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炎の街・・大好きな人

リュクシスは、馬の足を止めた。


護衛として付いてきた者が、そんなリュクシスに問いかける。




「・・・・どうかしましたか?」


「・・・・・・」


祖国であるエーティルに、


幼かった頃の自分を、剣の才能だけだとしても、


唯一必要としてくれた兄の元に、戻るための道の途中。




「・・・・姫・・・・?」


胸騒ぎがする、


胸元をギュッと握り締めながら、


リュクシスは、空を見上げ考え込む。




「皇子・・・間もなく街に付きますよ?」


「・・・・私は・・・・・」


痛いほど服を握り締めた掌を、馬の手綱に戻し、


リュクシスは、顔を上げた。


















「カル・・・カル・・・私は・・」


やめて・・


やめて・・


炎に照らされて二人、赤く染まる。




「・・・じいや・・・


師匠・・・カイル・・・」


この破壊を止めたい


皆の元に行きたい


けれど魔王に抱き締められて動く事すら出来ない。




「ねえ・・・ルウナどうしても人間に


こだわるの?・・・・君はどうあってもルナのまま


人間のままにこだわるんだね・・・」


「・・・私は・・・ルナよ・・・カル・・・」


魔王が哀しそうに笑い再び、ゆっくりと顔を近づける。




「・・・戻ろうよ・・・神と女神に戻って


二人だけを見ていた時に・・・」




「・・・ルナよ・・・


私は、父上と母上の子だもの


姉上の妹だもの・・・」


押しつけるように乱暴に


でも優しく魔王がルナに、再び口付けを落とす。


(人間だもの・・私は・・


何の力も無い人間だったから


落ち込むこと悲しいこともあったけど、


そんな私を、父上、母上が、抱き締めて慰めてくれた・・・)




月の女神とは違う


でも、カルの愛しいルナの、月砂の手触りの髪を


魔王は、何度も何度も梳く。




(姉上と、皆と、


人間だから、弱くて不完全な人間だから、


足りない所を補い合い、慰めあえた、


お互いに助け合えた、


私は、無力であるからこそ、


色んな優しさに気付けた、大切で愛しいものに気付けた、


支え合い、たくさんの『ごめんね』と、『ありがとう』を、


知った、頑張る事を知ったの・・・。


皆が支えてくれて、支えた。


補ってくれて、補った・・)




「・・・・皆・・・大好きなの・・大切なの


カルも・・カルも大切・・カルも大好き、


カル・・私、カル、大好き・・『大好きだよカル』!


・・・皆の所に行く・・・」


ずっと否定していた、全身で否定していた


ルナに思いがけず『大好き』と抱き返されて


一瞬力を抜いた魔王を、ルナは、思い切り突き飛ばした。




(カルも大好きって本当の気持ち


でも今は、皆を助けたい・・・上から全体的に力を


送るのは無理でも近くに言って集中して使えば・・・)












ルナは、涙で曇る瞳を拭いながら初めて扱う


大きな力に振り回されない様に、


丁寧に練りながら街に急降下する。










魔王の力に惹かれるように集まって来ている魔物を、


払いのけていきながら、気持ちを焦らせていた・・




(何処・・・・皆、何処?


この力は、何処からどう使ったら良いの・・・・?)








ルナは、焦りながらも大切な物を守りたい気持ちで、


また溢れてきた涙を拭い拭い、炎に包まれる街を見まわした。










「姫!・・・ルナ姫!」


不意に耳に届いた声


金の煌く髪にルナは涙を拭う手を止めた。

















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