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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
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第1片 Stuffs Stone②―日常―


「ぷはーっ!勝利のいちごミルクは格別です!ありがとうございます。5先輩。」


野々宮は紙パックのいちごミルクを飲み干し、俺を挑発する。


【Buzzり合い】の結果?

そんなのこの状況を見ればわかるだろ。


また財布が軽くなりましたよ。



「それにしてもトベっちあれはないよ。」

「うんうん。」

「Buzzると思ったんだけどな……。」



俺が投稿した魔法陣ネタは、フォロワーから総スカンでいいね・拡散数ともに0。

こんなの絶対おかしいよ。



「そうだ、ひろくん。帰りに寄りたい所があるんだけど……。」



千尋は俺の顔色を伺いながら尋ねてくる。



「別にいいよ。帰り道一緒じゃん。」

「やったぁ!ありがとう!」



1度も千尋のお願いを断ったことがないのに毎回不安そうに尋ねてくる。

この小動物感がBuzzに繋がっているのか?


俺も今度やってみようかな。

……いや、気持ち悪いだけか。


こうして俺は千尋に連れられて、学校を出て目的の場所へとたどり着いた。



「こ、ここは……?」



目の前にはいかにも潰れそうなボロい喫茶店。

山羊?のようなキャラクターが描かれた看板がこっちを睨んでいる。



「コーヒー5杯で、メェ太郎人形が貰えるんだよ!」

「メェ太郎?」



俺はもう一度看板を凝視する。

おそらくこの山羊みたいなキャラクターがメェ太郎なのだろう。


デスゲームのルールを教えてくれそうな見た目をしている。

こんなのがいいのか……?



「それじゃあ行こっ!」



俺は千尋に手を引っ張られながら入店した。



カランコロンカラン



懐かしの扉に設置されている鐘の音が店内に鳴り響く。

これが鳴るともう逃がさないぞという飲食店側の思惑を感じてしまう。



「いらっしゃい。」



カウンターの中の無愛想なおじさんが声をかけてくる。

店名の入ったエプロンをしてコーヒーカップを

拭いているのでおそらくこの人がマスターだろう。


店内を見渡してもお客さんは誰もいない。

俺たちだけのようだ。


この店は本当に入って大丈夫な店だったのか?



「お好きな席にどうぞ。」



マスターはそう言ってコーヒーカップを食器棚に戻した。

こういう場面でのお好きな席にどうぞは非常に困る。

カウンター席に座ればいいのか、それともテーブル席を選ぶべきなのか?


他に客がいない状態でマスターと向かい合わせに座るのも気まずいし、

遠いと避けてるように思われるかもしれない。


俺が妙な緊張感を醸し出していると、千尋は恐れずにぴょんとカウンターに座った。



「マスター、コーヒー5杯でメェ太郎人形が貰えるって本当ですか?」

「メェ太郎人形欲しいの!?」



さっきまで無愛想だったおじさんの顔が急に明るくなる。



「いやー!メェ太郎の良さがわかる人が現れるとは!

 あの目が可愛いんだよ!お嬢ちゃんわかってるね!」



なんだなんだ。急に喋るじゃん。


そこから2人でメェ太郎談義を初めてしまったもんだから俺は1人取り残されることになった。

話を聞いていると、顔立ちが無愛想なだけで全然優しいおじさんだということが分かった。



「本当は5杯だけど、お嬢ちゃんにはメェ太郎人形あげちゃうよ!」

「いえ!ちゃんと5杯飲みに来ます!」

「いい心掛けだ!気に入った!」



いつの間にか意気投合してるし……。


出されたコーヒーを一口飲んでみる。

何か独特な味がする。



「うちのコーヒーはブラックを頼まれても数滴のミルクは必ず入れるのさ。

 なんのミルクか分かるかい?」



ここまで熱弁してたんだ。

あれしかないだろ。



「山羊ですか?」

「その通り!彼氏も分かる口だね!」

「か、彼氏……!?」



千尋は横でコーヒーを吐き出しそうになっている。

マスターは俺が否定する隙を与えずにそのまま話し出した。



「コーヒーの起源は諸説あるんだけどね、

 最初は山羊がコーヒー豆を食べたことがきっかけだと言われているんだ。」

「へ、へぇー……。」



そこからマシンガントークで20分程コーヒー豆知識を話してくれたが、全然頭に入らなかった。


独特なコーヒーを飲み干した後、

お会計時に千尋はメェ太郎人形の引換券にスタンプを2個押してもらっていた。



「マスターありがとうございました!また来ます!」

「おぉー。いつでもおいで。」



そうして千尋は先に店を出たところでマスターに声を掛けられた。



「そうだ彼氏。気をつけなよ。」

「何がですか?」



マスターの声色が先程と一変し、驚きから彼氏ということを否定するのを忘れてしまった。



「最近物騒だからさ。」



マスターは真剣な顔で俺の顔を覗き込む。



「この前起きた殺人事件、まだ犯人が捕まってないみたいでさ。」

「殺人事件?」



そんな事件あったかな?



「遺体がバラバラに引き裂かれてたらしいよ。」



マスターは続けて怖いことを言う。



「そ、そうなんですか……。気をつけます。」

「うん!彼女を守ってあげてね。」



マスターは明るい顔に戻り、俺を送り出してくれた。


千尋を家まで送ってから、

マスターの言葉が妙に気になってネットで殺人事件について調べてみた。


確かに最近東京で2件の殺人事件があったようだ。

その2件とも同一犯の犯行だと思われると記載されている。


犯人がまだ捕まってないことに恐怖を感じたが、それよりも気になることがあった。



どんだけネットで調べても、遺体がバラバラに引き裂かれてたなんて情報は

1つも見つけることが出来なかったんだ。



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