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3.誰?②

馬から降りたところは、宮殿の裏庭みたいなところだったようだ。

馬のスピードと揺れに必死にしがみついていたので、ここまでの道のりやら景色なんて全く見ていなかった。

シヴァに引っ張られながらやっと周りを見ることができた。


視界いっぱいになるほどの複数の宮殿みたいな建物が目の前にある。

アラビアンナイト?アラジンみたいな感じかな。砂漠じゃなくて森に囲まれてるけど。


どうやら先ほど話していた場所は、森を抜けて宮殿と宮殿をつなぐ渡り廊下が近くにある庭?のようになっていた。

私とシヴァはその渡り廊下を歩いて、複数ある宮殿の前に立つ。


ギィィィ———自動ドア?


重そうな大きな扉が自動で開いた。

開くと同時に中へとぐいぐい進むシヴァさん。


宮殿かと思ったが、ここはどうやらホールのような感じだった。

シヴァを見つけると1人の男の人が駆け寄ってきた。


「シヴァ!無事だったんだね!!よかったぁ。心配してたんだよ」

「アグニ。俺は心配されるほど弱くねぇよ!」

「わかってるよー。でも何が起きるか分からない状況だもの。心配くらいするさ」


「あれ?そちらのお嬢さんはどうしたの?」

「はじまして。僕はアグニって言います」


ニコニコっと優しい笑顔を向けられて、なんだかほっとする。


・・・しかし、お嬢さんとは、私のことだろうか。私、30代ですけど。日本人は童顔だからお嬢さんでも良いのなのだろうか。

アグニさんは、大きくて丸い瞳が可愛い。明るくて気さくな元気な青年って感じ。

こんな人にお嬢さんと呼ばれるのは、なんだかつらい。


「私は弓月 瑠舵 (ゆづき るた)といいます。えっと・・・・・・シヴァさんに助けてもらったんです」

「へぇ。シヴァが人助けねー。って・・・・・・え?!ルタさんなの?」


「はい。え? 名前が何か?」

「僕達、君を探していたんだよ!! やった!! 君に会えて嬉しいよ!!」

「??? 私に?!」


アグニさん達は『ルタ』を探していた?


「アグニ。そんなにグイグイ女性に迫るものではないよ」


混乱している私に抱きつこうとしていたアグニさんを止めるように声が聞こえた。


「はじめまして、ルタさん。私はブラフマーといいます」


ブラフマーさんはとても穏やかで、優しい紳士的な雰囲気をまとっているイケメン。

でも、赤いルビーのような瞳は蠱惑的だ———ここにはイケメンしかいないのか。それとも私の目が良い意味で悪くなったのか・・・


「アグニの言うとおり、私たちは君を探していたんだ。この世界の為にね。本当は直接ここに召喚することが出来たはずなのに邪魔が入ってしまったんだ」


優し気な瞳で、申し訳ないという雰囲気で謝罪されてつい流されそうになったけど、内容がそれを許してはくれない。


「えっと・・・・・・召喚?」


しょうかん?召喚ってあの、漫画やアニメ、ゲームや小説とかに出てくるあの、『召喚』であっているのあろうか。


「ブラフマー。どういうことだよ。俺も聞いてないぞ」

私がフリーズしていると、シヴァが話に入ってきた。


「お前は勝手にどこかに行っていただろうが!」

インドラさんはツッコミ担当なのかしら・・・・・・『召喚』について考えるのをやめて、イケメンの絡みがみたい・・・・・・


「ブラフマー、ついでだ。順を追って説明してやたらどうだ」

早々に逃避し始めた私の思考を、あとから追いついてホールに入ってきたヴィシュヌさんの声が引き戻す。

ヴィシュヌさん、自分で説明はしないのですね。


「そうだね。さて・・・・・・どう説明したものか」

「まずは私たちのことを説明する必要があるかと。彼女は人間ですから」


インドラさん、シヴァさんに対する話し方と全然違うね。


「うん、そうしよう。インドラよろしく!」

「・・・・・・、わかりました。」


・・・・・・ブラフマーさん、見た目とちがってそんな感じなんですね。

それとも、インドラさんがそういうポジションなのか・・・・・・


「ルタ殿、よいか?」

「はっ、はい!」


いけない、いけない。つい現実逃避しようとしている。集中しなくては。


「今、ここに居る、ブラフマー、ヴィシュヌ、アグニ、シヴァ、私インドラ5人は神だ」


「・・・・・・」

「聞こえているか?」

「き、聞こえてはいます。神様・・・・・・ですか。神様って、あの、人が崇めたり、祈りをささげる対象のとされている神様ですよね?」


「そうだ」

そうだって言われた・・・・・・


「我々はインドの神。そしてここは人間界ではなく、神々が住む神界だ」


神界・・・・・・ドラ●ンボールとかで似たような・・・・・・あ、あれは界王神界か。

転生もののでよくある、神様と会話する空間的なアレかしら。それとも多次元的なことだろうか。

というか・・・・・・


「えっと、その、なんでインドの神様たちが私を?」


そもそも、私の知ってるインドの神様たちとヴィジュアルが違う。

そんなに詳しくはしらないけれど、シヴァ神といえば、青い肌の破壊と再生の神とかだった気がするし。

そこで不貞腐れた感じで話を聞いている、ねこっ毛イケメンではない。


「それは君がアプサラス。つまり天女だからさ!」


ニコニコイケメンのアグニさんがさらに謎を深める単語を言う。


「アプサラス?天女?」


「シヴァも何か感じたから彼女を連れて来たんでしょ?」

「あぁ。普通の人間にはない、独特の力を持ってるのを感じる」

「まだその力は眠っているみたいだけどね」


「そう。その力が必要なんです」

ブラフマーさんがキラキラの笑顔を向けてきた。

なんか、ブラフマーさんよ。はじめの優しい紳士憂い顔はどこいった。


「あの・・・・・・・とりあえず、私に隠された力あると思って、召喚したといことでしょうか?」


「・・・・・・そうだ。力といっても不老不死や、自然を操る力なのではないぞ。祈る力だ」

ブラフマーさんが続きを説明する様子がなかったので、インドラさんが説明の続きを話し出した。


「祈る力?祈ることは誰でもできますよね?」

「いや。ただ祈るのではない。君の祈りは、我々神の力を増幅する効果があるのだ。他の人々の祈りも力になるが、君の祈りは比較にならないくらい強い力になる」


「比較にならないほどの力・・・・・・実際その増幅の力があるかないかは置いておいて、そんな強力な力が必要なのですか?」


「残念ながら、力は必要なんだ。神が相手ともなればね」

再び優しい紳士憂い顔のブラフマーが気になることを言う。


「敵の神様?」

「・・・・・・我々が今戦っているのは、ヴィローチャイ率いるアスラ一族。人間界、神界を我が物にしようとしているのだ」


「奴らは神の力を削ぐために、ピシャーチという食人鬼を使い、力の源である人間たちを襲っている。なんとも・・・・・・卑劣な奴らだ」

それまで黙っていたヴィシュヌさんが苦々しく言う。

さらりと流れる闇夜の髪が美しいな・・・・・・なんて現実逃避している場合ではない。



「ほんと・・・・・・ひどいよね。みんな何も悪いことにてないのに」

明るいアグニさんもつらそうに言う。


「そんなことが本当に・・・・・・」

「あるんだよ。さっき自分の目で見ただろ」


あ。そうか。

私がシヴァさんに助けられたのは、まさにその現場だったのだ。


「だから僕たちは君を探し出し、協力してもらいたくて召喚したんだ。それをアスラ一族に邪魔されてしまった。

すでに怖い思いをさせてしまったのに申し訳ないが、協力してくれないだろうか。今度は必ず君を守ると誓うよ」


コロコロ雰囲気が変わるブラフマーさんが、スッと真剣な顔になって話す。


神様?私が世界を救う?アスラ一族…訳が分からない。確かに見たし聞いたけど・・・・・・

なんて返事をすればいいの?

正直、協力します!って言う選択肢以外ない雰囲気なのは察している。

でも、すんなり引き受けるのも違う気がする。駆け引きとか、そんなことじゃなくて・・・・・・・


「皆さん何を話合っているのです?」


女性の声にハっとして振り向くと、見たことのない美しい女性がいた。

清流のような淡い水色の髪はゆるくウェーブし、優しい微笑を浮かべた金色の瞳と桃色の唇は女性としての魅力にあふれてる。


身体から余分な力が抜ける。

私が言葉に詰まっていたのはほんの一瞬だったと思うけど、全身に力が入っていたみたい。


「サラ。彼女がアプサラスのルタさんだ」

「まぁ!ブラフマーさま、こちらの方が? 救いの天女アプサラスさん!お会いできて嬉しいわ。私はサラスヴァティ―。サラと呼んで下さいね」


「サラさん、よろしくお願いします。私のことはルタと呼んでください」


「ふふっ。さん、はいらないわ。ね?ルタ」

「わかりました。サラ」

美しい女性のお願いは、難しいお願いじゃない限り、絶対降伏した方が安全だとこれまでの人生で学んでいる。


「ところで、お茶にしません?ルタは疲れているんじゃない?」

「ええ…助かります」

さすが、気遣いがありがたい。そう。まず、情報整理がしたい。


「では、お茶の準備してきますわ。ルタは殿方にエスコートしてもらってゆっくり来てくださいね」

くるりと踵を返すとサラはホールを出て行ってしまう。


「ははっ、では私がお連れしましょう」 「おい!」

スッとブラフマーさんが手を差し出してくれた。被せるようにシヴァが何か言った。


しかし・・・・・・


「あの、その前に私ちょっと外の空気を吸いたいのだけどいいですか?」

「?ええ。いいですよ。あまり遠くに行かないようにしてくださいね」

「はい」


サラは「ゆっくり」と言ったのだ。すぐに向かっては追いついてしまうだろう。

それに、1人になりたい。

私は頭の回転が速いわけではない。今話してもらった情報だけで、頭が許容量をオーバーしている。


ホールを出て渡り廊下から外れ、考えながら1人で庭を進で行く。


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