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1 地球へ 1

ここよりシフォンとミラエスが地球へ行った時の事を外伝として書かせて貰います。

私達がナリエスへ帰りミナトが出て行ってから約1ヶ月が過ぎた。


今私は、少し前までは勇者様やエスティアにミナト達も居て

凄く賑やかだったのがまるで嘘の様に静まり返った

霧の森のロイの屋敷の中でミラエスと2人で昼食の用意をして居る。


ロイもメイリも食事は摂らないので作るのは私とミラエスの2人分だけ。

一緒に作って居るミラエスを横目で見れば

チョコチョコッと私に見つからない様につまみ食いをして居る。

でも私から見たら丸判りなのを本人は全く気付いて居ない様子。


こんな時は本当ミラエスには助けられる。

ロイもメイリも優しいけれど()()()()笑いを提供してくれるのは今ここではミラエス位だもの。

それを見て私が思わず笑うとミラエスが両手で口を隠して私を見る。


「ふぁふふぃんのまふょふぁま?・・ンッグ!なっ何か有りました?」


一生懸命笑顔を作ってちょこっと顔を傾けるその仕草が又可愛い。


「ううん。何でも無いわ?ただ、味付けどうだったかなって思って。」


「白銀の魔女様が作った物は全て美味しいです。この味付けだって最高ですよ・・・あっ!」


「ふふふ、美味しかった?」


「えっ?あっえっと・・・はい。」


「良かった。でもこれ以上食べたらお昼食べられなくなっちゃうから食べるのはここまでね。」


「御免なさい・・」


食卓に着くとロイ達も一緒に席に着くけれど

食事をする分けでは無く私達のと話しを楽しむ為に食卓に着いて居る。

そう、決して楽しくない訳じゃない。

幸せじゃ無い訳でもない。

そう、ただ何となく物足らないと云うか・・・。


「シフォン・・シフォン。どうした?」


「エッ!あっゴメンなさい。ちょと考え事してて。」


ロイが私の様子がおかしい事に気付いて声を掛けて来た。

その隣に居たメイリも不安げな顔を私に向けて来る。


「シフォン、最近何だか考え事が多い様に思うけど大丈夫?」


メイリの優しい声に胸がキュンと掴まれる様に痛くなって目頭が熱くなる。

何だろうこの感覚は?

ただメイリが話しかけてくれただけなのに。

自分でも訳が分からず一度目頭を押さえ涙を誤魔化してから顔を上げて返事をした。


「うっうん何でもない。大丈夫よ。」


「シフォン何か我慢して居るんじゃないの?」


「何か有るなら話してごらん話せば楽になるかも知れないよ。

もしかしてミナトの事か?」


メイリもロイも本当に優しい人達だ。

私の様子がおかしい事に気付くと2人して心配そうに話し掛けて来てくれる。


「ミナトはもう終わった事だもの大丈夫よ。ただこう胸にポカンと穴が開いたと云うか

痛い様な・・自分でも良く判らない・・」


いや判って居る。

ただ自分で判ろうとして居ないだけ

違うと自分のその気持ちを否定して居るだけ。

自分を騙す?

うんそうかも知れない。


あ~何か、もやもやする。

ヤッパリ向こうへ行かせる前にベアハッグだけじゃ無く一発殴って置くべきだったかも?

でも真面に殴ったら強化の出来ないミナトはミリニシアへ行く前に違う所へ行きそうだしな~。

等とバカな事を考えて居ると

又ロイから声を掛けられた。


ふっと声のする方へ眼をやると私の直ぐ脇に彼が立って居た。


「シフォン大丈夫か?」


「あっ!ゴメン又ぼーっとしちゃって。やっぱ変だよね。疲れてるのかな?」


「シフォン今話したくないなら話さなくても良い。

でも、もし何か話をしたくなったら僕達は何時でもここに居るから話しに来ると良いよ。」


「うん、有難う。」



その日は何となく体も重く感じて夕方からは自分の部屋のベッドの上で寝そべって居ると

部屋の外からロイの声が聞えた。


「シフォン、入って良いかい?」


「はい、今開けるわ」


私がドアを開けるとロイとメイリが立って居た。

2人を部屋の中へ入れるとロイが微笑みながら私に話しかけて来た。


「シフォン、たまには気晴らしに旅行へでも行って見ないか?」


「旅行へ?一体何処へ?」


この世界はまだ未開発の所も多く遠出するには危険が伴う。

それ故普通は遠くへ出掛ける為に冒険者を雇ったりしなくてはならないし

馬車を借りるにしても道は悪く旅行を楽しむという雰囲気では無い。


出先で何か楽しいイベントでも有れば別だけれども近々何か有ると云う話しも聞いて居ない。

だからその言葉が私の口から出た。


「異世界へだ。シフォンキミの生まれ故郷へ久し振りに行って見ないか?」


「地球へ?」


「そうだ。どうだ?行かないか?」


『地球へか。そう云えばあれから3年経つのね。兄貴就職できたかな?』


そこまで考えると私は2人に行くと答えて居た。

そして地球へ行きたいと地団太を踏んで居たミラエスを言い聞かせ留守番を頼み

翌朝私は朝食を済ませ荷物をアイテムボックスでは無く

マリスシアに教わったポケット(異次元空間)へ仕舞い込み

以前地球で買った服を着て準備を完了。

そして行く直前改めてロイから地球へ行く際の注意を聞かされた。


「行けるのは1人、当然今回はシフォン1人で持ち時間は26時間。そして身体を守る為の僕が作った防御用コートを着て行く事。シフォン時間忘れない様に。」


「うん、26時間ね。気を付けるわ。じゃあ行くね。」


私は以前ロイ達に教わった次元の亀裂を自分で作ると地球へ向かう為

亀裂の目の前に立った時後ろから駆け寄る足音が聞えて来た。


「白銀の魔女様~~。やっぱり私も行きます~~~~~。置いてかないで~~」


振り向くとミラエスがそのまま勢いよく私に駆け寄り胸に飛び込む様にぶつかると

私はその勢いで後ろへよろめき倒れて行った。

そう次元の亀裂の中へ。


「エッ!ミラエス!」


そして私は急いでミラエスを包み込む様にコートでカバーしながら

その亀裂の中へ転げ落ちて行った。

するとあの時と同じように激しい衝撃に襲われぎゅっとミラエスを包み込んだコートを

剥がされない様に手に力を入れて持つ。

その間おそらく数十秒だった筈なのに

飛びこんで来たミラエスがどうなるかを考えると恐ろしくてその数十秒がとても長く感じた。


すると突然その衝撃が消え早朝の見慣れた故郷の景色が目の前に広がる。

私は慌てて地上に降りてコートの中を覗き込むと

ミラエスが精霊状態になり私に抱き着いたまま顔を上げてにこやかに微笑む姿が見えた。

すると一気に安堵感に襲われ

足腰の力が抜けるのを感じその場にしゃがみ込んでしまった。


「ミラエス。」


「ハイ!白銀の魔女様。」


「もう、バカ!本当信じられない!何て無茶な事するのよ!」


私が思わず怒鳴る様に云うとミラエスはすまなそうに頭を屈めた。


「だって白銀の魔女様と御一緒したくて・・・」


「ミラエス?怪我・・無い?」


「はい、精霊状態なら怪我一つしません」


「そうね。でも、良かった。もう無茶しちゃダメだからね。」


「ハイ。気を付けます。」


「でも良く無事だったわね。あそこ一人しか通れない筈なのに。」


「おそらく精霊状態の者は衝撃を受ける身体を持たない為

人数に入らないのではないでしょうか?」


「そうかも知れないわね。でも本当どうなるかと思ったわよ。

安心したら何だか一気に疲れちゃった。」


そう云って周りを見渡すと私は駅前で1人真っ赤な派手なコートを

身体全体を包む様に屈みこんだまま

少しづつ出始めて来た人々の注目を浴びていた。


「あっあ~~。ミラエス!行くわよ!」


私は実体化したミラエスの手を引っ張りその場を急いで離れた。


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