領内散策
魔石鉱山が発見されてから数日が経ち、領内は好景気に見舞われて居た。
何処からか話を聞きつけたのか、他領から商人が続々とバルフィナンス侯爵領に集まって来た。
父はスラムで燻っている若者達に優先的に鉱山での仕事を割り振り、失業者や無職の者を優先的に使っているので、目に見えて犯罪発生率は減少し、領内は活気に溢れている。
エルビンは父カザールから許可を得て、数人の護衛を引き連れて早速人材確保に動き出した。
父が善政を敷いているお陰で、割りかし簡単に説得に応じて人材確保は順調に進んで居た。
父も何事も経験だと言い、エルビンの行動を咎めず寧ろ支援してくれた。
なので此処で新たに開発研究を主にする新たな部署を設けた。
そこではエルビンの朧気なゲーム知識と現代知識を彼らに伝え、彼らが最適な形に整える部署として機能し始めた。
先ずは簡単な所から始めた。
千歯扱きを試作品に幾つか作り、それを農民に使い方を教えて渡して見ると、絶賛され他の農家からも欲しいと注文が相次いだ。
父にこの事を話すと必要な資金や材料の調達を請け負ってくれた。
それにこの活躍を聞いた母のフェリーネがやって来て、色々と頼みを聞いてくれた。
先ずは足踏織機を開発して、それを戦で働き手を失った未亡人を集めて仕事を割り振る。
まだ、幼い子供達の為にエルビンは託児所の設置を母に訴えた。
何とか説得に成功して工場で働いている間、まだ幼い子供を預かる様になる。
託児所で働くのは近所の奥様方である。
まだまだ女性の社会進出が出来て居ないので、これはその1歩になるだろう。
まあ、この世界には魔法があるので魔法が使える貴族の女性などは戦力として考慮されているので、そこまで立場は低くはないが魔法が使えない平民の女性の身分はだいぶ低い扱いになっている。
(さて、今日は何処を見て回るとするかな。大体の人材は集まったし、後は彼らの成長を待つとしても他に何か出来る事はあるかな?)
取り敢えずまだ訪れた事の無い場所に行くことにした。
飛空船は今は魔石関連で全て出払っているので、移動は馬車での移動になる。
簡易なリーフ式サスペンションを教えたので、だいぶ振動はマシになっている。
まあ、それでもふかふかのクッションは敷き詰めている。
それに領地内にゴムの木を見つけたので、後は加工技術の発達に伴い何れはゴムも完成するだろう。
そうなればだいぶ移動が楽になる。
馬車で暫く街道を進んで行くと、水が流れる音が聞こえてきた。
近くに川でもあるのだろうか。
気分転換に川の方へと向かわせると、其処には「あれは………確か特待生として学園に入学した二人だったはずだ」
基本学園には貴族の子弟や金持ちの商人の子供しか、通って居なかったが試験の成績が優秀であれば平民でも特待生として入学する事が可能であった。
「あれも悪しき風習だな。何れは平民でも普通に通える様に改革しないと駄目だが、今の自分にはそんな力はないか」とエルビンは独りごちる。
護衛達は馬車で待たせて一人で川で遊んでいる集団の方へと向かう。
「やあ、何か釣れた?」と川で釣りをしているツンツン頭の少年に声をかける。
「ん?いやまだ何も釣れてないなぁ〜。いつもなら一匹、二匹は釣れている感じなんだけどな」
「もう、ラック!何嘘ついてるのよ、いつもって釣りをしたの今日が初めてじゃない。くだらない見栄は張らない方が良いわよ」
ラックと呼ばれた少年を注意したのは、サラサラの金髪の髪を肩口で切り揃えた少女であった。
「う、煩いなミュゼは。良いだろう少しぐらい見栄を張っても……」
「いつか痛い目を見るから注意してあげてるのよ」
「二人は仲が良いんだね」
「まあな、コイツとは同じ村で家も隣同士だしな」
「そうそう、ただの腐れ縁って奴よ」
「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺はラック。んでコイツがミュゼだ」
「コイツとは何よ、ミュゼよ。よろしくね」
「ああ、俺はエルビンだ。よろしく二人とも」
「エルビンはここら辺に住んでるのか?」
「いや、今日は偶々来ただけだよ」
「へぇ〜そうなんだ?俺たちはあまり村周辺から出た事無いからな」
「そりゃそうでしょ?基本的に村人はそんなもんよ」
「ふん!俺はいつか村から出てビッグな男になって見せるぜ!そうだ!冒険者にでもなって一攫千金も悪かないな!」
「何言ってのよ!冒険者なんて危険な職業アンタみたいな子供には無理に決まってるでしょ」
「ま、まだ子供だけど大きくなれば力もつく!」
このままでは喧嘩しそうなので仲裁する。
「まあまあ、二人とも落ち着いてよ」
二人の間に入って宥める。
「ふぅ、ごめんねエルビン。少し熱くなってしまったわ。私はそうね将来はパン屋さんなんか開きたいわ。私パンが大好きなの」
「それは良い夢だね。いつか食べてみたいよ」
「ふふ、美味しいパンを用意して待ってるわ」
「待てよ!俺も行くぞ!」
「はいはい。わかってるわよ」
そうして楽しく3人で話したり、遊んだりしていると日が傾いて来た。
「あ!そろそろ戻らないといけないわ」
「うわ!もうこんな時間かよ!早く帰らないと母ちゃんに怒られる」
「じゃあまたね」
「おう!また明日も此処に来いよ!」
「ええ、明日も遊びましょう」
「わかった。明日も来るよ」
二人と別れて馬車に戻る。
「エルビン様。御洋服が汚れて居ります」と言い、替えの服を用意してくれた。
「ああ、ありがとう」
「いえ、エルビン様が楽しそうで、ようございました。此処最近のエルビン様は何やら張り詰めた様な感じでしたから」
「そうだったかな?それと長い間待たせてごめんね」
「いえいえ、滅相もございません。我々の事はどうか気になさらず、明日も目一杯楽しんで下さいませ」
「ありがとう」
翌日も此処に来てラックとミュゼの二人と楽しく遊んだエルビンは、二人の事を母に話した。
「まあ、エル。素敵な友達が出来たのね。今度お家に招待してはどうかしら?」
「父がお許しになるでしょうか?」
「大丈夫よ。私に任せなさい」
そう息巻いて、フェリーネは父カザールの元へ向かった。
暫くするとフェリーネと一緒に父の姿が現れた。
「エル。友人二人を招待してあげなさい」と少し疲れた感じの父がエルビンの頭をポンポンと叩きながらそう告げる。
「よろしいので?」
「ああ、勿論構わないとも」
父の了承も得たので二人にこの事を伝えることにする。
「何気に俺って友達が居なかったな。それもそうか、確か7歳の時に貴族デビューするのが一般的だからな」
この世界の乳児などの致死率は高く、だいたい7歳まで生きていて漸く、貴族家では正式な後継者として認められる。
なので、だいたい社交界デビューするのは7歳を過ぎてからだ。
それに7歳の生誕祭は一番豪華で素晴らしい物であると、父は言っていた。
いよいよ来年なので、母はその準備に追われている。
一年も前から?と思わなくもないが、それが一般的であるらしい。
ラックとミュゼも同い年だし、生誕祭には招待出来ればいいな。
さて、明日に備えて寝るかな。




