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172 幕開けの朝へ

翌日の夜魔族のリオガルドとドリアがマクディス公爵邸を密かに見張って居ると

闇に隠れる様に黒い服装にフードを被った者が忍び込んで行くのに気が付いた。


「ドリア行くぞ」


無言なまま頷くドリアと共に忍び込むとその者は足音一つ立てる事無く

そのままマクディス公爵の自室の前まで慣れた足取りで真っ直ぐ進んで行く。

その男は事前に連絡して有ったのかドアをノックする事無く静かに開けてると

今迄被って居たフードを取り中へ入って行った。


リオガルドはドリアに視線を送ると直ぐに屋根裏に潜り込み

そこからその部屋を覗き込んだ。

そこにはマクディス公爵と茶色の長髪を後ろ手で縛った男が

向かい合わせでソファーに腰かけて居るのが見えたが

屋根裏からだとその男の頭しか見えず何処の誰かまでは判らない。


リオガルドはその男の顔を確認しようと場所を変え改めて部屋を覗き込んだ

するとリオガルドの顔が青くなって行く事に気付いたドリアがリオガルドに変わって貰い

その人物を確認した時思わず声を出しそうになり自分の口を両手で抑えた。


『何であの男がここに居る?』


その時リオガルドに背を叩かれ外へ出る合図を送られ直ぐにその場を離れ

外へ出ると急いでシフォン達の元へ走るリオガルドとドリアが思わず口を開いた。


「リオガルド!何故彼がこんな所に?」


「そんな事俺に聞かれても判らん!兎に角報告だ!急ぐぞ。」


リオガルドが施設の全員が何時も集まって居る部屋へ飛び込むとほぼ同時に

シフォン達に焦った様子で叫んだ。


「シフォン!マクディス公爵の所にはとんでもない奴が来てる!」


「リオガルド落ち着いて。皆にも分かり易く教えて欲しいんだけど一体誰がきてるの?」


「すまん。名はジャミ・フォーク。

前魔王カラファの家族を逃がす際バクスが出した追っ手の足止めを一人で買って出る程の強者だ。

そいつがラモル・ファシシアがムストニア王国で行方不明になった後

最後尾を勤めて居たんだがある日バクスの追っ手を押さえている時

突然現れたバクス側の援軍に遂に敗れたと今迄聞いて居たのだが

そのジャミ・フォークがマクディス公爵の屋敷に現れた。」


「そんなに強い魔族なの?」


「おそらくクリアと同等かそれ以上の実力がある筈だ。」


「えっ!それじゃあ元4鬼神?」


「いや、アイツは人の上に立つのは性に合わないとその話を蹴った。」


リオガルドのその言葉に一瞬静まり返った部屋の中で

ヤグスが付け加えた。


「ジャミ・フォーク。アイツが街中に魔物を放つような事をする者には思えんが

もしそうだとすると厄介な奴が相手に居る事になる。」


「そんな実力者なのか?」


シトラルが真剣な面持ちでヤグスに聞くと彼は周りに居る者を見渡し

全員が自分に視線を向けている事を確認したヤグスは少し俯き加減になりながらも椅子に腰かけた。


「本当は心優しい奴で何故こんな事をした等俺には到底信じられない位なんだが。・・・」


そう言って少し間を置くとジャミ・フォークの事を話し始めた。


「勿論あの男の力や魔力はシフォンには到底及ばないだろうが彼奴は半端ない場数を踏み

あらゆる武器を使いこなし相手の弱点を瞬時に見ぬく力を持って居る。

その為さっき言ったクリア処か前魔王バクスでさえ倒す事が出来る男だと俺は思って居る。

少なくても俺は奴と戦って勝つ自信はない。

だから彼奴が死んだとの報告を受けても到底信じられなかった位だ。

しかしアイツは俺が思って居た通り生きていた。

ここ十数年一体何が有ったかまでは判らないが今は敵として対峙しようとして居る事には変わりない。

シフォン、下手をするとあの悪魔の少女以上に手古摺る可能性が有る。気を付けてくれ。」


「それじゃあそのジャミ・フォークが首謀者でマクディス公爵が協力者と言う事なのかな?」


シフォンが問いかけるとヤグスは首を横に振った。


「いや、元々彼奴は人の上に立つのを嫌って居た位の男だ。

多分それは無いかと思うが・・・」


「思う?」


シフォンのその言葉に今迄俯き加減で話して居たヤグスが顔をシフォンに向けた。


「そうだな、奴の後ろに誰か居ると考えた方が良いと思う。

戦いにおいて奴に敵う者は少ないが逆に戦略においては疎い位だ。

ましてや人質を取る様な奴じゃない。

・・・まさか・・」


「まさか?」


最後の呟く様な一言が気になったシフォンが聞き直した。


「いや、何でもない忘れてくれ。死人が生き返る訳も無いしな。」


「でもジャミ・フォークも死んだと思われて居たんでしょ、それならその人物もその可能性が有るんじゃない?」


「ジャミ・フォークの場合既に虫の息だった奴の止めを刺す事無くファシズ達を追ったが

そいつは止めを刺し念を入れてその死体を焼いたとの報告を受けて居る。」


「一応その人の名を聞いても良いかな?うん念の為。」


「ああ、構わないその名はハーズガル・カンガルド、

ファシズと同じ元4鬼神の1人だ。」


「もしその人が生きていたらこの首謀者になった可能性が有る?」


「アイツはファシズと同じ様に人族の女を嫁にしたような男だそんな事は無いと思うが。」


「それじゃその人の奥さんや子供が魔王国に居るんだ。」


「それが・・不幸な出来事が有ってな、もうこの世には居ない。」


「ゴメン!バクスが逃げた元4鬼神の奥さんをそのままにして置く分け無いもんね・・・」


「いや、違うんだ。バクスじゃない。・・・」


「そうか・・言い辛い事なんだね。判った聞かない事にする。」


シフォンは一通りその事を聞いた後振り返りミラエスを見ると

言葉を掛けた。


「ミラエス、準備は?」


「白銀の魔女様。今夜全て終わります。レア大丈夫ね。」


「おう。任せて置け。」


シフォンはそれを確認するとその場に居る全員を見渡した。


「明日予定通り作戦を実行します。マケラ王の云った7日を待たずに首謀者を見つけ出し捕まえる!

その様に心得て置いて。」


「おう!任せろ」「・・・」「心得た!」「了解!」「判ったわ!」「シフォンさん」


更にバラバラだった・・・が、その意気込みは皆同じで目を輝かせていた。


そしてその翌日、王の決めた7日の期限残り5日の朝、

皆がまだ準備をして居る最中

レイラと2人で自室に居たシフォンが2人向き合う様にベットに並んで座って居た。


「シフォン。」


嬉しそうに腕を組んで来るレイラにシフォンは微笑みながら

その腕をぎゅっと自分の身体に寄せた。


「後5日だね。レイラ、今日全てが片付いたらその後一緒に王都を一緒に周らない?」


「うん、私はシフォンが一緒なら何処だって良い。」


そう云うと頭をシフォンの肩に乗せて来た。

シフォンがその頭を撫でて居ると突然部屋のドアが開け放たれた。


「シフォンさん。全員の準備が出来ました。何時でも行けます。」


ズダダダー!


レイがそのドアの前で嬉しそうに報告するとレイラが物凄い勢いで走り寄り

蹴り飛ばした!


「折角良い所で邪魔しないで!」


バン!


ズドンッ!


レイラに蹴り飛ばされドアごと吹き飛ばされ又もや気を失うレイ。


「レイラ!」


「あっ!ゴメン思わず・・・」


「しょうがないわね・・」


シュンとするレイラの肩に手を置きその後倒れたレイの介抱をするシフォン。


朝早くレイラの怒りで始まったが

この日いよいよシフォン達の巻き返しが始まる。

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