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こんなワタシ(AI)でどうですか!?  作者: Matthew・S・H
第1部 Stand Alone!
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番外編 新人保安官・有坂澪!

 私は志望書を持って、校舎の廊下を機敏な足取りで進んでいた。ハイヒールのコツンコツンという音が、まだほとんど誰もいない朝の校舎に響いている。

 さっき教えてもらった職員室への道のりを、言われたとおりに進んでいくと、目的の場所にたどり着いた。ドアを開ける前に、「有坂澪」と名前が書かれた志望書をもう一度確認した。

「失礼します」

 凛とした態度で、少し古臭い木製のドアを、ガラガラと半分開けて挨拶した。

 担任の大門先生と、彼と話していた上級生らしき人物が、振り向いてこちらに向いた。彼ら以外に誰もいなかったので、私はすぐに分かった。

「おう、どうした?」

 私がすぐそばまで行く間に、先生はそう問いかけた。

「ワーキングの志望書を持ってきました」

 先生は怪訝な表情で私を見つめた。

「まだ1か月は猶予があるぞ? もっと考えたほうがいいんじゃないか」

「いえ、もう考えはまとまってるので」

「そうか」

 先生は私が手渡した志望書を手に取って、まるでどうでもよさそうに見回した。

 一方、もう一人の背の高い上級生がその場を後にしようとした。

「じゃあ僕はこの辺で」

「おう……ちょっと待て!」

「あ、なんですか?」

 先生は、その先輩に志望書を手渡して、私に向いた。

「お前、保安部に入りたいのか?」

「ええ、まあ……」私は濁すように答えた。

「ちょうどいい! 一ノ瀬、お前こいつの世話してやれ」

「ああ、はい、わかりました……といっても何すればいいんですか?」

「そうだな……とりあえず射撃の腕でも見たらどうだ?」

「なんか投げやりなような気がしますが……わかりました」


「君、射撃はやったことある?」

「練習は結構しました、父が警察官なので一緒に行くこともあります」

「ほう、期待できるね」

 コンクリートに囲まれた、5、6レーンほどある薄暗い射撃場で、私は拳銃とイヤーマフ、そしてショルダーホルスターを手渡された。

 拳銃は、S&Wのチーフスペシャル。5連発のリボルバーで、木製のラウンドバットグリップが装着されている。手に持つと、いつも使っていたオートマチックにくらべて少し大きく感じた。ホルスターを肩から掛け、イヤーマフを首にかけて、一ノ瀬先輩の方を見た。

「じゃあ、試してみろ」

 先輩はそれだけ言って、イヤーマフを装着すると、腕を組んで私のそばで見守った。

 はい、と私は返事をして、台に置いた拳銃を、トリガーに指をかけないように細心の注意を払ってホルスターに入れると、マフをして、少し猫背になって前方の紙製のターゲットを見た。呼吸を整え、ホルスターに右手を近づける。

 一瞬のうちに、私は拳銃をスッと抜くと同時にハンマーを起こし、左手を添えて的を狙った。そして5発を続けざまに撃った。イヤーマフをしていても、頭がしびれるような銃声が響いてくる。

 撃った後も、ほんの少し静止して、それから射撃姿勢を解いた。シリンダーを振り出して薬莢を固い地面に落とした。

「上出来だな」と先輩は褒めた。

 私がターゲットを見ると、初弾はターゲットの胸の真ん中を撃ち抜いていたが、反動が強いせいか、あるいは撃ち方のせいか、だんだんと上に命中している

「まあ、もう少し訓練は必要だが、素質はあるな」

「ありがとうございます」

「保安官としては、問題ないだろう、志望書もばっちりだ、十分やっていけるはずだ」

 私は、緊張を少し解いた。小さな一歩であるが、警察官である父に少しは近づけたはずだ。私は薄暗い射撃場の中で胸を躍らせた。


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