2登目
「さて諸君、今日は山頂を目指すことになる。 もちろん準備は万端だな?」
「ああ、いつでもいけるぜ!」
「うふふ、登りがいのありそうな山です事。」
「チャージ カンリョウ。 システム オール グリーン。 モード スタンバイ」
時は日の出の直前。 太陽はまだ山の陰に隠れている。
一行がキャンプの片付けと朝食を済ませた後のことである。
「まずは最初の3合目まで我が先頭を切る。 その後は、アレク・ミイの順に各3合づつ先頭を交代し、最後の1合を我で締める。 問題は無いな?」
「オッケー! いつも通りだな!」
「問題ありませんわ」
「では、進軍開始!」
そう言ってレストは目の前の崖に金属製の杭を刺しながら登っていく。
それを追い、アレク、ミイの順に登っていく。
「スイチョクジョウショウ モード 二 イコウ。 キロク ヲ カイシ シマス」
最後を追うようにエックスがそれに続く。
そして最初の3合目までは特に何事もなく終了した。
「・・・気付いたか?」
「ああ、見られているな」
「盗撮、ダメ、絶対ですわ」
「モード グレイ スタンバイ。 ゲイゲキ カノウ」
先ほどの何事もないというのは訂正しよう。
様子を伺っていると言うほうが正しいのだろう。
「いや、問題はない。我らの目的の支障にはならぬ」
「だな」
「同感です」
「では、登山を続けるとしよう」
「じゃあ、今度は俺の番だな」
今度はアレクが先頭になって登り始める。
問題が起きたのは丁度5合目に差し掛かったあたりだった。
「キーキー!! ここがどこか分かっての事か?!」
どうやら飛行タイプの悪魔らしい。
どこにでもよくいるガーゴイルのようだ。
「ああ、知っている」
「分かった上でやっていると? なら何をされても文句は無いよな! キーキー!」
「何を勘違いしているか知らないが、我らは登山を楽しみに来ておるのだ」
「何をとぼけたことを! 全員集合! キィィィィッ!」
周囲からバサバサと集まってくる魔物の山。
ぱっと見その数は30くらい。
「奴らは手が塞がっているから手は出せまい! なぶり殺してやれ! キィィー!!」
「まったく、問答無用かよ。 魔族ってみんなこうなのか?」
「全員がこういう輩というわけではない。 人間もそうであろう?」
「人類みな兄弟、憎しみ合うなんて無意味ですのに。 まぁ、あの方たちは魔族ですけども」
「モード ブラック。 コレヨリ テキ ヲ センメツ シマス」
圧倒的に不利な状況からの戦闘。
普通ならここで全滅、ゲームオーバーである。
あくまで、普通ならば、であるが。
「シャドウフレア!!」
「ウインドレイジ!!」
「レイストーム!!」
「リュウシレーザー ハッシャ!」
それは戦闘というにはあまりにひどい光景だった。
飛び交う魔物たちは次々と光と闇に貫かれ、下へと落下してゆく。
まさに一方的な虐殺というほうが正しいだろう。
彼らは登山をすることにかけては、普通のやり方を重視しこれを守る。
しかし、登山を邪魔する行為については手段を択ばない、ということだ。
哀れ、敵は全て撃ち落され、山には再び静寂が戻った。
「相手の力量を見誤ったな、戯けどもめ」
「思っていた以上に弱かったな」
「あらあら、みなさんトレーニング不足ですこと」
「セントウモード カイジョ。 ツウジョウモード 二 イコウ シマス」
一行は何事もなかったように、再び山頂へと登山を開始した。