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カードゲームは卒業したのにTCG学園に放り込まれたんだが ~イカサマ王と呼ばれた俺はカードゲームなんかしたくない~  作者: ゼ二平


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第18話 カラオケボックスと奈津

 「いやいや、しかし優馬殿も人が悪いなぁ。あんな可愛い彼女がいたなんて」


 「……は? 彼女?」


 駅前のカラオケボックスにつき、少し広めの部屋に案内されてようやく腰を落ち着けた途端、武束がそんな事を言いだした。


 「あの子と付き合ってないの? 入学式の時から。一緒にいた」


 紙手さんも相変わらずのポーカーフェイスだがなぜか珍しく食い気味に尋ねてくる。


 「……奏星と? まさか、違う違う」


 昔から一緒にいることが多いからよく誤解されるが、俺と奏星はそういう関係ではない。

 俺からすればあまりにも一緒にいる期間が長すぎてそういう目で見ることができないし、『愛してるよ』なんてすぐ冗談で言ってくるが、彼女からしても手のかかる弟みたいなものなのだ。

 とはいえ、家に帰ったら言い訳をするのが大変そうだ。

 今からその事を思うと憂鬱なので、無理やり考えないようにする。


 「良かったね。紙手殿。まだチャンスが……どあああ!?」


 「黙りなさい」


 武束が紙手さんの手によってルーム内の壁にめり込みそうになっていた。

 よくよく余計な事を言って吹っ飛ばされる男だ。


 「そんなことより、カードだよ」


 正直、自分は戦いたくないとは思っている。それは嘘ではない。だが、自分をチームメイトに選んでくれた彼ら二人のためにも、できるだけのことはしたい。

 紙手さんのプレイングはすごいがデッキ作りは素人以下。武束はプレイヤーというよりは収集家コレクターだ。

 だったら、デッキ作成は自分の仕事だろう。


 3人それぞれが持っているカードを、色ごとにわけて並べる。特に大事なのはデッキの主力になりえるSRとSSRのカードだ。

 武束はトレードしまくっていることもあって、かぶりが少なく種類が豊富だが、それでも高レアリティのカードはあまり持っていない。一方で俺と紙手さんはパックをほぼ買っていないこともありほとんど初期デッキだけ。主力となりえるカードは俺の持つ緑の《孤高の王者―キンググラン》ぐらいだろうか。


 ……と思っていたのだが。


 「紙手さん、それ……」


 「奈津なつでいい」


 「……へ?」


 彼女はどうも別の事が気になったらしい。


 「あの子のこと名前で呼んでいてから。私もそうして」


 俺が奏星のことを名前で呼ぶことと、紙手さんにどんな関係があるというんだ。

 ちらっと武束の方を見たが、にやにやと笑っているだけで助けてくれそうにない。

 こうしている時間が無駄だと判断し、早々に抵抗するのを諦めた。


 「えっと……奈津さん」


 「奈津」


 有無を言わせぬ圧があった。


 「……えっと、な、奈津。そのカード、見せて貰ってもいい?」


 「どうぞ」


 心なしか満足そうに頷いてカードを手渡した。


 「やあやあ、ぜひぜひ僕の事もあつると呼んでくれたまえよ」


 「……ごめんテキスト読むからちょっと黙ってて」


 正直戸惑ったが今はそれどころではない。慌ててカードのテキストを確認する。


 「おやおや……このカード、僕も初めて見るね」


 武束も興味津々に覗いている。


 《[SSR]ハイドリンネの灯台》。

 港町の海辺にそびえ立つ巨大な灯台が描かれている。色は無色。つまりどの色のデッキにも入れることができる。盤面に出して戦闘をさせるユニットカードではなく、使ったら即捨札に行くスペルカード。だがわずか1コストで手札を入れ替えることができる。

 いわゆる入れ得なカードだ。思わず尋ねてしまった。


 「……なんでこのカード、デッキに入れなかったの!?」


 「?」


 彼女は本気で分かっていなさそうだった。


 「このカードを入れていたらもっと楽だったんじゃ……」


 「キラキラしているから。汚したら勿体ないかと思って」


 思わずずっこけそうになった。気持ちはわかる。わかるんだが。

 というか彼女、デッキのカードもスリーブに入れていない。これじゃあ汚れたりキズがついてしまうのも当然だ。


 「紙手さん、どうだろう、このカード僕の手持ちのカードと交換しないか? こっちのはあまりキラキラしていないよ」


 「……やめい」


 堂々と鮫トレ(価値の釣り合っていないトレード)をしようとする武束をいさめつつ、頭を巡らせる。

 チームが勝ち進んでいくには、最低でも二人分の”勝てるデッキ”を作らないといけない。

 頭の中に広がるカードプールと目の前のカードを見比べる。

 だが、どうしても欲しいカードが足りない。

 レアリティが低いカードはゴールドを使えばパックから手に入るだろうが、高レアリティのカードはそうもいかない。

 とは言えそれらを狙って手に入れるのは今あるゴールドを使ったところで不可能だろう。それこそ……。


 「いや待てよ……その手があったか」


 そうだ。思いついた。

 だが、この作戦を取るには彼女の許可が必要だ。


 「紙手さん、このカード、どう使ってもいい?」 


 「奈津」


 「……奈津」


 彼女にとってはカードより呼び名の方が大事らしかった。


 「あなたに任せる」


 「……了解」


 デッキ用ではなく、保存用の透明スリーブに入れる。


 「んん? 優馬殿。そのカード、使わないのかい?」


 不思議そうに尋ねてきた武束に、頷く。


 「……ああ、使わない。それより、もっといい方法がある」


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