第一夜、ブロックの上を歩く話
夢を見た。
陽はもう殆ど沈んだ夕暮れの道路を車がぽつぽつと走っていく。私達は、車道と歩道の境界ブロックの上を歩いていた。車道はしっかりと見えるのだが、私達の歩いている境界ブロックを飲み込むようにして、歩道側は海に浸っていた。
海の先を見つめていくと、私達の歩いているところは入り江の真ん中らへんらしいことに気がついた。水平線は薄オレンジに、鈍く暗めいていた。
前を歩く少年が私に話しかける。私よりも2つくらい年上だろうか。なにかを急かすような事を言っていたように思うが、詳しくは思い出せない。私は少年の言葉を聞き、辺りを包む薄闇が酷く恐ろしくなった。私達はこの坂道を登った先に見える森の奥まで歩かねばならないのだ。そうして、奥にある神社へ参って、帰らねばならん。
後ろを歩く、まだ幼い少女に先程の言伝を繋げ、少女がまた後ろの子供に同じことを伝えていく。
前を歩いていた少年は随分先へと歩いていき、途端に心細くなった。
「ねぇ、やっぱり、もう戻らない?」
後ろの少女は恐る恐るだったが、私の案に賛同した。
続く子らも暮れゆく陽に不安を感じたのか、皆で引き返そうと口を揃える。
そうだ、皆で帰ろう。
私が先頭を歩いていたので、踵を返すと今度は私が最後尾となった。年少の皆を不安にさせないように穏やかに話しかけながら歩いていたが、背から迫ってくるように思われた闇に、内心急いでいた。
前の子の背中を押してしまいそうなくらい近くで足早になろうとしつつ、年下を不安がらせてはいけないと余裕ある態度で笑った。
車は闇へと向かっていく。
後ろから、闇が広まる。
飲まれていく。呑まれていく。いそがねば。