第9話(最終回)
ダークブルーに染まった空、真っ暗な廊下、電灯が一本だけ灯った薄暗い職員室で、着替えを済ませた大門が、椅子がギギッと曲がるほど深く腰掛けて、うなだれていた。
そこへ、俺がタオルを持って駆け寄った。
「ああ、一ノ瀬か」
「お疲れさまです、これで髪を拭いてください」
「すまんな」
タオルを手渡した。先生はそれを受け取ってわしゃわしゃと髪を拭いた。
「それで、さっきの話は本当ですか?」
「ああ、何が?」
「本当にあの二人をもとの家に戻すんですか」
先生は考えた。また背もたれを押し込んで天井を眺めて「そうだなあー」と言った。
「しかしなあ、これ以上あいつらに精神的負担をかけさせるわけにはいかんだろう、寮に押し込まれるっていうのは、思いの外辛いもんだ。それも自分の意思とは関係なく、しかも得体の知れない組織につけねらわれているんだからな」
「精神的に辛いのは分かります、しかし事実として命をねらわれているんです」
「わかった、監視くらいは付けておいたほうがいいだろう、学校にいるときは、有坂に頼もう、学外では・・・・・・」
「アイリーンに頼みましょう」
「そうだな、そのほうがいい」
「それで、もう一つ」
「何だ?」
「やはり、学校の中に内通者がいるのではないかと思うのですが」
「同感だ、絶対にいるさ。あいつらはセンサーが働かないということを知っていた。それに・・・・・・」
「あの脅迫動画ですか」
「ああ、あいつらが狙っているのはアイリーンだけではない、あの二人もその対象に入っている。ということは、鹿野と菱川の二人が、アイリーンと何らかの関わりがあるということを察知している、ということさ。それも三人が出会ってすぐに奴らは気づいた。まあ、結局そのことはあの二人には言っていないが」
「それは苦肉の策でしょう、これ以上不安をあおるようなことはできませんから。でも、やはり危険ではないでしょうか」
「今回の件は、奴らにとっては失敗だったろう、また違うアプローチをしてくるおそれもあるが、警察も敏感になっていることだし、しばらくは動かないはずだ。一ノ瀬、引き続き内通者の捜索に当たってくれ、あの男たちから、何かつかめるかもしれん」
「わかりました」
ご愛読ありがとうございます。第0部、および第1部は完結です。
第2部は別の作品として、近日中に新たに連載を開始します。是非ご覧下さい!




