スカーレットアイ結成
お待たせしました。
エルビンが完全回復してから数日後、父カザールの執務室に初めて呼ばれた。
中に入ると、其処にはバルフィナンス侯爵家の重役達が勢揃いしていた。
「来たな。では早速だが始めようか」と父が言う。
「そうそう、エルコンタクトレンズを外しても良い」
実はこの世界にはコンタクトレンズが存在する。
なのでエルビンは変わった目の色を隠す為に、色付きのコンタクトレンズをして元の色に偽っている。
エルビンがコンタクトレンズを外すと「確かに……真紅ですな」と部下の一人が呟く。
「これは一体何の集まりでしょうか?」
エルビンが質問する。
「これはな。エルのその眼の力を使い、魔法使いを増やそうと思う。聞いた話だと魔法使いと言えるほどの魔力を保有している者は少ないが、それ以外の者達には魔法剣士となって貰おうかと考えている。そしてその指揮官にエルにはなって貰いたい」
突然の話にエルビンは驚く。
「突然の話に驚いているだろう。まだエルは幼いが、時期に知る事になるだろうから話しておこう」そう前置きしてカザールは理由を話し始める。
何時もの優しい口調とは違い、威厳がある大貴族の当主に相応しい覇気を纏っている。
「先ずは我々が住まう国の現場から話しておこう。エイラム帝国はアルタイト大陸屈指の強国である。その分敵も多く存在し、今現在は我が領の海の先にあるアルカサイダ首長国と、エイラム帝国の北方に位置するケントルム魔法王国ぐらいしか友好国は居ない。それ以外の国は基本的に敵国か、潜在的敵国でしか今のところ存在しない。まあ、何故かと言うとこの国の建国まで遡らなければならないので、詳しく知りたければ家庭教師の者に後で聞くと良いだろう。
それで本題だが現在エイラム帝国の西に位置するヴェステン公国の動きが怪しい」
(ヴェステン公国か………。確か元々はエイラム帝国の公爵で当時の皇帝の弟が当主だった筈だ。
確かエイラム帝国が仇敵であるレリジオーネ法国と五度目の全面戦争時のどさくさに紛れて、反乱を起こした国だ。エイラム帝国の皇帝の座を狙っての反乱だったが、当時のバルフィナンス侯爵家が水際で食い止める事に成功したと習ったな。それでレリジオーネ法国の横槍の所為でヴェステン公国として独立した国だ)
レリジオーネ法国との因縁については割愛する。
「それは近々戦争が起きると言う事でしょうか?」
「いや、そうすぐと言った訳ではないが、いつ起きてもおかしくはないのでその心構えはしておく必要がある。そしてその為にも戦力の底上げが必要だ。ヴェステン公国は我が国とは正反対だが、ヴェステン公国との国境にはリレディー伯爵家があるのでな。いつでも援軍を送れる様に準備する必要がある」
(!!リレディー伯爵!そう言えばヴェステン公国の侵攻によって滅びた家だ。そしてエルビンの心に大きな傷を負う事になった出来事だった筈だ)
「その為にも今から出来ることは全てしておく。その為にエルビンも協力して欲しい」
カザールの目を真っ直ぐに見つめ返して答える。
「はい!微力ながら僕もお手伝いします!」
「3日後に素質のある者達を中庭に集めるので、魔力を解放させてやって欲しい。彼らを鍛えて兵士にする。無論無理強いするつもりは無いが、監視は付ける事になるだろうな」
そう言われてミュゼとラックの二人の顔が思い浮かぶ。
「一つお願いがあるのですがいいでしょうか?」
「何だ?」
「教育機関を作って欲しいのです。そこで領民達を通わせて優秀な成績を収めて者には、王都の学園に通わせて欲しいです」
カザールはしばし沈黙して黙考する。
「良かろう手配しよう。デキル手配を頼む」
「畏まりました」
それまで影の様に存在を消していたデキルが、一歩前に踏み出して深々とお辞儀をして部屋から退出して行く。
その後も部下達を混じえて、今後の方針を決めて行く。
そして来るべき3日後、中庭には魔力を持つ素質ある者達が集められた。
その数は87名も居たが、その内半数近くが年寄りや子供達である。
子供の場合はもう少し大きくなってから、鍛えれば良いが老人達は魔力を解放した後は、治癒士に師事して貰い簡単な治癒魔法を覚えて貰う予定だ。
簡単な初歩の治癒魔法なら、魔法使いであれば習得出来るからである。
それ以上となると素質のある者しか習得は非常に困難になる。
カザールは、集まった者達にその理由を話して行く。
何人かこの話を聞いて去って行くものと思っていたが、父が余程慕われているのか誰一人この場を去る者は居なかった。
「皆ありがとう。残ってくれて嬉しく思う」とカザールが感謝の言葉を口にする。
「では、エル。初めてくれ」
「わかりました」
エルビンは一人一人の胸に手を当てていき、魔力を解放させて行く。
すると彼らはしっかりと魔力を感じ取ることが出来た。
全員が魔力の解放を行った所で、エルビンはある事を思い出してカザールに問う。
「そう言えば父上。この部隊の名前は何にするので?魔法士隊などにしたらすぐにバレますよね?」
この世界では魔法使いだけで構成された部隊は、宮廷魔法師部隊か魔法師ギルド
「それもそうだな」
カザールは暫く考えた後「では、諸君らの部隊名を発表する!これより諸君らには『スカーレットアイ』と名乗って貰う!」と宣言した。
こうして後にエルビンの親衛隊として活躍するスカーレットアイが結成された。




