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BuzzばんでっどバイDEAD  作者: ゆず先輩
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プロローグ


バズらねぇ豚は、ただの豚だ。



子供の頃、再放送されていたアニメ映画の主人公がそう言っていた。


おぼろげな記憶なので、台詞自体は少し違っているかもしれないが

俺はそういう意味合いで解釈した。



この世には2種類の人間がいる。

バズる人間とバズらない人間だ。


前者は何をやっても話題になる、

そういった星に生まれたスターのような人間。


逆に後者は、何をやっても話題にも上がらない。

たとえ素晴らしいことを成し遂げたとしても注目されることはない。


だって、そういう星の元に生まれてしまったのだから。



その2つから選ぶとなると俺、卜部大臣うらべ ひろおみは圧倒的前者だ。

いや前者だと思いたい。

前者であってくれ!


俺は自分自身が前者であることを証明するために一から部活を立ち上げた。


その名もBuzz(バズ)部。


Buzzとはハエなどがブンブン飛び回る 

という意味の英語でバズるの語源にもなっている。


話題が勝手に飛び回って知れ渡る。

そんな感じだろう。


しかし俺は話題とは勝手に広まるものでは無いと思っている。


話題はかっさらうもの。


積極的に活動しなければならないのだ。


俺は自分の活動方針を再確認し、部室の扉を開く。



「おつかれー。」

「あ、ひろくんお疲れ様ー。昨日の動画見たよ。面白かったぁ。」

「いや、昨日のは恐怖の食人一族がテーマだったよ?」



彼女の名前は、八城やぎ 千尋ちひろ

我がBuzz部の部員。


俺の幼なじみで、Buzz部を立ち上げた時から在籍している初期メンバー。


少し抜けているところのある天然娘だ。


20代のほぼ100%が使用しているSNS【Twipoツイッポ】で

フォロワー数8万2000人を持つ、大物ペットブリーダー。


しかしその実、

飼っているミニチュアシュナウザーのシュナくんについての投稿しているだけだ。


それなのに彼女が投稿するや否やツイーポは拡散され大バズりする。



「今日も分からないけど、Twipoの通知が止まらないんだよー。」

「どれどれ。」



俺は自分のスマホで千尋のツイーポを確認する。



「今日もちゃんと朝ごはん食べられた!偉いでしょ?( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )❤︎」



それに対して、

偉いね〜。朝からモリモリだ♡

おじさんの出来たて朝ごはんも食べない?

朝から元気な子だね〜。おじさん頑張っちゃうぞ。

シュナちゃんの動画はよ。


などなど直接的ではないにしろ変態的なコメントが多数寄せらせている。


最初は、そこまで有名になるようなアカウントではなかったのだか、

愛犬の写真や動画を投稿するようになってから

フォロワーが爆発的に増えていった。


なぜなら投稿する写真や動画には必ずと言っていいほど

千尋の脚や胸、声が映り込んでいるからだ。


顔は写ってないにしろあまりにも不用心すぎる。


そんな何処と無く隙のある天然っぷりを目当てに

変態紳士なフォロワー達がワラワラと湧いてきたのだ。


あまり良い手法とは言えないが、

バズってるのだから我が部の部員として非常に優秀だ。



「ま、まぁいいんじゃない……?」



ありのままの真実を伝えると千尋が傷ついてしまうのでないかと思い、

俺はいつも静観している。


ガラガラ



「おっつかれー!2人とも早いねー!」



すると、我部の元気印がやってきた。

彼女は1つ先輩の空森からもり 瀬凪せな



「トベっち見たよー、昨日の動画。ソイビーンズ怖いねぇ。」

「トベじゃなくて卜部うらべです。あと、ソニービーンです。ソイビーンは大豆。」

「あれー、そだっけー?」



見ての通り空森先輩は、適当人間である。

ノリと元気でどこまでも突っ走っていく。


そんな空森先輩だが、ネットの世界では超有名人。

Senaいう名前を聞けばそこら辺の一般人でも認知している超有名な歌い手だ。


自身で作詞作曲を手掛け、企業のTVCMにも起用されている。

決して正体を明かさないスタイルで、謎の歌手として話題をかっさらっている。


Twipoツイッポのフォロワー数は85万人。

単純計算で佐賀県民全員がフォロワーという状態だ。


化け物だ……。



「トベっちの動画のOP曲、考えてきたんだー!」

「いや、その件は断ったじゃないですか!」



超有名歌い手にOP曲を作ってもらうなんて

配信者冥利に尽きるのだか、正直今の俺には荷が重すぎる。



「まぁ聴くだけ聴いてみてよー。」



瀬凪先輩は自分のイヤホンを片方外して、俺の耳にねじ込んだ。

1つのイヤホンを共有する形となり、必然的に2人の距離が縮まる。


瀬凪先輩のシャンプーのいい匂いがして少し意識してしまう。



「わ、私も聞きたいです!!」



そんな二人の間に割って入るように、千尋は僕のイヤホンを奪い取った。

いや、そんな強引にしなくても後で聞けたよね?



「もう、ちーちゃんは仕方ないなー。」



瀬凪先輩は何かを感じ取ったのか、

ニヤニヤしながらカバンからスピーカーを取り出し音楽プレイヤーと接続する。


♪〜。


部室に瀬凪先輩作曲の音楽が響き渡る。


これから始まる動画の期待感を煽るような、

それでいて俺のチャンネルのダークな雰囲気も見事に演出している。


正直言って、めちゃくそ使いたい。



「どうかな?トベっちの動画をイメージして作ったんだけど。」



悪いわけがない。

ネームバリューとかじゃなくて、やっぱり瀬凪先輩は音楽の才能がある。


でも瀬凪先輩の音楽を使ってバズっても、それは俺の力ではない。

俺は俺の力で話題をかっさらいたいんだ。



「先輩方うるさいですよ。」



決意を胸に秘めたと同時に、部室の隅にある仮眠室のカーテンが勢いよく開いた。



「ありゃ。めいちゃんもう来てたんだ。」



そこには、メガネを掛けたショートカットが似合う

生意気な後輩 野々ののみや夢衣めいがいた。



「音楽聞くならヘッドホンしてくださいよ。

 今メェメェちゃんのアーカイブ見てるんですから。」



俺たちの部室には、保健室で使わなくなったベッドを1つ譲り受けて置いている。

彼女はそのベッドにノートパソコンを持ち込み、

お気に入りのVtuberの動画を見ていたようだ。



「あ、この前言ってた子だ。可愛いよね。」

「そうなんですよー。千尋先輩は分かってますねぇ。」

「あぁ、あの羊の子か。」

「羊じゃないですぅ!山羊やぎですぅ!」



何故だか分からないが、野々宮は俺にだけ当たりがキツい。



「あ、そうだ卜部先輩の動画の立ち絵書いてきました。使っていいですよ。」

「いや、俺の動画実写だから。」



野々宮は、タブレットを差し出し立ち絵を見せてくれた。



「うぉ……。うめぇ……。」



それもそのはず。

彼女はフォロワー数100万を誇る、神絵師なのだ。



「うわぁー。イケメンだ!」

「夢衣ちゃんにはトベっちがこう見えてるんだねー。」

「ち、違いますよ!人気が出るように2000%くらい盛って描いたんですよ!」



そこには、スラッと細身で高身長。

トレードマークの白衣とマスカレードを着けた俺(?)の姿があった。

まぁ確かにこれはもはや俺ではない。


野々宮は、ソシャゲのキャラクターデザインを手掛けたり、

全国で個展を開くなど業界では超有名人。


夏と冬に開催される同人誌の祭典コミマでは、

毎回壁サークルとして参加している。


そんな神絵師が無償で立ち絵を書いてくれている。

普通であれば断るのは失礼に値するのだか、俺は全力で抵抗する。


野々宮の絵を使えば、一気に人気が出ると思うが、それは俺の実力じゃない。

俺は俺の実力でこのBuzz部に相応しい人間になってやる!


そうフォロワー数5000人のしがない動画配信者は思うのであった。


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