弾奏の夜に
満月を翼にして
蜘蛛を見つける
蛾が捕まえられているから
巻かれた糸を
引き裂いて 引き裂いて 引き裂いて
あなたは自由だと伝えた
何をするかも決めず
蛾は空に舞う
フラフラと空に舞う
弾奏の夜に
閃めきの外で
逆さにした大地は
人間の苦痛を全て受け入れて
世の中のくだらなさを
空に伝えている
話を聞きながら
空は虚しくなってくるから
昼間は雨を降らせて
夜は星を降らせて
いつか
隕石を降らせてやりたいと
一心に願う
大切に 大切に 大切に
一心に願う
弾奏の夜に
ミニチュアの横で
何かから逃げ出した猪は
もう何処にも
逃げ場が無い事を悟って
全てを敵にまわし
果敢に一直線
突き進む事しか出来ない
一歩も進めないにも拘らず
血だらけになりながら
それでも壁を押す
力無く 力無く 力無く
壁を押す
弾奏の夜に
コンクリートの前で
稲妻のスカーフを
首輪にしたら
感電するのか 苦しいだけか
それとも
何も考えられないか
管理する側とされる側
どちらが悪とも言えないから
どちらも善だと言えない
ピンク色のキスマーク
黒い車に貼り付けて
なくした溝はタイヤだけ
それで良いのさ
人生一度きり
世界で一番大切な人を
無惨に裏切ったとしても
それで良いのさ
人生一度きり
それ以上に大切な物があった
これ以上の理由は無い
選ばれたいなら謙虚でいろ
弾奏の夜に
鏡の側で
扇風機が廻る
青いプロペラが
向こう側を見えなくする
向日葵が咲く
黄色の花弁が
こちら側を向いて笑う
太陽は親切に
どちらも感じさせる
天然のフライパンは
蛙を平たく引き伸ばして
栞にしていた
不確定の形は意味不明だが
意味不明の中の心情は
誰にも聞かれない
意味不明のパッケージは
中身を見せなくして
埋もれさせるのだ
あの心情は
確かに心であったが
もう無いのだ
意味不明だからと
もう無いのだ
弾奏の夜に
消された物の上で
太陽が燃えるのは
この世に悪があるから
それが真実だとしたら
人は何を思うだろう
ある意味 真実で
確定事項なのだが
見えないふりをしている
発言しても良いのだが
言えないふりをしている
行動しても良いのだが
出来ないふりをしている
きっと 汚れた寝床で
眠りにつくのが
嬉しいからだろう
きっと 汚れた手で
大切な人に触れるのが
楽しいからだろう
きっと それの何が悪いと
開き直るのが
生き甲斐だからだろう
背もたれの無い椅子で
弾力の無い座布団で
それでも
今まで通りだと言うのなら
炸裂するのだ
弾奏の夜に
マネキンの横で