武術大会にて4
「西からは、弱冠12歳の少年ラージュ・ルーサ君の登場だー!!」
司会の声と共に緑色の布を顔に巻きつけた覆面の少年ラージュ・ルーサ
(サラ・ルージュのもじり)ことルナ・フィリスは、
覆面の合間から見える宝石のような淡い緑の瞳を前方に向け
隠し切れないダークブラウンの神秘的な髪を靡かせて
静かに闘技場の中央に向かう。
観客の目にはその腰に無骨な中剣を差し、膝まで有る白い服に
緑の覆面をした、剣を持って闘うにしては、
儚すぎて、優美すぎる幼い少年に映っていた。
「・・・!!・・かっわいい~!!」
「ラージュく~ん!!」
途端あちらこちらで歓声が聞こえる
何処の世界でも女の子は、
優美そうな幼い少年が、大好きなのだ。
ルナが、チラッとその淡い瞳で見ると
「ラージュく~ん!!お姉さんが大人にしてあげる~う!!」
ますます興奮する。
すぐに瞳をそらすが、
・・・・照れちゃって・・かわいい・・
と、大人気である、が、ルナは、実を言えばその迫力
に怯えていたのだった。
『ちゃんと手加減してあげてよ~ラージュくんを傷つけたら許さないから~』
(カルとどっちの方が、迫力があるんだろ・・)
でもここは王族、勇気を振り絞り
小さく微笑みを浮かべながら手を振ってみる。
キャー!!という歓声の中ルナは、びっくり仰天して、
(姉上~)
と心の中で助けを求めていた。
「なに?!」
その頃サラ達は、突然光りだした胸元の手鏡に
驚いていた。
国元との通信の為に
いつも胸元に入れている物である。
「ええー!?そちらに元私の婚約者だった皇子が来ているの?
弟の方は?・・・・来てない・・そう。
え?!・・弟は、武術大会?・・・もしかして此処に?
駄目だったら!まだ、駄目!帰れないって!!」
手鏡を通じて会話している国元の家臣
の話しに、ついつい言葉を荒げてしまう。
「分かった・・・うん・・・・帰る。
・・・一旦帰るんだからね・・・ルナは、諦めて無いし・・
うん・・うん・・もちろん
ルナにも私から・・・じゃあ・・もう少し・・ね・・。」
(・・・ルナ・・・。)
そう言って、サラは、手鏡を直し、空を見上げた。
来賓席の片隅で一人の少年が、
ラージュ・ルーサの試合、
つまり、ルナの試合を見ながら、呟いていた。
「・・・あの少年、一撃の破壊力は、弱いけれど・・・
動きが、誰かにキチンと学んだように効果的な
動きですね。
・・・しかし、何処かで見たような・・・・」
カイルの叔父、剣の名手シアリス・イーズじこみの
剣技を使うルナの事をそんな風に言っていた。
「今回の大会は、なかなかですね。
兄上にも帰られたらぜひお話ししたいものです。」
嬉しそうに少年は、小さく微笑んだ。
西の商業大国、エーティルの港都市での
武術大会は、熱狂していた。