覚醒5
「ねえ~ん・・・ルナのお姉さんのサラって~強いね・・
僕、初めは、ルウナ(月の女神)は、
てっきりサラなのかと思ったよ・・
僕のルイドも~強かった~ん~・・・・」
「え・・・?」
「ううん~ん・・・何でも無いよ~ん~・・・
・・・・でも・・・・全然足止めにならなかったよね・・
たかが数日間・・・そして少しばかり
力を削がれた1、2日・・・」
ルナには聞こえないようにカルは、
小さく笑いながら呟く。
「・・・思い出したよ・・ルウナ(月の女神)、自分の事も
・・後もうちょっとで、僕だけの物に・・・」
恋って難しいと思う・・
皆の事大好きだけど
恋をする相手はたった一人
(時々は何人も同時に恋する人はいるけれど・・)
でも、本当の所は、恋人として選ぶ人は一人かも
知れないけれど・・・愛しい人っていうのは
一人じゃないのかなって思う。
恋をする相手はたった一人かも
知れないけれど・・・愛しいと思ってくれるのも
一人じゃない
・・これも良いんじゃないかなって思う。
だって父上も母上も姉上もじいやも師匠もカイルも
私を大事にしてくれる・・・
たった一人のなんの力も無い
当たり前の人間として大切に想い合うのって
とっても素晴らしいことだと思う
誰にも何にも気がね無く・・・・
それって私がまだ子供だからそう思うのかな・・・・?
・・・・力が満ちた・・・・
魔王の力が・・・・・・・・
じいやが待っている都エトナについたルナ達は、
さっそくそこの領主邸に向かった。
領主とじいやに会った後、
夜も更けて、
ルナは、与えられた寝室で、
今までの疲れを取る様に熟睡していた。
「ルナ・・・ルナ・・・迎えに来たよ、
一緒に行こう?」
「・・・ん・・・!?・・・カル・・?
・・・どうして・・・?」
目覚めたルナの目の前にあったのはカルの顔、
窓から覗く月を後ろにして、何だかいつもと
違うように見えた。
(あれ・・・どうしてカル・・
語尾も伸びてないし・・・)
ベッドから、半身を起すと、
ルナは、カルをボーとしたようにただ見つめ返していた。
「ねえ・・・ルナ・・・・
僕のこと・・好き・・・・?」
「・・・・え・・・?
・・・うん・・・好きよ・・・?」
寝ぼけ眼のぼんやりした頭のまま
何時になく素直にそう答える。
「じゃあ・・・僕以外居なくて良いよね・・・」
にっこりと微笑まれたその表情は
どこか美しかった。
魔王の力が爆発する・・・
・・・駄目・・ここで爆発させてはいけない!
―パリン!―
何処かルナの中で何かが割れた。
父が母が姉が・・・護り慈しんでくれていた人が、
居なくなり、かけられていた封印に
魔王の力とルナの想いがぶつかり
放たれた・・
たった一人のなんの力も無い
当たり前の人間として大切に想い合うのって
とっても素晴らしいことだと思う
誰にも何にも気がね無く・・・・
本当にそう思った・・・
父に愛され
母に愛され
姉に愛され
友達に愛され・・・・ただの無力な人間として・・・
溢れる涙が止まらなかった
後から後からそのまだ幼さを
残す丸い頬を伝っていった・・・・。