いやいや、ちがうでしょ。私自身が全くしっくり来ていない、理解不明の単語を並べたのに、
なんでこの男の人は理解できたの?
召喚のことを知っているということは、この人も神様?でもさっき皆そろってから話すっていっていたから、
紹介されなかったこの人は関係者ではない?あ、いや、サラもあとから来たから、他にも事情を知っている神様がいるのかも・・・・・・
「俺は…。貴女を欲する者だ。」
「へ?あ・・・・・・ごめんなさい。考え事をしていてよく聞こえなくて
うっ・・・・・・困った。私そんなに耳がいい方ではないのよ。聞き間違いもよくあるし。
「えっと、あなたも神様?」
「俺は・・・・・・ちがう」
微妙な間が気になるけど、神様ではない、と。
え?でもここ、神界は人間は入れないんじゃなかったけ?私は入れているけど、それは天女らしいし。
あ、そういえば馬に乗ってきたんだから、庭は意外と他の存在も入れるとか?
「今この世界でなにが起きているか教えよう、真実を」
深い青色の瞳に見つめられながら囁かれた言葉に引かれ、自然と体が動き、男へ一歩踏み出した。
ヴォヴォヴォヴォォォ———!!!
「えぇぇ?! な、なに? この声は!!」
この気持ち悪い声!人間を追いかけていたあの気持ち悪いゾンビもどき?!
突然背後から大勢のピシャーチ(食人鬼)の声が森の方から聞こえてきた。
「っつ、近い?!」
声が響いているから、正確な距離感はわからないけど近そう!
ゾンビは足が遅いって相場は決まっているが、あの惨状のピシャーチ(食人鬼)は、結構機敏だった気がする。
「私、足は速い方だけど、持久力はないのよ! この状況、背中見せては知ったら攻撃される感じ?!」
混乱しすぎて、絶対余分なこと叫んでるよね、私。
「ルタ!!!無事か?!」
「シヴァさん!!!」
私の謎の叫びを聞きつけてきてくれたようだ。かっこよすぎる!
「ピシャーチじゃねーか! こんなとこまで!!! 俺が助ける!」
声のする方を見ると、シヴァが手を伸ばしながら駆けてくるのが見える。
え。もう姿見えてるの?もう森の方見るの怖い。
「こんな所にまで現れるとは! さぁ、こちらへ! 私の傍に!!」
金髪イケメンのインドラが別方向から現れ、私に手を伸ばしている。
「まったく世話が焼ける。襲われる前にこの手をとれ」
どこから現れたのか、すぐ隣にはヴィシュヌさんが私を立たせようと、手を伸ばしていた。
「ルタさんを襲うなんてひどいじゃないか!! 僕が守るよ!!」
ひらりと目の前に軽やかに着地したのはアグニさん。
余裕のウィンクと共に伸ばされる手。
「守るとう誓いは本当ですよ。私の手を取って下さい」
ヴィシュヌさんとは反対の隣にはブラフマーさんがいつの間にか優し気紳士笑顔で現れた。
「俺には貴女が必要なんだ。来てくれ・・・・・・」
森を背に、切実に訴えてくる手と瞳。
「あなたは・・・・・・誰?」
私を呼ぶ声、求められる手。
私は心のままに彼の手を取って前へ進む———
ここがストーリの分岐点になります。