第41話 王の帰還
奏星が倒されたことで、教室内は騒然としていた。
「あの、無敵の幸運女が負けた?」「てか、すげぇなあの2人」「最初はどうなるかと思ったけど、最後はめっちゃレベル高い対戦だった」
周りの生徒たちは、口々にそんな事を言っている。
これで証明できたはずだ。“絶対に勝てる”プレイヤーなんて存在しないということを。
「みんな! ……もう、こいつの言う事を聞く必要はない! 退学に怯える必要もない! 自由にカードゲームをやっていいんだ!」
だが、みんな、俺の言葉に戸惑っている。どうしたらいいかわからない、といった感じだった。そして、生徒の一人が話しかけてきた。
「でもよ、確かに俺たちはこいつに脅されてたけど……ゴールドが無くなることに不安なのは間違いないんだぜ? 俺たちはどうすればいいんだよ?」
そうだそうだ、と周りは口々に頷いている。
「自分で何とかすればいいのに」
奈津がぼそっとそんな事を言うが、そんな簡単に放り出すわけにもいかない。
彼らの王を倒したのは俺だ。王を倒したものが王になる……なんてつもりはないけど、俺も必死に頭をひねる。
「……ゴールドが足りなくて退学になりそうだと思ったら、みんな俺に相談してよ! 必ず力になる! これ以上誰も退学になんかさせたりしないから!!」
「信用していいのか? 『イカサマ王』……いや、国頭」
まだ不安がっている彼らを安心させるように、力強く頷いた。
「ああ……もちろん! 俺がみんなの力になるよ!」
「「「うおおおお!!」」」
教室中から歓声があがった。
「まったく。優ちゃんは優しいんだから」
「でも。それが彼のいいところ」
「そうねー。あなた、わかってるじゃない」
その時、ドタドタと足音がしたと思うと、教室のドアが勢い良く開け放たれた。
「コラーッ!! こんな時間まで何やってるのッ!? 19時過ぎたら帰るように言ってあったでしょッ!!」
いつものコスプレ姿ではなく学校用ジャージの姿だったので一瞬誰だかわからなかったが、この声は間違いなく葉月先生だ。
「まったくちょっと残業してたらこんな事になってるなんて……ああッ! しかも部外者連れ込んでるッ! 誰ッ!? 連れ込んだのは!?」
「そいつに連れ込まれました」
すかさず奏星がうなだれている皇浦を指差した。
先生がギロリと奴を睨み、そのまま首根っこを掴む。
「皇浦君! ちょっと生徒指導室に来て貰おうかなッ!? 他の子たちも!!」
そんな事を言われて素直に応じるわけもない。皇浦以外の生徒たちは我先に逃げ出した。
「あーッ! コラッ!! 逃げるな―ッ!!」
さすがに先生1人では10数人いる生徒達全員を捕まえることなどできない。ただ、2、3人は捕まっていたが。俺たちも彼らに倣って一緒に教室を飛び出した。
奏星と奈津の2人と共に広い敷地内を全速で走り、校門の外まで逃げ切ることができた。
「……はぁ……なんだか、疲れたな」
でも、とりあえずは、これ以上退学者が増えることはないだろう。
俺自身の過去に決着をつけることもできた。
だが、見過ごせない問題もある。
「あの」
突然、奏星は奈津に頭を下げた。
「ごめんなさい。あたし、とんでもないことしちゃった。あなた達を退学にしちゃって……」
そう、奈津が退学になってしまったことだ。こればっかりは笑って済ませるというわけにもいかない。 彼女に10億の借金がいってしまったこともある。
だが、奈津は少し笑って言った。
「負けたのは私。弱かった私のせい」
「でも」
確かに、このままにはしておけない。
奈津はもちろんだが、奏星のためにも。
「……心配いらない。俺がなんとかする。任せて」
2人とも驚いた顔をしてこちらを見つめる。
「本当?」
「……たぶん。できる……と思う」
100%の自信があるわけじゃないけど。今はこの策にかけるしかなさそうだ。




