賞味期限切れの声が聞こえるようになった
ガランガランガラン
(どうか、今年1年こそは…食べ物を無駄にしませんように…)
初詣で誠実なようにみえてしょうもない決意を神に伝えるこの男。
昨年末にスーパーのタイムセールでナマモノを大量購入するも、家の玄関に放置し次の日にお腹を壊したうっかり屋なのだ。
そんなことを知らない神は真面目な若者が来たなと思い祝福を与えることにした。
(若人よ、貴方に賞味期限切れ付近の声が届くようにしてあげましょう)
「?」
(祝福を授けます)
「なにか聞こえるけどどこかでイベントやっているのか?」
ーーーーー
「ただいまー」
自宅に帰るが一人暮らし、泥棒避けに言っているだけで返事は無い。 はずだった。
(おかえりー)
「へあっ!?」
謎の返事が聞こえ玄関で固まるが誰も出迎えない。
泥棒なら返事をするはずがない。
「だ、だれだ?」
(今日中に賞味期限が切れる豆腐です)
「????」
(今日中にお食べください)
「は、はい?」
よく分からないがこれは助かる。
声がするものを食べるのは気味が悪いという一点を除けば大いに助かるので、男は細かいことを気にしないことにした。
ダメ元で部屋全体に問いかけ、探し出してみることにした
「賞味期限がそろそろの方いらっしゃいますかー?」
(はい!冷蔵庫奥の生卵です!昨日賞味期限が切れました!)
「昨日…いけ、いける…?」
(生卵の賞味期限は《生で食べられる賞味期限》なので加熱すれば大丈夫ですよー。)
「マジで?ありがとう食べるわ!他には賞味期限間近の方いらっしゃいますかー?」
(はい!押入れ下段奥にいる震災時用ペットボトルの水です!)
「賞味期限はいつかなー?」
(はい!半年前です!!)
「アウトオオオオ!!」
慌ててペットボトルを回収し流しに捨てようとする男、それを止める水。
(お、お待ち下さい!ペットボトルの水は未開封であれば腐らないのでいつでも飲めますよ!)
「マジで?じゃあなんで賞味期限あるの?」
(腐らないけど蒸発して中身が減るので、中身が減りすぎると売り物にならないので賞味期限が設定されているのです。)
「へー。」
その後も男は食べ物から色々学び、
この祝福が無ければお正月から廃棄を出していたことに気づき感謝しながら寝ることした。
「いやー最初は食べる物の声が聞こえるとかなんの呪いかと思ったけど助かるな。会話するのも楽しいし探すの楽で素晴らしい祝福だなこれは。」
(こんばんはー夜に失礼します)
「誰だ?」
(屋根裏のネズミに運び込まれたゴキブリです。賞味期限がそろそろーー)
「呪いじゃねーか。不眠系の。」
3日もすると声は聞こえなくなったがその後男は賞味期限の管理と衛生管理は徹底するようになったそうな。