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賭けと懸け

真奈美Side

「離せよ。」

加寿は冷たく言い放つ。

でも、私には分かる。

彼の苦悩が、どれだけ苦しんでいて、悩んでいるか。

離せと言葉では言うが、その手をどけようとはしなかった。

「懐かしいね、覚えてるかな。加寿。」

思い出すように、ぽつりぽつりと話し始める。

初めて加寿と話したあの日のこと。

優が加寿に弁当とかジュースとか渡して、一緒に食べたあの日のこと。

「加寿、よく言ってたよね。生きてる限りは別れが来る、その時まで俺がお前たちを守るってさ。私が忘れてると思ったの?」

微笑みながら加寿の顔を見る。

「まだ人間だよ。優がいなくなるかもしれないって悲しくなったんだよね。今にも泣きそうででも涙が出ないんだよね。私も同じだよ。」

加寿は何も言わなかった。

何も言わなくていい。今は、ここにいてくれるだけで私の救いだった。

「悪い、真奈美。ここまで俺のことを考えてくれて、引き留めてくれるのはうれしい。守るべきものがあることも忘れてない。けどな。」

一息置いて、加寿が喋る。

「俺が決めたことだ。それでも・・・もし俺のことを気にかけてるなら・・・屋上に来い。優を連れてだ。」

「そんな・・・」

私は立てなくなり、膝から崩れた。

そのとき、懐かしい声が聞こえた気がした。

_____________________

優Side

暖かい光に包まれていた。

私は神とか、非現実的なことは信じたことはなかった。

幽霊など、いるわけもないと。

しかし、今私がいるこの空間は、どんな科学の原理も通用しない、神聖な場所だった。

目の前に女の人がいる。

「ここはどこかしら・・・」

「ようこそ、ここは審判の場。わたくしは審判の女神である。」

厳格な声で私に説明をしてきた。

私の最後の記憶は、感染者に噛まれ、ワクチンを投与されたところまでだった。

「そう、審判ね。私は死んだのかしら。」

純粋な問いかけをする。

その言葉に女神は落ち着いた声で説明し始めた。

「あなたの現世の行いはこの場において模範的であり、非常に聖人的な人間であった。よってあなたには選択する権利が与えられる。」

女神がそういうと、左右のスペースが光る。

「右の道を選ぶと、あなたは現世に戻ることができる。左の道を選んだ場合、あなたの魂は天国へと向かい、永遠の極楽を約束される。どちらを選ぶかは貴方次第だ。」

私に迷いはなかった。

右に、歩き始めた。

・・・・・・・・・・・

「ん・・・」

重い瞼を開ける

光がまぶしい気がした・・・・

無理やり体を起こす

「優・・・・!」

お父様が私に抱き着いてきた。

「ちょっと・・・重いわよ。」

「まだ休んでてくれ、お前には重すぎる現実を見ることになるからな。」

お父様はそう言って、再び私を寝かせた。

「重すぎる現実・・・加寿は・・・?」

私が加寿のことを聞くと、お父様は何も言わなかった。

「・・・そう。」

「今は話せないんだ。」

大きな声が聞こえた。

「最後にもう一度だけ言う、優が生きてるなら、屋上に連れてこい。もし・・・優がダメならその時は考える。俺は屋上で待つから、お前たちも生きて屋上に上がってこい!」

加寿の声だった。

加寿のもとに行こうとするが、お父様がそれを制止した。

首を横に振る。

「なんで・・・こんな近くにいるのに・・・救うこともできないなんて・・・」

何もできない無力さに、私は涙をこぼした。

______________________

加寿Side

言いたいことは言った

やりたいことはやりたいだけやった

後は、みんながどうしてくれるかにかかっている

真奈美の思いを振り切ってまで選択したことだ

ここから先は、俺の賭けと、みんなの命懸けの戦いの交差になるだろう・・・

こみあがる後悔を踏み潰すように、俺は歩く速度を早めた。


To be continue.....................







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