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113 フェスタ

私は親の顔を知らない私の一番古い記憶は私の顔を覗き込み

何時も嬉しそうにして居るラモルの笑顔。


私を育ててくれたラモルによると私とラモルの出会いは、バレルの森で泣きながら

彷徨い歩いていた私を見つけたラモルが私を保護し

森の中を魔法を使いながら私の両親を探してくれた事から始まったらしい。


しかし幾ら探しても私の親は見つから無かった。

私を見つけた場所は一番近い村からでも10キロ以上ある場所、

痩せ細りボロボロの衣服を身に着けた2歳位の私が到底一人で歩ける訳も無く

どうやら生活に困窮した両親が私を捨てたのではないかと結論付けたと言う。


そこから私とラモルの生活が始まった。

何時も私が泣き始めると優しい笑顔で私に語り掛けてくれた。


「フェスタ(きみ)は一人じゃない、何時も私が側に居るよ。悲しい事が有れば何時でも私が君の悲しみを取り去ってあげよう。嬉しい事が有れば2人で倍にしようじゃないか。」


その言葉通り何時も私の側にラモルが居てくれた。

始め私と住んで居た家は小さく何も無かったがある日ラモルが町に行き

お金を持って来た。


何故こんなにも沢山のお金を持って来られたか聞いたら。


「アイテムボックスを売ったのさ。私にはフェスタが居る

キミとここに住むならもうアイテムボックス等要らないからね。」


そう言って笑って居た。

後で知った事だがアイテムボックスは凄く貴重な物で小さな物でも家が一軒買えるほどの価格で

売り買いされてる事を知った。

そんなに高い物を売ってまで私の為新しく家を建て畑を広げ苗を仕入れて来て

私とラモルとの生活に当ててくれた。


「ねえラモル、貴方は魔族なの?ラモルの持って居る本に

魔族の事書いてあったけどそうなの?」


私の何気ないその疑問はラモルの顔から笑顔を消した。


「フェスタは、魔族の事をどう思う?」


「分からない。だって私には魔族がどんな人なのかも

私と同じ人族がどんな人達なのかも知らないもの。私を捨てたお父さんやお母さんは人族なんでしょ。

だったら人族って冷たい人達なのかも知れないじゃない。それにもしラモルが魔族だったら

魔族ってきっと優し人達なんだよね。私ラモル大好きだもん。」


「そうか、でも魔族にも悪い人も居るし良い人も居る。人族もそうだ。

ただフェスタのお父さんやお母さんは、キミが思って居るよりも冷たい人じゃ無いと思うよ。

きっと止む無く手放したんじゃないかな?

私が君と出会った時フェスタのボロボロの服の両方のポケット一杯にパンと焼いた米が入って居たんだ。

きっと掛け無しの食料を君に渡したんじゃないかと私は思って居る。

キミはきっとバレルの森の脇を走ってる商団の良く使う道に置いて行かれたんじゃないかな?

それが何かの間違えでフェスタが森の中へ入り込み私と出会った。

そう思うと辻褄が合うんだ。」


「・・・分かんない。私お父さんやお母さんの事なんか何にも知らないもの。

私はラモルが居ればそれで良いわ。」


それからもラモルは変わらず笑顔を絶やさず私に接してくれた。

あの日まで・・・


あの日私は初めてラモル以外の魔族を見た。

その人は私に笑顔で挨拶すると何故かラモルは、険しい顔に変わった。


「フェスタ、私は彼と大事な話をしなくてはならないから

話の間部屋に近づかないでくれ。出来るね。」


ラモルは笑顔とも悲しみとも何とも言えない顔を私に向けそう言うと

2人で部屋の中へ入って行った。


それからどの位時間が経ったのかは分からない。

何時の間にかラモルの所へやって来た魔族は帰って行き話の終わったラモルは

とても疲れた顔をしていた。

その夜とても苦しそうなラモルの声に何度も起きたが

ラモルは、何でも無いと直ぐに私をベットへ連れて行き寝かせてくれた。


それからだ

ラモルが急に年老いて行きそれから2年後には既に年寄りの様な顔になって居た。


ラモルはそんな身体になってからも私に優しく接してくれて


「私はもう年寄りになってしまったからこれからはラモル爺さんだな。」


と冗談を何度も言い始め何時の間に私も若かった頃のラモルの事を忘れ始めていた。

それからはラモルの事を元々年寄りだったと当たり前の様に思えて来ていた。


それから何年も経ちラモルが苦しそうにする日が多くなって来た。

そんなある日ラモルは私に1冊の本を私に見せて召喚魔法の事を教えてくれた。


「フェスタ良いか今迄キミに色んな魔法を教えて来たが最後にもう一つ教えて置きたい魔法が有る。

召喚魔法、・・・私の残りの寿命はそう長くない、私にもしもの事が有った場合この

召喚魔法を使ってキミを守る者を呼び寄せて欲しい。悪魔召喚・・召喚魔法で呼び寄せ契約をすれば決してフェスタを裏切る事は無い。ただ悪魔と契約するにはそれなりの代償を要求される。

その要求に応じるだけの物もここに用意して有る。

そしてもう一つ用意する物、受肉する為の身体も今ここに有る」


そう言って自分の胸を手の平で叩くラモル。

それを見て私は思わずラモルに抱き着いた。


「ラモル死んじゃ嫌だ!ずっと私と一緒に居るって言ったじゃない。お願い死なないで。」


「フェスタ、人には必ず死は訪れる。それが遅いか早いかの違いだけだ。

だからそんなに悲しまないでおくれ。」


「だって。私にはラモルしか居ないもの。私を一人にしないで!」


「フェスタ・・すまないこればかりはどうしようもない事なんだ。

だから私が死んだら必ず召喚魔法を使って悪魔と契約して欲しい。フェスタを守る盾となる者を側に置いて欲しい。お願いだ約束してくれ」


「うっうん、ラモルがそんなに言うなら約束する。でも・・・」

そこまで言うと涙が零れ落ち止まらなくなってしまった。


それから半年もしない内にラモルはこの世を去った。


私はラモルの言い付け通り魔術書を使い悪魔召喚を行い『レア』と契約した。

レアは優しく落ち着いたラモルと違いワンパク坊主その者で私に泣く暇など与えてくれなかった。

そのお陰でラモルの事を思い泣く事は無くなったが何故かその頃には若い頃のラモルが思い出せず

年老いたラモルの姿しか思い出せなくなっていた。


そんなレアとの生活を始めてから半年ほどした時白銀の魔女と言う女性と帝国の勇者達が私の家へやって来た。


彼女達は、私達の近くで人が居なくなったり変わった事が無かったか聞いて来たけれど

ずっとバレルの森の中で畑仕事をして時々町へ出るだけの私には、

何処で何が起こって居る等分から無かったが

悪魔のレアが突然自分以外の悪魔が居る事を告白した。


それから気が付けば白銀の魔女と呼ばれるシフォンに協力する事になり

その悪魔を倒す事になり今まで体験した事の無い経験をした。


シフォン達と協力して倒したミレイユと言う悪魔を召喚した『リスファ』と言う女性にも悲しい過去が有る事を知り

私は、レアと共にそのリスファの思い出を大事に守る事にした。


それからだ。

若かった頃のラモルを思い出し始め最近ようやくその全てを思い出す事が出来た。


強く優しいラモル。

今は既に居ない私の大事なラモル

魔族のラモル。


そのラモルと同じ魔族討つためにシフォンが私に協力を頼んで来た。


そんな事出来る分け無いじゃない。

ラモルと同じ魔族を殺すなんてそんな事。


しかしその魔族を倒さないと人族の国が襲われると言うシフォン。

私と同じ人族を守るのが当然と言うばかりの言い様。

でも私にはラモルとの思い出が大きく圧し掛かる。

私の中ではラモル=魔族なのだ。


一体私はどうしたら良いのだろう?

私を捨てた両親と同じ人族を守るのか?

それともラモルと同じ魔族を守るのか?


ラモルお願い教えて・・・







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