交流会・後編
特に順番は決めずに、エルビン達最後のグループは会場内へと足を踏み入れる。
煌びやかなシャンデリアに照らされて、指定された場所まで行く。
そして壇上の最前列に並ぶと、奥の扉が開き一人のまだ若い人物が入って来る。
その人物こそ2年前に戴冠されて、このエイラム帝国の至尊の座に就いた、若き皇帝ベッケンバウアー・トルソー・アルフィン・グリムハート陛下である。
皆が片膝をついて、出迎える。
「皆。面を上げよ」とベッケンバウアー皇帝の背後に控える宰相ノートン・フォン・ロズベルグが言う。
ノートンはソフィアの祖父である。
その言葉に従って貴族達は面を上げる。
「今日は実に目出度い席である。皆立ち上がるが良い」とベッケンバウアーが声を掛けて、二度目で貴族達は立ち上がる。
「さて、本日は皆に紹介したい者がいる。ヘクター来なさい」
そう言って壇上に登場したのは、ベッケンバウアーと同じく銀色に輝く髪に、青い瞳のエルビン達と同じ頃の少年だ。
「紹介しよう。余の息子で、ここに集まった諸君らの子息、子女と同じく今年7歳を迎えるヘクター・グル・アルフィン・グリムハートだ」
「只今御紹介に預かった。ヘクター・グル・アルフィン・グリムハートだ。皆宜しく頼む」
パチパチと拍手が鳴り響く。
ベッケンバウアーが、手を出して拍手を止めると「さて、今日は堅苦しい挨拶はなしだ。本日の主役は余ではなく。将来のエイラム帝国を担う事になる子供達である。大いに食べてすくすくと成長して欲しいものだ」
「コホン……陛下。もう一点伝える事がありますが」
「おお!そうであったな。ノートンの孫であるソフィア・フォン・ロズベルグを余の息子である、ヘクターの婚約者とする事をここに正式に宣言する!」
「「「おお!!」」」
やはりシナリオ通りソフィアとヘクターは婚約者となったな。
エルビンはそう思いながら、ソフィアとヘクターを見る。
ヘクターは澄まし顔だが、ソフィアの頬は少し赤くなっているな。
「では、皆本日は楽しんでくれ」とベッケンバウアーの合図により、楽団が場を盛り上げるべく演奏を再開する。
子供達は子供達達で集まり、大人達はベッケンバウアーへと挨拶の列をなす。
子供達は子供達で、第一王子であるヘクターに取り入るべく、集まったりしている。
やはり幼くても貴族だな。とエルビンは思う。
お!あの特徴的な、紫色の髪をした少年は、取り巻き第1号くん。
ヘクターの側には常に、幼い頃から一緒にいた彼の幼馴染兼侍従のルイス・フォン・マキュレスがいる。
マキュレス子爵家の嫡男である。
ゲームでは虎の威を借る狐見たいな奴だったが、何事もそつなくこなしている奴だったな。
さてと、そろそろ俺も挨拶に行かないと駄目だな。
十大貴族家の嫡男である、エルビンが挨拶に出向かないのも不味い。
他の十大貴族の面々は挨拶を終えているし、丁度いいだろう。
「初めまして、ご尊顔を拝しまして光栄でございます。殿下。私はエルビン・フォン・バルフィナンスです。バルフィナンス侯爵カザールの息子でございます」
「君がカザール殿の息子か。宜しくヘクターだ。エルビンと呼んでも良いかな?」
「は!光栄です」
「ふふ、そんなに畏まらなくても良いよ。私の事もヘクターと気軽に呼んでくれ。それと背後にいるのはルイスだ。彼とも仲良くしてくれ」
「ルイス・フォン・マキュレスです。宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しく。それとわかりました。ヘクター殿下とお呼びします」
「うん、まあ、今はそれで良いかな。これからよろしくね」
「ええ、此方こそ宜しくお願いします。では、失礼します」
挨拶を終えて離れると、従兄妹のクロメイアが話しかけて来た。
「エル。少し良いかしら?」
「勿論だよメイア」
クロメイアの後ろには数人の女の子がいたので、挨拶をしておく。
家格は伯爵から士爵まで幅広くいた。
エイラム帝国の爵位は以下の通りである。
大公爵→公爵→侯爵→辺境伯→伯爵→子爵→男爵→準男爵→騎士爵→士爵まで存在する。
因みに大公爵が十大貴族家に連なって居ないのは、権力というよりも皇室に何かあった場合の予備の面が強く、皇室により力を削がれているからである。
二十年前までは、ある程度の権力も持ってはいたが、大戦により力を削がれ名はあるが、実質的な権力は握っていない飾りの様な家となった。
なので、今では皇室に何かあった場合の予備としての機能が主であり、十大貴族家よりも一段下の扱いである。
勿論皇室に連なる血筋なので、敬えられてはいる。
クロメイアの後ろにいた者達と挨拶も終わり、要件を聞く。
「それで、何か御用かな?」
「あら?用も無ければ話しかけてはいけないのかしら?」
「そんな事はないよ。いつでも大歓迎だよ」
「ふふ、ごめんなさい。冗談よ。この後殿下が私とお茶でもと誘って来て、エルにも声を掛けて置いて欲しい。と言われたのよ。参加する?」
「勿論するよ」
「わかったわ。じゃあその様に伝えとくわね」
「ありがとう。お願いするよ」
その後も色々な人達と挨拶を交わして、交流会は御開きとなった。
暫くすると、メイドの一人がやって来て殿下が待っている部屋へと案内される。
部屋の中には殿下とルイスの他に、エルビンを含めた十大貴族家の子供が全員と、幾つかの有力な貴族家の子供が集められていた。
確か、ヘクター王子の下にも王子がいたな。
今のうちから関係を気付いて置いて、盤石な地盤を固める腹積もりか?
確かゲームでも地頭が良かったな。
そう言えばこの場には主人公は居ないな。
まだ、この国に潜入して居ないのか?それとも偶々あの場では見かけなかっただけか?
確か主人公の名前はメリッサ・キュラソーだったよな。
いや……それは本名で今はとある男爵の養女だったか?
う〜ん。少し記憶が曖昧だな。
帰ったらメモを見直す必要があるかもな。
まあ、基本的にはメリッサばかり呼ばれてたからな。
おっと、今はそんな事よりも集中しないとな。
「皆良く集まってくれたね。ささやかなだが、お菓子を用意した。存分に楽しんでくれ」
ヘクター王子の合図で、子供達がお菓子に群がる。
やはり此処は子供だな。とエルビンはその光景を眺めて居た。
見ると他の十大貴族家の者達はアリオを除いて、お菓子には群がらず静観していた。
てか、アイツ交流会でもバクバク食っていたのに、良くまだお腹にあれだけお菓子が入るものだ。
見ている此方が胸焼けしそうである。
「エル。殿下の思惑は何処にあると思う?」
いつの間にか隣に来ていたクロメイアが、小声で訪ねて来る。
「普通に考えれば、自らの地位を盤石なものにする為の、場を設けた感じかな。でも別に何もしなくても、今の地位は揺るぎそうに無いけどね。まあ、第二王子殿下の話は聞かないから、何とも言えないけど、こう言った場を開いたという事は、そこまで安心出来る立場じゃないのか、普通に仲良くしたいだけって言う可能性もあるよ。まあ、それにしても7歳の子供が考える事じゃないかな」
「そう言う、エルも同じ7歳よ?」
「そうだね。メイアもだよ?」
言外に君も同じように早熟だと告げる。
「ふふ、それもそうね。まあ、面倒な事は大人達親に任せて、私達子供は楽しみましょう」
「メイアの方が子供っぽくないよ」
「何か言ったかしら?」
「何でもないよ。何か飲み物でも取って来るよ」
誤魔化す様にクロメイアの元を離れて、ジュースが置いてあるテーブルに向かう。
そして葡萄ジュースとオレンジジュースが置いてあったので、それを手に取りメイアの所へ戻る。
「どっちがいい?」
「なら葡萄ジュースを貰うわ。ありがとう」
「どういたしまして」
葡萄ジュースを渡して、オレンジジュースを飲む。
冷えていて美味しい。
この世界には冷蔵庫は"まだ"存在していないから、氷魔法が使える者が冷やしたのであろう。
原作開始時には冷蔵庫はあった筈だから、それまでに出来たんだよな。
今はウチの職人で試行錯誤しながら開発してるが、もしかしたら他の場所でも研究されているかもしれないな。
まだまだ、職人の数は足りないからな。
エルビンは何人かと交友を育んだ後は、本命のアリトゥーシェ・フォン・ラクラトルトの元へと向かう。
「こんにちは、ラクラトルトさん」
「……アーシェで構わない」
「なら私のこともエルと呼んでくれ」
「……わかった。……よろしくエル」
「うん、よろしくアーシェ」
和かに挨拶を交わす。
「確か、ラクラトルト辺境伯家は勇敢な部族で知られるダラク族の末裔なんだよね?」
「そう!ご先祖様達は凄いの!今は帝国の下に付いてより帝国の強大さがわかったの!そんな帝国相手に一歩も引かずに父祖の地を守り通したご先祖様達は英雄なの!だから、そんな父祖の地を狙う不遜な輩は皆敵なの!」
何やらスイッチを入れてしまったらしく、その後も20分近くご先祖様の武勇伝なんかを聞かせられた。
「ふぅ……少し話過ぎた……ごめん」
「いや、貴重な話を聞けて良かったよ。良ければまた聞かせてくれるかな?」
「わかった……家に招待する」
「ありがとう」
その後は他の十大貴族家の者達とも少しばかり話す。
暫くして、この集まりも御開きとなり、エルビンは屋敷へと帰った。
暫く忙しいので、次回の投稿の後は来月ぐらいになりそうです。
出来る限り早く投稿したいですが、ご了承下さい。




