急変 そして別れの時へ
今までで一番重い話です。
書いてる途中泣きそうになりました。
大毅Side
しばらくアーケードを歩き、体も温まり始めたころ、誰かの気配を感じ、振り返った。
「誰もいない?そんな・・・」
「お父様どうしたのかしら。」
「誰かの気配を感じてな・・・気のせいだったみたいだ。」
「そうだったのね。もしかしたら誰かがいるのかもしれないから警戒しましょう。」
「了解だ。」
確かに、これだけ広いアーケードだ。暴漢に襲われてもおかしくない。
俺はここで、点呼をとるとともに、加寿を待つことにした。
「みんな待ってくれ。ここで点呼をとる。あと、加寿を少し待とう。」
「わかった。でも時間ないから早めに頼む。美香が・・・」
「それはわかってる。だから早めにはする。加寿がくればいいんだが・・・」
そうして、俺は点呼をとりながら加寿を待った。
「悪い。待たせた。冬馬と、美結に会ってな。どうやら研究所本部で再会するようだ。」
「冬馬?生きてたのか。」
「目立った傷は残ってなかったな。洋服で隠してただけとも思えるが。」
俺は少し不思議に思った。
美結と冬馬はどうやって俺たちに会わないでにげたんだろうか。
さっきの謎の気配はまさか・・・
「まぁ・・・先に進もう。」
「そうだな。時間もない。美香、大丈夫か?」
「大丈夫・・・まだ・・・いけるから・・・」
美香の状態は明らかに悪化していた。
もう時間は残されていない。
再び牧人が美香をおぶり、走り出した。
アーケードは、まだ終わらない。
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冬馬Side
私たちは先にアーケードを抜けた。
美香の持っていたフックショットを使って軽々とアーケードの天井に到達し、そこからは天井を走って抜けた。
「研究所本部はこの先、大体5キロほどですね。奴らより先につきそうですよ。」
俺は美結さんにそう告げる。
美結さんはその言葉にどこか言いたげだった。
そして口を開く。
「それはわからないよー。感染者だっているわけだから。遠回りを要求される場合もある。それにうちが寄りたい場所があるから。」
「寄りたい場所?どこですか?」
「えーっとね。特殊部隊の救援物資の支給場所。あそこにあるビルの屋上に落とされる。」
そう言って美結さんが指さしたビルは・・・
「そこが本部です。」
その言葉に美結さんは一瞬驚いたが、すぐに口を開いた。
「そうだったんだ。なら大丈夫そうだね。ほら、もうアーケードの出口だよ。」
私たちは天井から飛び降りて、再び道路を走り始めた。
「備える必要がありますね。」
その言葉だけで、美結さんは何に備えるべきか理解していた。
「大丈夫だよ。加寿は厄介だけど、ほかの奴らは所詮人間。あんたの打撃を食らえば死ぬでしょ。」
「元仲間だったのによくそんなこと言えますね。」
「まぁ、スパイだからいつ裏切っていつ裏切られるかわからないしね裏切られるのも仕事だし。」
「てことはいつか私も裏切られるってことですね。」
「どうだかね。今は味方だよ。」
俺はその言葉に戦慄した。
いつか、裏切られる。
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牧人Side
何十分かかっただろう。
もしかしたら五分だけだったかもしれない。
すでに俺の体内時計は機能しなくなっていた。
頭の中には美香の生存しか考えていなかった。
ふと、美香の声が聞こえた。
「牧人・・・おろして・・・。」
「お・・・おう。」
俺は美香を床に座らせた。
美香の息は荒く、顔は青白かった。
どこかで理解していた。
_____美香は、もう長くない・・・
しかし認められなかった。
「美香・・・もう少しだ。頑張ってくれ。」
俺はしゃがみ、美香と目を合わせる。
美香の目は充血していて、心なしか涙が流れているように思えた。
「もう・・・いいの。私は気にしないで・・・ゲホッ!」
美香は吐血をした。
その血の色は赤ではなく、真っ黒であった。
「駄目だ・・・死ぬな・・・あきらめるな・・・」
目の前が曇っていく。
美香は死なない、そう思っていた。
しかし、お別れはもう近い。
「牧人、あなたが終わらせて・・・今までありがとう・・・」
そう言って、美香は腰につけていたハンドガンを手渡す。
手渡された銃はずっしりと重く、確実に命を奪える凶器であった。
「そんな・・・できない・・・美香・・・みかぁ・・・」
ふと、加寿が近づいてきた。
「牧人、つらいのはわかる。痛いほどな。別れたくない、その気持ちは俺たちも同じだ。でも・・・覚悟を決めなきゃいけないんだ。頼む・・・美香が望む形だ・・・。」
「俺は・・・望まない・・・」
「牧人・・・・もう・・・いいよ・・・」
美香は力なくつぶやく。
唾をのむ。
「わかった。」
俺は、今までで一番重く、言いたくない「わかった」を言った。
「今までありがとう・・・美香・・・」
「うん・・・こちら・・・こそ・・・」
俺は美香を抱きしめる。
その数秒・・・俺にとっては何時間にも感じた。
これが終わるともう美香には会えない。
どうしても涙が止まらなかった。
「ごめん・・・ありがとう・・・美香・・・美香ぁ・・・」
銃口を美香の頭に向ける。
手が震えてうまくねらえない。
加寿が手を握ってくれた。
そして、引き金を絞る。
パァンッ
乾いた銃声は、アーケードを抜け、どこまでも響いた気がした。
暗い夜は暗さを増し、雨の音は俺を責めているように聞こえた。
息の荒い美香の呼吸音は、もう聞こえない。
俺は、頭が真っ白になった。
「・・・」
小学校の時から仲が良く遊んでいた美香。
中学校に上がり、付き合っているという噂を立てられあまりかかわらなくなった二人。
でも同じ高校に通い、俺を支えてくれた。
バイクを無免許運転して高校退学になったときも美香が励ましてくれた。
もう美香は、俺のことを支えてくれない。
「ごめん・・・・何もできない・・・」
「よかったんだ・・・牧人。自分を責めるな。」
加寿は俺の背中をなでてくれる。
しばらく、俺は思い出につかりながら男泣きしていた。
気持ち、雨が強くなった気がした。
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To Be Continued............................
仲間を失い、本部に向かうチーム。
その先には、何があるというのか。
次回、こうご期待ください。




