お土産
「源太郎さんって何が好きなのか知ってる?」
「うーん……言われてみれば源太郎さんの好みって聞いたことないなぁ。まあ、お酒とかおつまみなんかを買えば喜ぶんじゃないかな?」
「でも、僕たち未成年だからお酒は買えないよな」
僕の言葉を受けた真奈は残念そうに下を向いたが、突然顔をあげてにこにこしながら言ってきた。
「じゃあさ、無難にお花をあげるのってどうかな? お花をもらうとみんな笑顔になるし、特に源太郎って自然とか好きそうじゃん。そうだよ! そうしよう」
真奈は一人で納得すると僕の意見を何も聞かないでお花屋に向かった。
僕は特に意見があるわけではなかったのだが、一言くらい聞いてくれても良かったのにと思った。
お花屋の前に着くと、そこには色鮮やかな花が所狭しと並んでいた。
一つ一つ見ていくのも良かったが、それはそれで時間がかかる。
かと言ってパッと見で決めるのも源太郎に対して失礼だと感じたのでざっと店の中にある花を見渡してから決めることにした。
「きれいなお花いっぱいあるね。私も誰かからお花もらえたらすごくうれしいな。そんなこと言ってもお花を送ってくれそうな人はいないんだけどね」
「そうかな? 真奈は僕と違って友達もたくさんいるし誕生日とかにもらってるのかと思ってたけど。……真奈ならいつでももらえると思うけどな」
それを聞いた真奈はなぜだか少しだけ残念そうな顔をした。
しかし僕にはなぜ真奈が残念そうな顔をしているのかは到底理解できそうになかった。
「それよりさ、どれがいいかな? 一通り店の中を見たけど……何かいいやつあった?」
「特にはないかな。僕にはどれもきれいに見えるから一つだけっていうのは決められないよ」
「そうだよね。私もそう思ってた。あ、それならいっそいろんな花がセットになってるの買おうよ!」
「なにか気になるのはありますか?」
ちょうどそこに店員さんがやってきたので僕たち二人で選んだ、正確には真奈の選んだ花束を購入したいと伝えた。
「かしこまりました! しばらくお待ちください」
すると、慣れた手つきで花束を店の奥にある作業台に持っていき、これまた慣れた手つきできれいに放送していく。
「包装はどのように致しますか? きれいにラッピングしますか? それともこのままでもよろしいですか?」
「ラッピングしてください」
「はい。かしこまりました。では少しお待ちください」
二人で相談した結果ラッピングしてもらうことに決めた。
「お待たせしました。気をつけてお持ち帰りください」
花を受け取った二人はこの後どうするか考えたが、ここで重大なことに気付いてしまったのだ。
このまま花を持っていたら二人でどこも廻れないということに。
僕らは慌てて先ほど花を買ったお店目指して引き返した。
店員さんは事情を聞くと嫌な顔一つしないで花を預かってくれた。
「花を預けたのは良いけど、どこに行きたい? 僕は特に行きたいところないんだよね。そういえば真奈は自然豊かなところを見たいとか言ってたよね?」
「確かにそうだけど。じゃあさ、山じゃなくってここ周辺の散策しようよ! ゆっくり歩きたいしね」