番外編 (あの剣の輝きの下)幼いリュクシス
あの剣の輝きの下(「あの空の下」番外編10)
present by noel
「剣の天才」と呼ばれていた。
あらゆる剣に愛された剣の愛し児だと・・・・
手に持った剣の重みに
我が身に受けた過分なその呼び名を思い出す。
(けれど、この剣が私を認めてくださったのは
だからじゃない・・・)
手にぴったりと馴染むその剣に同じ志を持ったものに対する
微笑を向ける。
(貴方と私、・・・・・・・きっと心が同じだからですね?)
そういえば
気が付いた時には剣を持っていた気がする。
顔も知らない母は
剣舞を得意とする踊り子だったらしい・・・
どういう気まぐれを起こしたのか
突然、私に血だけをくれた父が
見向きもしなかった息子を自分の元へと召し上げた。
「あ奴の子だと言うのなら・・・舞ってみよ」
明らかに酒席の酔いに任せた無造作な態度で
そう言い剣を投げつけた。
「・・・・・何の役にもたたん皇子だ・・・
これ位は役に立ってもらおう・・・」
肉親の情を欠片も見せない父と異母兄達
笑いざわめく、姿だけは煌びやかな男達
可憐な姿をしながら、瞳に蔑みの光を帯びた
女達を前にして
私は、自分の体程もある重い重い剣を持ち上げた。
(私は何?・・・何の為に生まれたのだろう)
誰よりも薄っぺらな自分の命に涙が溢れて
前が滲んで見えなくって、
「・・・舞って・・・・舞ってごらんに
・・見せましょう・・」
掠れるように呟き私は舞いだした。
誰にも舞など教えてもらったことなんて無い
けれど、その剣が囁きかけ教えてくれた。
全てを忘れて私は夢中になって何時までも踊っていた。
剣舞が剣技になっても同じ
私に剣が教えてくれた。
「素晴らしい」と
「お前は剣の天才だな」と
あの方が正妻の王妃の第二皇子のお言葉が
私にはとても嬉しく
引き取ってくださったことに
エーティルを名乗ること・・
自分の兄弟、家族としてくださったのに
恩を返さねばそう思いその為私は生きることにした
・・・のに・・・・
それなのに
いつの間にか私は・・・・。
貴女と居たいと・・・・
傍に居たいんだと