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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
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第1片 Stuffs Stone④―予兆―

「こ、これは……。」


俺はベットの上に鎮座する、真っ黒な箱に恐る恐る近づく。

帰宅時に母親がコトリバコが届いていた、なんて言うものだから変に意識してしまう。


コトリバコなんて届いていたら既に俺は呪い殺されているだろう。


そんなことある訳ない。

そう思いながらも額に汗が流れる。


箱に手が届く範囲まですり足で近づくと、箱の側面に伝票のようなものが付いているのが見えた。



「な、なんだよー!!脅かしやがって!!」



俺はその伝票を確認する。

そこにはコトリバコ㈱と記載されていた。



「!!」



俺はその文字を見て、全てを思い出した。

そうだ。そんな名前の通販サイトから例のブツを買ってたんだった!



「悪魔降臨セットーー!!」



真っ黒な箱の中には、奇妙な形をした陶器と燭台が丁寧に梱包されていた。



「なになに、フハハ!悪魔の通販サイトコトリバコを知っているとは貴様只者ではないな。

 これは俺様からの餞別だ。受け取るがいい!

 ※本商品は陶器でできており大変割れやすい為、取り扱いには十分御注意ください。

 今回は本商品をご購入頂き誠に有難う御座いました。」


注意書きで世界観壊してくんなよ。



「届いた!悪魔降臨セット!やったぁ!」



先日、注文していた商品がやっと届いた。

注文したのが少し前だったのですっかり忘れていた。



「うぉぉ!どうしよ、早速動画撮りたい!」



ネタを手に入れたらすぐに動画を撮りたくなる。

これは動画投稿者の性だ。



「よし……!」



俺は動画撮影セットと押し入れに閉まっていた金属バット、

悪魔降臨セットを手にして外へと駆け出していった。


まだこの街の周辺に殺人犯がいるかもしれない。

そうは考えつつも身体は先に動いていた。




「世界の闇から失礼。エヴァンだ。今日は、秘密のルートから手に入れた

 この悪魔降臨セットを使用して、恐怖の大魔王を降臨させることにする。」



俺は夜の公園で動画撮影を開始した。

三脚にカメラを取り付け、白のマスカレードに黒衣を身にまとっている。


エヴァンは俺の投稿者としての名前だ。

福音をイメージしてつけた超絶クールな名前だ。



「諸君。恐怖の大王を知っているか?かの有名な予言者ノストラダムスによって、

 1999年7月にアンゴルモアを復活させ人類を滅亡させると言われていた悪魔だ。」



ネットでかじった知識をあたかも常識のように話していく。



「今、2035年に我々が存続していることから恐怖の大王の侵略は、

 人類によって防がれた。その際の戦いはまた後日詳しく話そう。」



そして俺は、箱から取り出した陶器と燭台を手にする。



「その恐怖の大王をこの悪魔降臨セットによってここ日本に降臨させる!

 では早速やって行こう。震えて眠れ。……よし!」



いい感じでOPを撮り終えた俺は、しっかりと編集点を作りながらカメラへと寄っていく。



すると


ガシャンッ


「嘘だろぉ!?」



三脚に固定していたはずのカメラが地面に向かって落ちていく。


お小遣いを貯めて頑張って買ったカメラが、

このままでは地面との情熱的なキッスによって壊れてしまう!



「うぉぉぉお!!間に合えぇぇ!」



俺は必死に手を差し伸べ、ギリギリのところでなんとかカメラをキャッチすることが出来た。



「な、なんとかなった……。」



それにしてもこんなタイミングで三脚が壊れるかね普通。



「続きの撮影どうしよ……。」



カメラを置けるようなちょうどいい高さの遊具を探そうと、

辺りを見渡すとベンチに女の子が座っているのが見えた。


投稿者としてのアドレナリンが出ていた俺は、

なんの躊躇もなくその子に撮影をお願いしようと思い立ち、ベンチに駆け寄った。


普通に考えれば夜の公園で知らない女の子に当然撮影を依頼するなんて、

彼女からしたらそれこそ俺が恐怖の大王だ。



「ねぇ、君ちょっといいかな?」

「……。」



彼女はベンチに体育座りで遠くを見つめている。

ボーッと虚ろな彼女の顔を見ると、なんだか不思議な感覚を覚える。



「もしもーし?」

「……。変な仮面。」



目の前で手を振ると、流石に気づいたようで俺に視線を合わせて一言つぶやいた。



「へ、変じゃない。これはヴェネチアンマスクって言って、イタリアのヴェニスで――。」

「聞いてない。」



な、なんなんだこの女は……!


いや、ダメだ。動画を撮るために彼女の協力が必要不可欠。



「ちょっとお願いしたい事があるんだけどー……?」

「私にはない。それ貸して。」



彼女は突然ベンチの上に立ち上がり、俺のマスクに手を出した。

すると、頭の後ろに紐で止めていたはずのマスクがスルッと俺の顔から外れた。



「!?」

「ふーん……。なるほどね。こいつのせいか。あんた名前は?」

「え?俺はエヴァン。世界を救う救世主だ。」

「あっそ。」



俺のマスクをまじまじと観察し、俺の方へポイッと投げ返す。



「な、何すんだよ!」

「早く最後の一人を探した方がいい。奴はもう動き出してる。」



彼女は俺の怒りをすり抜けるようにベンチから飛び降り、出口の方へと歩いていく。


最後の一人? 奴?

どういうことだ?



「ちょ、ちょっと!君は!?」



彼女は俺の大声に振り向き少し笑って答えた。

俺はその振り向きざまの笑顔を見て、最初に覚えた不思議な感覚が何だったのか気づいた。



「私はキョーコ。敵でも味方でもない何か。」



彼女は、いつか俺が見た学校の屋上から飛び降りた女の子だった。



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