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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

進歩の鎧

作者: 悠蓉

「こんばんは、ナマコさん」


 海底で食事をしていたナマコに、鎧の音を立てながら近づいて来たものがいた。

 こんなに鎧の音をさせる生き物は少ししかいない。


「おや、伊勢海老さんですか、こんばんは。相変わらず立派な鎧ですねえ」


 そう言われた伊勢海老は嬉しそうに、


「そうなんです。僕もついに大人になって、この立派な鎧を手に入れたんですよ」


 と言って、


「ところでナマコさん、一体何を食べてるのですか?」


 と尋ねてきた。


「ああ、砂を食べているんですよ。正確に言えば砂についた微生物を食べているんですけどね」


「なるほど。いや、私たち伊勢海老はこんなものは食べないので少し気になってしまってね」


「確かにそうですね。伊勢海老さんは普段何を食べているのですか?」


「僕たちは主に貝とかウニとかを食べていますよ」


「それでは競争相手も多いのではないですか?」


「ええ、ですから僕たちの祖先は子孫のためを思って、競争に勝てるようにどんどん進化してきたんです。この鎧は、言わば進歩の鎧なのですよ」


「なるほど、それでそんなに立派な鎧を手に入れたんですね」


 そう、感心したようにナマコが言うと、


「ええ、こんな鎧をした僕の敵になるものはほとんどいませんからね。それに、危険な子供時代を生き延びて、大人になれた僕にはきっと特別な才能があるに違いありません。ですから、僕もこの優れた遺伝子を残していかなければならないのです」


 そのときだった。

 音もなく泳いできたタコが、その八本の腕で伊勢海老を捕まえたのだ。


 伊勢海老は必死に逃れようとするものの、吸盤によってガッチリとつかまれてしまい離れることができない。


「ああ、なんということだ。こんなやつに……」


 毒がまわったからかそれ以上の言葉は聞き取れず、代わりにタコが鎧を剥がして食べる音があたりに響いた。


 伊勢海老を食べ終えたタコはまた静かに泳ぎ去っていき、ナマコもまた食事を再開した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛らしい会話からの弱肉強食の世界。 とても印象に残りました。 [一言] 読後の余韻と世界観が好きです。 登場人物(?)も珍しくて面白かったです。
[良い点] こんにちは。かっぽうを見て読みにきました。 海底の静けさ。 我々からすると不思議な世界である水中というのがまた、いい雰囲気を出していますね。 [一言] ナマコの心情やいかに…… 運命と…
[良い点] シュ、シューーール! そしてそれが面白いです。。。 最後のナマコも、、、 童話って本来ちょっと恐ろしいもの、多いですよね。。
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