番外編(あの稲妻の下3)ルイド誕生
(「ルイド・・・ルイド!・・・・お兄様・・!」)
我が子を最愛の兄を思って
女の頬に涙が伝う。
「・・・・我が妻よ・・・・銀の髪と緑の瞳を持つ
月の巫子姫・・・お前は私のものだ・・。」
女の心の声が、そして
男の声が赤子には聞こえていた。
(「助けて・・・私を・・・ルイドを・・」)
涙に濡れた女の瞳がぐったりしている赤子の方に向いているのを
赤子自身が分かっていた。
「・・・あ・・う・・シャ・・リャ・・サ・・ラ・・」
体中がズキズキ痛かったけれど
女の瞳を見ているとほんの少し落ち着いた。
女の長い髪がサラリと床に落ちたのを見て赤子は
懸命に手を伸ばした。
赤子の手は本当に小さくてまあるい
母親に甘えるだけの何の力も無い手で
今の女が望むような守れるだけの力と
大きさが必要なんだと赤子は理解した。
「・・・・サラ・・・!」
伸ばした手が見る見るうちに大きく長くなっていく。
もっと・・・もっと・・・大きく
「・・・・・サラ・・・駄目・・サラを・・止め!」
大きくなるにつれて身体の痛みも徐々に消えてきた。
「やめえ!!」
何が良い?・・・・どれが一番強い?
自分自身に尋ねてみたらすぐに分かった。
そして、今まで女の望み通りに眠らせていた
体中の魔力を男に向けて叩き付けた。
最も強い攻撃性を持つ火の力と
それに力と技を与える風の力
二つを混ぜて子は女を傷つける男に対して思い切りぶつけた。
バチバチ火花を散らすそのエネルギーを
男は軽々と片手で受け止めると
本当に嬉しそうに微笑んだ。
「火と風・・・・稲妻の力か・・・・
さすがは我が子だ・・・・・・・
この私、魔王の血を引きながら月の巫女の・・・
月の女神の加護を持つ者・・・私の望んだとおりだ」
男の笑い声が木霊した。