表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/240

171 王城

翌日冒険者ギルド経由で急遽王城へ呼ばれる事となったシフォンは

同行者としてどうしても一緒に付いて行くと聞かないレイラと

王都内を調べ周って居たエスティアとハッシュの3名を連れて行く事にした。


オアニニスのボイスは念の為シトラルの元に残し

昨夜レイラに膝蹴りを食らったレイは昨夜の内に意識を取り戻し

シフォン達と行動を共にする事になって居た。


真赤に染められた鎧に身を包みシフォン達の前を謁見の間に案内する近衛騎士団2人の姿は

ほぼ同じ背丈に見栄えする顔、金髪の髪に青い瞳と態々そろえたとしか思えない様な容姿をしていた。

その2人に案内され謁見の間に入ると両脇に貴族らしき人達が立ち並びその後ろには真っ赤な鎧を着た

近衛騎士団が無表情で立って居た。


するとハッシュが何か気付いたらしく周りの人間に気づかれない様に歩きながらシフォンに耳打ちをした。


「右側の奥から2番目に並んで居る茶髪の青い瞳の男が以前話して居たマクディス公爵だ」


その男はやや俯き加減で自分の意思を読み取れたれない様にして居るが如く無表情で立って居た。

シフォンは前を向きながら無言のまま王側から見えない様に左手を広げて

後ろを歩いて居るハッシュに礼の代わりの合図を送った。


シフォン達が部屋に入り末席に着くと早速カラナス王国国王シファ・マケラ王が口を開いた。


「白銀の魔女お主は確かに冒険者では有るが最高クラスSの名を持つ唯一の存在

このカラナス王国の王都へ来て居たのであれば個人的な理由として来国したとしても

我が前に顔を出す事を必要と感じなかったのか?」


「申し訳ありません・・」


シフォンは深々と頭を下げそれ以上口を開かなかった。


「今回の事を冒険者ギルドの方から報告を受けて居る。

ここには人を探しに来国そして数日後に王都内で襲われ生死の狭間を彷徨いながらも復帰すると

昨夜の魔物騒動に我が国民の為に魔物を掃討するとある。これは王都守護兵からの報告にも上がって居るが間違いないな。」


シフォンは頭を下げたまま答えた。


「はい。」


「白銀の魔女頭を上げるが良い」


シフォンがその言葉に応え静かい顔を上げると微笑む シファ・マケラ王の顔がそこにあった。

シフォンが意外に思って居るとそれを察したのかマケラ王が昨夜の事を話し始めた。


「昨夜何者かがこの王都に魔物を密かに持ち込みそれを放った。

そればかりか王都正門近くで開門を待って居た者達に向けても多くの魔物が襲い掛かかり怪我人が出て居る。しかしその魔物の数放たれた場所を考えると遥かに少ない被害で済んだのもここに居る王都周辺を守るバリオッド騎士団と王都内を守る王都守護兵そしてそなた達のお陰だ。

礼を云う。しかしだ此れから他国へ私用行く事も今後多々あるであろう

その時は必ず各王には必ず顔を出すが良い。お主は世界初のクラスS冒険者だけでは無く

ナリエス王国の顔でもある。

オスター・コクレシア・ボイリス王に恥をかかせるような事はするでない。良いな。」


「有難う御座います。そのお言葉心に留め置き今後必ず。」


「まあそんなに畏まるな。それより今回の問題はお主を襲った者の正体だ。かの者はお主が死んだと全国へその噂をばら撒いたばかりか帝国の勇者の死の噂も広めて居る。

そして今回の魔物騒動だ。お主に心当たりが有るのではないか?」


その言葉に思わずチラッとハッシュが話して居たマクディス公爵を見たが

『まだ確たる証拠も無く彼の名を出す事は出来ないな』

そう思い直すと不明としか言えない事に気付いた。

ただ判るのは悪魔のエリアと魔族を使って自分達を狙って来た事だけだ。


「マケラ王現在私達を襲って来たのはエリアと名乗る()()と魔族が関係して居るとだけしか判って居ません。」


「「「悪魔!」」」


その言葉に一瞬室内がざわついた。

シフォンやフェスタの様に身近に悪魔を感じる者等殆ど居ないこの世界では

悪魔=破滅の様な図式が頭の中に展開されるのでその騒めきが起こる当然の様だった。


「今悪魔と云ったか?」


マケラ王は玉座から身を乗り出しシフォンに聞いて来た。


「彼女は契約悪魔だと云って居りました。契約悪魔はその契約者を裏切る事は出来ない為

その契約期間が過ぎるか契約者が死ぬまで契約者の云うがまま動く事になります。」


「随分と詳しい様だが何処かで学んだのかな?」


『ああ、そうだ。

レイラやレアの事は流石に話せない。』


「はい、ある文献の中に悪魔に関する記述を読んだ事がありましたので。」


「ほう、その様な物が、私も読んでみたい物だな。」


「申し訳ありません実は・・」


「良い、私も読んだ事の無い物だ、持ち出せない物であろう。他国の者に無理は言えんからな

それで、白銀の魔女これを見た事は無いか?

確かお主は帝国とも親交があった筈だが。」


マケラ王が右手の親指と人差し指で摘まむように持った指輪を見た時

ビクッとエスティアが一瞬震え小さな声で耳打ちされた。


「シフォン、あれは帝国暗部指揮者の持つ指輪。」


確かにその指輪には帝国の紋章が描かれて居てその下には蛇の模様が描かれて居た。


「これは昨夜魔物を放ち繁華街へ誘導して居た者が付けていた物だ、

王都守護兵の者がこの持ち主を討ちとったらしい。」


そう云うと末席近くに居た男が一度マケラ王に頭を下げると

静かに王へ近寄りその指輪を両手で受け取った。


「あれはダムラ・パン・ボッシュ貴族では無いが王の知恵袋として有用されて居る男だ。」


ハッシュが静かに教えてくれたその男は短くした茶髪茶の瞳の派手さは無く

何処にでも居そうな感じの男だった。

その男がその指輪を見ると高く掲げ声を張り上げその持ち主を特定した。


「これはアリタリス帝国暗部の指揮権を持つ者の指輪で間違いないと思われます」


シフォンはそれを聞くと隣に居たエスティアを見た。

彼女は驚きと何かを考える様な仕草をするとシフォンに耳打ちして来た。


「何故それを知って居るのか判りませんが確かにあれは暗部の指揮を司る者が持つ指輪です

しかし今回指揮権を持つ者など此方には来て居ませんし

例え来ていたとしてもあれを持ち作戦に臨む者など居りません

それ何処か自分の身を明かす様な物等一切身につけて居ない筈です。」


「それじゃあ、あれは一体誰が?」


「おそらくバージスの物では無いかと。」


「バージスって確か以前帝国で私達を嵌めたあの?」


「はい。彼が捕らわれた時あの指輪も回収される筈でしたが無くしたと云い張られ

そのまま見付からなかったとの覚えが有ります。」


「そのバージスの指輪を一体誰が?」


「それは判りませんがそうなるとあの時の首謀者と今回の首謀者が同じ者だと言う事が考えられます。」


そこまでエスティアが話してくれた時マケラ王の大きな声がその間に居た全ての人間に一気に緊張感を持たせた。


「皆の者!今聞いた通り帝国が我が王都シャシスに間者を送り

王都周辺ばかりか王都内にも魔物を放ち我が王都を混乱に陥らせ民を恐怖に陥らせた事は明白である。

幸いにしてこの王都守護兵団及びバリオッド騎士団そして白銀の魔女の働きにより

死傷者の数は少なく済んだがこれを見逃す分けには行かん。

遺憾の意を示しはするがおそらくは知らぬ存ぜぬを突き通すに違いない。

そこで奴らにも同じような思いをさせてやろうと思う。」


「「お待ちください。」」


シフォンとマクディス公爵の声が重なった。

マクディス公爵がシファ・マケラ王に許可を貰うと一歩前へ出て頭を下げた。


「申し上げます。何故に帝国は我が国を狙うのでしょうか?その辺りが私は腑に落ちません」


「それは私が」


そう言って同じ様に一歩前へ出て来たのが先程指輪の説明をして居た ダムラ・パン・ボッシュだ。


「皆さんもご存じだと思いますがそこにおられる白銀の魔女殿の死の噂が広がりその後

帝国の勇者の死の噂が広がりました。

事実白銀の魔女殿は何者かに襲われながらも無事戻って来られました。

幸いナリエス王国は静観をして居てくれたお陰で大事には至りませんでしたが

帝国の勇者が襲われ未だ行方知れず死んだと噂されております。

なればそれを口実に我が王国を奪いに来るつもりでは無いかと思われます。

その為には国内を混乱に陥らせ戦力の落ちた所を一気に攻める。

それが今回の魔物騒動の正体では無いでしょうか?」


「お待ち下さい、」


シフォンが答弁の許可を貰うと同じ様に一歩前へ出た。


「それでは私を襲った悪魔は一体誰の命により襲って来たのでしょうか?

先程私が帝国と友好関係に有ると云われた通り帝国と良い関係を保って居ります。

その帝国がカラナス王国を寝る為にワザワザ私を狙いそして今度は自国の勇者様を狙うとは

到底思えないのです。

必ずこの犯人は別にいます。

その犯人を見付ける為私に時間を貰えないでしょうか?」


「白銀の魔女よ。其方の気持ちは分かるが一国を落とす為には自国の英雄一人の命を犠牲にする事は

十分考えられる事だ。逆に我らがその様に時間を掛けている間に密かに準備を整えているかも知れんではないか?」


「シファ・マケラ王それでも私はもう少し帝国を信じたい。

お願いです私に時間を貰えないでしょうか?」


「条件がある。」


「はい。どの様な事でしょうか?」


「帝国に対し其方の力を我が国の為に役立てて欲しい。

5000もの魔族を一人で倒した其方の力を貸して貰えるなら時間をやろう。」


「・・・判りました。その時は必ず。」


「よし話は決まった。但し永遠に時間をやる分けにも行かん。

期間は7日だ。

期間が終わり帝国の返事次第では軍を動かすのもやむ無しと知るが良い。

その間にその悪魔の契約者を突き止めよ。」


「シフォン!」


エスティアから声が掛かる


「大丈夫必ず見つけ出す。

そして私達を嵌めた人を倒すわ」


「私は相手が誰だろうとシフォンと共に戦うわよ。

それに7日なら何とかギリギリ魔界へ帰るまで間に合いそうだしね。」


レイラは意気揚々と答えるが彼女は相手が誰であろうと

シフォンとの為に一緒に戦える事が嬉しいに違いなかった。


そしてエスティアは一息置いて


「私はシフォンに救われた身。例え帝国に反旗を翻す事になろうとも付いて行く。」


「レイラ、エスティア有難う。でも絶対そうはさせない。皆で協力すれば必ず犯人を見つけ出せる。」


意を決したシフォン達が謁見の間を後にしようとした時

チラッとハッシュが気にして居たマクディス公爵がほくそ笑むのが見えた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ