0.赤い空
赤い空———
寂しげに日が暮れていく。間もなく一日の終わりを告げる夜がくる。
仕事からの帰り道、駅から家までの間にある橋の上。
下にはゆっくりと流れる川がある。
何の変哲もない繰り返される毎日。
殺風景な家の周辺で、唯一気に入っているのがこの橋の上から見る景色。
今日は他に歩いている人もいない。
橋の上で足を止めて、夕日に照らされて赤く輝く川をぼんやりと眺める。
「なんでだろう…なつかしい感じがする。他にこんな景色見たことないはいはずなのに」
田舎の方には特別大きな川はなかった。
切ない気持ちになるのに、気になる美しさがあってつい眺めてしまう。
これが日本人の遺伝子がなせる郷愁という感覚なのだろうか。
「きっと疲れてるせいね……帰りたい」
無意識に口からでた言葉。時々ふとした時に浮かぶ思い。
———でもどこに?私はどこに帰りたいの?———
さらさらさら・・・
風に揺れ葉がこすれる音がする。
さらさらさら・・・・・・
さらさらさら・・・・・・ラス・・・・・くれ
さらさらさら・・・・・・我々の・・・・・こた・・・・・
「ん? ・・・・・今のは風の音よ、ね?」
ブワァァァ―――
「っつ! 急に、なに!! ・・・・・突風?!」
立っていられないほどの強風が吹き荒れる。
身体のバランスが崩れた瞬間、強い風圧が身体にぶつかり、吹き飛ばされる。
「なっ!!!!」
次の瞬間、視界が反転し、川に向かって落下した。
ザパーン―――
川に落ちた⁈
と思ったと同時に意識が途切れる———大きな流れが、私を運ぶ———