武術大会にて2
爽やかな朝日の刺し込む宿屋の朝、ルナは目覚めようとしていた。
「ルナァァァァンⅤ」
その声に驚き一気に眠気が吹っ飛んだルナは、
思わずベッドの上に立ち上がる。
「・・カ・・カル?」
ルナとカルは、昨日探しに来てくれたサラとカイルによって
宿に連れて帰って貰っていた。
「グッモーニイン~ルナ~愛しのダーリンが来たよぉⅤ」
激しくドアを叩きルナを呼ぶカル。
「もうー誰がダーリンよ」
そう言いながらも昨日は、
カルが一人で助けに来てくれたと聞いて
(その時は、もうルナ以外居なかったというが、)
少し感動していたルナは、ベッドから降り、
「しょうがないなあ」
と呟きながらドアを開ける。
「あ!!美っ人なお姉さん~おっはよう~」
が、階下の他の女性客に機嫌良く挨拶しているカルを見て、
ルナは、再びドアを閉めてしまった。
「あ~れ~どうしてぇ~ルナァ~」
嘆くカルの声を後ろにルナは、
「バカッ」
と小さく呟いた。
なぜかむかむかする心を抑え、ルナは、
もう一度ベッドに入った。
その日は、次の街へと出発する日である・・・。
「ルナ~どうしてそんなに怒ってるのさ~?!!」
この街で行われる武術大会に行く途中の道、
カルは、ルナに何度も尋ねる。
「別に~怒ってなんかいないよ~。」
ルナはしらじらしく微笑みながらカルの方を見る。
カルは、瞳をきらきらさせて
「あ~あ~分かったぁ~さてはぁ~やきもちだなぁ~」
などと言う。
ルナは思わずカルの頭をはたいてしまった。
「痛ったぁ~い」
頭をなでさするカルを見てルナは、
しまったなと思うが、ルナが、したことは、プイっと横を向き
サラの腕にしがみつくことだった。
「どうしたの?」
問いかけるサラに何でも無いというように首を振り
その腕に顔を押し付けた。
「本当にカイルにばかりに苦労かけてごめんなさいね。」
ルナを腕に引っ付けたままサラが、そう言う。
その瞬間、皆の後ろに付き従っていたカイルの無表情な顔に
朱が走った。
(何よ・・私だって大きくなったら姉上みたいになるもん!!)
ルナはそんなカイルを視界の片隅で見ながらそう思った。
「今度の景品になる物ってムーンテイアかも知れないんでしょ?
・・・そうだ!!私も武術大会に出るわ!!その方が確実でしょ?」
ほんわりした声で、思い付いたようにサラが、
突然立ち止まりカイルの方に振りかえる。
「・・だ・・・だ・・だめですー!!」
その瞬間すごい形相をしてカイルは、絶叫した。
「おおっと!!また10秒内に勝負がついた!!
圧倒的な強さー!!」
司会の声の響く中、長い水色に似た銀髪を風になびかせ
つまらなそうな顔をする男。
「もっとー、もっと強い人いないの!?」
客席でサラは、必死に祈りのポーズをとる。
銀髪の男=ルイドは、前髪をかき上げ
サラの方を見る。
不機嫌そうな顔のルイドは、
カイルの強固な反対に会い、それでも出ようとして捻挫した
サラの代わりに出ることになったのだった。
世界中から集まって来ている人達だから、
面白い試合ができるかもよ、
という、サラの説得を受けて出たのよかったが、
ルイドの相手になるほどの者は居なかった。
「暇つぶしにもならない・・・やめるか?」
ルイドはそう呟いた。