第13話 いいこと
「優ちゃん、何かいいことあったでしょー」
「……え」
久々の真剣勝負のせいでふらふらになりながらも、なんとか帰宅した俺は、当たり前のように自分の部屋にいた幼なじみに、突然そんな事を言われてドキッとさせられる。
「……な、なんで?」
「なんか、いつもより口角が2度ぐらい上がってるんだもーん」
嘘でしょ? どんな観察力しているんだ。っていうか、本当に口角上がってるの?
やはり約束を破ってカードゲームをしたことを、正直に言うべきだろうか。
悩んでいると、奏星は突然納得したように手をぽんと叩いた。
「あ、わかった! 友達できたんだー! そうでしょー!?」
「え? ……ああ、うん、まぁ」
友達と呼んでいいかかなり微妙なところではあるが、武束と紙手さんの二人とは話すことができるになった。
ボッチはギリギリのところで回避された……のかもしれない。
「あーよかったー! 今度紹介してねー?」
「あーうん……そのうちね」
カード収集家のメガネ男と、無表情で無口の少女。正直言ってどちらもカードゲーム嫌いの奏星と話が合うと思えなかったが。
でも、奏星は自分のことのように嬉しそうににこにこ笑っている。
「優ちゃんは、優しいからねー。きっと、昔みたいにカードゲームなんかやらなければ、いい友達がいっぱいできるよー」
「……あー……」
罪悪感で胸が痛い。いっそ話してしまった方がいいのだろうか。
黙っていて後々バレるよりに先に謝っておいた方が被害が少ないかもしれない。
…… よし、土下座だ。土下座でなんとかしよう。
「あ、あの……奏星!!」
「え? なーに?」
「別にそれで奏星や他の人に迷惑かけたとかそういうわけじゃないんだけど、その……そう、あえて言うなら天からの授かり物のせいでっ……!!」
と、土下座しようと視線を下げたところで。
部屋の中央に置かれた食卓代わりのテーブルの下に、妙な物が置かれているのに気付いた。
「……奏星、それ」
「んー? あーびっくりだ! こんなところに可愛い人形がー!」
こっちがびっくりするほど棒読みだった。
「……」
出てきたのは、全然可愛くないアンティークドール。
しかもびっくりするぐらいリアル。今にも歩き出しそうだ。
「んーなんだろうー? 天からの授かり物かなぁー?」
「……本当は?」
「商店街のくじ引きの景品の3等だったのー。見た瞬間一目惚れしちゃって、つい☆」
「……ついって」
「どうしても欲しかったから☆」
「…………」
「ゆ、優ちゃんは優しいからなー! きっと許してくれるよねー!」
「……はぁ」
もはや、何も言う気になれなかった。
無事に、というかなんというか。教室でカードゲームの対戦ができるようになった。
でも当分の間は、奏星に打ち明けることは不可能かもしれなかった。




