番外編 (独り言)ルイドのお付<魔族>
私の名前は、ザラド・・・・黒の伯爵と呼ばれる魔族。
生まれてから千年程も経ちましたでしょうか・・・魔族の中でも一番多い下級魔族ならば寿命かもしれませんが
人の血が半分程入っては居ますが一握り程しかいない、いわゆる上級魔族に数えられる身としては
まだまだ青年期まっただなかでございます。
さて・・・・私の主君となる若様なのですが
若様もまた私と同じく半分の人の血を引いて生まれてこられました。
魔族の中で人との混血で生まれた者が生き残ることは稀でございますが
人との間に設けた子とは言いつつもさすがに我等の王の血を直接引いておられる若様の魔力は
その辺の魔族が敵うはずも無くこれまで生き残ってこられました。
もっともお世話を任せられた私が大切にお守りしたことは言うまでもありませんが
初めて若様にお会いした時は、我等が王の気紛れを良く知っている私も大変驚いて
魔族が苦手とする銀色の髪の
しかも、ほとんどの魔族が日ごろから苦々しく思っているサフラ巫子王国の巫子姫に生ませた子だと言うのですから
私自身もどうしても戸惑いが隠しきれませんでした。
「・・・・・シャリャ・・・シャリャ・・・・・?」
生まれて数年しか経ってないというのに若様は人間より早く
魔族としてはもっと早すぎる成長の姿で舌ったらずの発音でどなたかを探していらっしゃいましたね?
体は少年と言っても良いのに体を上手く操れないようで立って歩くことさえままならないご様子で
持って生まれて来られた魔力はそれに輪をかけて上手くお使いになれなくて
沢山傷ついておられましたよね?
ザラドはあの時のことが今も懐かしく鮮明に思い出されます・・・・まあ何といっても
たった50年かそこらの前ですから当たり前やもしれませんがね。・・・・人間の感覚に直せば2年の昔程度でしょうか?
・・・って私は、育った所が人の母から誕生してから何百年と人の間であった為
いちいち人間の感覚に直すのが少し癖になっているのかも知れません。(笑)
「・・・・・・・シャリャ・・・シャリャ・・の・・が・・良い・・」
通常の上級魔族から生まれた子供なら(いわゆる人間の赤ん坊で言う母乳みたいに)
一番自分が取り込みやすい母親の生命エネルギーを
勝手に吸って成長するところなのでしょうが若君の傍に母親は居ませんし
何より人間の母親から若様みたいに魔力の高いお子が吸い取ったら死ぬのではないかと思いますが
とにかくよく合うエネルギーを探すのに苦労しました。
もしかしたらもう一人の親である我等が王の物でしたら合ったのかも知れませんが
そんなことは言えるわけも無く
生命エネルギーを摂取する為に人間の街をうっかり全滅させてしまったりもしましたね?
ザラドはそのありあまる若様の魔力で幾度と無く命の危険を感じましたよ
ええ・・・今はなんとかその辺りだけは収まってきたようですが
お父上の王の教育の賜物か
ずいぶん魔力の器も広がって操る力も威力が上がって
あの頃はいつ若様に瞬殺されるのだろうと
でも私のお育てした若様の手で殺されるのなら本望とすでに思っておりました。
ああ・・・・・・私の若様。
ザラドは寂しいです。
すっかりあのにっくきサフラ巫子王国の王族の一員に収まられて
私は簡単にお傍に行くことが出来ません・・・・
何だってよりによって一番守護の力が働く王宮なんぞで
毎日、日向ぼっこやお昼ねなんてされてのんびりされているのですか!?
ザラドは寂しいです・・・最近はそれすらも通り越して切ないですよ・・・若様・・。