四精霊集いし場所・・切なる想い
「天才の腕・・・・?」
呟いたルナに対して、
瞳は魔王に向けたまま、
リュクシスは、薄く微笑んで、答える。
「本当に自分自身は不遜だと思うのですが・・
皆は、如何なる剣にも愛され・・・力を解放出来る
愛し児と・・・・・・」
言葉を発しながらも、魔王が怒りで放つ白炎が、
リュクシスに向かって迫ってくるのを剣で凪ぐ。
「どうして・・お前が、カルフォスの力を使える・・?」
忌々しげな魔王の言葉に、
リュクシスは、苦笑を漏らすと言葉を返す。
「実は、我がエーティル皇家も、カルフォス王の子孫だそうで・・
それに・・・・カルフォス王の愛剣であったこの子が、
私をお気に召して下さったみたいで・・・シアリス殿が持っていけと」
・・・カルフォスの・・・・?
リュクシスの持つ剣から確かに
カルフォスを感じる・・カルフォスの残した強い意思の力
ルナは、知らず涙が出てきた。
胸が熱い、こんな苦しくて切なくて・・・
それでいて愛しさが溢れそうな気持ちなんて知らない。
ああ・・・これは月の女神の気持ちなんだ
やっぱり月の女神は私の中に居るんだ
しみじみと分かった。
これが・・・こんな気持ちが恋なの?
「カルフォス・・・・」
無意識に、ルナの唇から、
月の女神の愛しい人の名前が漏れる。
ただもう愛しい。
「・・カルフォス・・・
カルフォス、カルフォス、カルフォスぅぅ!!!!
何時だって邪魔をする。」
魔王の声、とても痛そうに
血を吐くように
「・・・いつだって私に振り向かない・・・・
私を好いてくれない、愛してくれない・・・」
「ソウレ・・・」
魔王は叫びながら泣いていた。
後から後から流れる涙を拭いもせず
「だから・・・私は、邪魔になるものを消した
・・・・振り向かぬのならばもうこれ以上誰にも
心奪われぬように・・・・殺そうと思った
・・・・ルウナの手に掛かって僕は、死にたいと思った。」
「・・・ソウレ・・・ソウレお願い・・
「私の邪魔になるものが憎い・・・
私の方を振り向かぬルウナが、他のものに心奪われるのが・・・
私からルウナの心を奪うものが・・憎い・・・。
私から離れてゆくルウナが憎い・・・共に消滅したかったのに
私の体を奪い・・私を転生出来ない死ねない体にした
ルウナが憎い・・・。」
魔王に惹かれるように来ていたもの達も、
その心が感染したかのように、その場に狂気に満ちてゆく。
「再び私を選ばぬのなら・・・
死ぬが良い・・・」
魔王の伏せられた深紅の長い睫毛から涙が零れ落ち、
魔王の心に支配された者達の狂気が、
ついに、最高潮に達し一斉に飛び掛ってきた。
その剣は、流れるようだった
銀の軌跡しかその目には、見えない。
自分の剣でもない筈のその剣を
踊るように自分の生まれた時から共に在る
片割れのように
(これが・・・リュクシスの剣・・・?)
ルナも、その身に宿る月の女神の力を振るい
周りのものを薙ぎ払う。
慣れないながらに力を操るその姿に、
リュクシスが言葉をかける。
「姫・・・・四聖獣を召還しなさい、
もともとは月の巫子王に仕えるもの・・ひいては
月の女神に仕えるものです。」
「・・・・え・・・でも私・・」
「・・・女王の証を・・・サフラ国王のブレスレットを、
サラ女王が何かをしていたのではありませんか?」
リュクシスの言葉に驚いて、
ずっと持っていた・・・
まるで、姉上の形見のようになっていた
そのブレスレットを見ると、何かを示すようにチカリと光ったように見えた。
(・・・!!・・姉上・・・知ってたの姉上・・
姉上の力を感じる・・分かる・・召喚出来る)
召喚の術式が組み込まれているのが分かった。
「・・・シルフィード・・・風の聖獣ヒュー
・・ノーム・・・地の聖獣マガンダ
・・サラマンダー・・・火の聖獣トカゲ
・・ウンディーネ・・・水の聖獣モリガン
私の元に!」
ルナが、宙に向かって叫んだ次の瞬間、
竜巻が起き純白の鳳<オオトリ>がルナの右側に
力強いひずめの音の後、金の鬣<タテガミ>に
青銅色の鱗が輝く駿馬<シュンメ>がその後ろに
業火が現れ、炎の鬣<タテガミ>に
鋭い爪、燃える朱<アケ>の体の竜がその正面に
湧き上がる泉から、冷ややかな青銀の大狼がその左側にと位置した。
ルナの気心が知れている四獣を呼んだ。