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ナミダ  作者: 音緒
1/1

あの世の島

2☓☓☓年

人類は今まで遭遇したことの無い程の脅威と戦っていた。

未知のウイルスが発見されたのだ。

そのウイルスは感染力が異常に高く、かかると重症化しやすかった。また未知である為にワクチンも特効薬も作られていなかった。

これと比べれば第二次世界大戦なんて脅威ではない。

それほどの死者を産んだのだ。

ウイルスは世界を蝕み、地球人の約6割の命を奪っていた。

人類はみな自身の安全を第一に優先した為に自分勝手になり、少しでも熱が出ようものならそれが誰だろうとお構いなしに見放した。

たとえ、それが愛する我が子であっても…


「幸せです!」

そう言ったって、返事は返ってこない。

聞いてくれる人すら居ない。

当たり前だ。

私は、捨てられたんだから。


私は至って普通の子供だった。

そして普通の幸せの元で暮らして来た。

裕福ではなかったけど、優しい両親とともに暮らす毎日は代え難い幸せだった。

それなのにあのウイルスがすべてを壊した。

人々は“信用 ”というものを失って、自分の子供でさえ感染しているかもしれないと隔離した。

それでも熱を出してしまい二度と会えなくなった友達もいた。

熱はもちろん出したくなかったが、両親がいてくれると思うと安心した。

二人が私を捨てるなんて、少しも思っていなかった。

そしてとうとう、私も熱を出した。

私は両親の帰りを待っていた。

あの二人に限って私を捨てたりなんてしないと思うけど、今日は様子がおかしかった。

両親は、家に帰って来なかった。

いつもは朝ごはんをくれるのに今日はくれなかった。

遠くまで薬を買いに行ってるの。

いいお医者さんをさがしてるの

20時頃になっても両親は帰っては来ず、私は自分を安心させるようにそう言った。

両親は私を見捨てたりしないと信じたかった。

0時を周り、トラックが家の前で止まった。

私の為の場所に連れて行ってくれるらしい。

私の為の場所って、私、ただ熱を出した一般人だよ?

そう言っても誰も私を引き止めてはくれなかった。

両親はなにか言ってくれる。

引き止めてくれる。

そう信じて振り返ると、汚物をも見るような眼差しで私を見つめた両親がいた。

二人はサヨナラも言わなかった。

ただ静かに、

「熱を出したからには、もう家には置いていけない。」

熱って、そんな高熱じゃないのに。

感染したかもわからないのに。

子供が病気したら、看病するのが親ってもんじゃないの?

私よりも、自分の命を優先したの?

「ねえ!」

そういったって誰もこっちを見向きはしなかった。

手をのばす私の前で非情にもドアがしまる。

私はほぼ放心状態だったけれど、この思いだけはしっかりと心に根付いていた

許さない。

家族を捨てるなんて。

こんなことで見捨てて。

まるで、私があいつらのおもちゃみたいじゃない。

都合が悪くなったらすぐサヨナラ。

本当に、最低な親。

私の中で、今まで両親に抱いていた尊敬やら感謝やらの気持ちが粉々になっていくのを感じた。

無意識に頬に涙がつたう。

これは、悔し涙か。

私を乗せたトラックは、深夜の街を静かに通っていく。

一度トラックごとフェリーに乗り、海の上を行った。

約8時間後。

私がついたのは、血まみれの島だった。

色々なところで悲鳴が上がっている。

あの墓は、心優しい感染者が仲間の為に立てたのだろうか。

今更だが恐怖がこみ上げて来る。

あああ

混乱する

私が今いる状況をおさらいしよう。

まずは何処にいるか。


ここは日本人感染者収容島

通称、【あの世の島】。



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