覚醒4
「ねえ~ん・・・ルナは~あの師匠とか~、
弟子の4人と仲が良いねぇ~・・・」
小休止で、木陰に座って
水を飲んでいる時に、カルが近付いてきて、
そんな事を言うので、ルナは、その唐突な言葉に
カルの顔を見上げ、少し考えるように首を傾げた。
ゆっくりと隣に座るカルを瞳に映しながら、ルナが、
「・・・うん・・・そりゃあ仲良いよ・・
大好きだし・・・じいやもカイルも大好きだけど・・」
と、きょとんとしたように返すと、
カルは、苦笑いを浮かべて間近にある、
ルナの瞳を覗き込む。
「ルナはさ~、たくさん大好きな人が居るね~・・
リュクシスとか・・・姉上のサラも・・・
ルイドは、憎いって言ってたけど、
父上も、母上もぉ~大好きなんでしょう~?
そう言えば前に
始祖のカルフォスが、好きとかとも言っていたよね~」
「・・・!・・え・・・・/////・・うん・・」
何だか気恥かしく思えて、
思わず顔を赤く染めてそう答えるルナを、
黙ってカルは、見つめていたが不意に抱き締める。
「・・・カル・・・!?」
「・・・僕は?僕の事は好き?
大好きなの?・・・
ねえ、僕だけを好きで居られないの?
・・・愛してるんだよ・・・?」
突然抱きしめられた事に、
耳まで真っ赤にしてルナは慌てた、
そして戸惑いの余りに自分の自由になる
両腕の肘から先を高速でブンブンと振る。
(おかしい・・カルが、おかし過ぎる・・!)
「・・・あ・・あい・・愛してるぅ・・!!?」
じんわりとその言葉に改めて頭の中に廻ってきて
ルナは、思わず繰り返す。
言っているその言葉も表情も物凄くおかしい、
と、そこまで考えて、衝撃の言葉が頭の中で
2周り目に入り、
ルナは顔と耳だけでは足りずに首まで
どす黒く真っ赤になった。
そして、フラフラになった頭で、
ふと、気が付いた。
(カルが語尾を伸ばさずに話してる・・
それに・・今まで引っ付く事はあっても
こんな風にはしたことなかったのに・・)
「ねえ・・・こんな話知ってる?
月と古代太陽と・・・・哀しい魔王の話・・」
「・・・!?」
「・・・・魔王はね・・・
月の女神を愛していたんだよ・・
それで、月の半身の太陽をそそのかしカルフォスを殺した。」
神話を始めるカルを、その腕の中から、
不思議な気持ちで見上げる。
覆い被さるように抱き締められているので、
ルナには、カルの表情が見えない。
「・・・し・・知ってるよ・・・
だ・・だって、『月の女神の信仰』を持っている国には、
どこの国でも伝わっているお話でしょう・・・?
・ ・・古代太陽を唆したという事は、太古の魔王・・
魔族の始まりの王だね?
その・・『深紅の魔王』が、月の女神を・・愛・・
えっと・・す・・好きだったって言うのは
初めて聞いたけど・・・。」
「・・・」
しばらく二人で沈黙していたがルナは、
そっと手を伸ばしてカルの背中に手を置いた。
「・・・・カルは・・・魔王に自分を
重ねているの・・・ってそれじゃあ
私が『月の女神』様の役よって言ってるみたいで
・・・・カルが・・・私の事・・その///・・って
言っているみたいだけど・・・・哀しいの・・?」
「うん・・」
ルナの髪に顔を埋めたまま少しくぐもった声で
答えるカルに不意に切なさを感じる。
「・・・ごめんね・・・ごめんね・・カル」
カルも大好きなのよ・・何故か恥ずかしくて口には
出せないけれど、素直な気持ちでそう思って、
慰めるようにカルの背中を擦る・・
(どうして、誰かのことが一番に好きって
決めなきゃいけないんだろう・・誰か一人を
選ばなきゃいけないんだろう・・)
自分の愛するたった一人の人
愛する人が選ぶたった一人の人
選ばれなかった人は・・・?
死んでしまったたくさんの人
でも生き返らせたいのは父上、母上・・・そして姉上
・・・・殺してしまった
女の子の大好きだった
小さな妖獣は生き返らせない・・・
それがとても卑怯な事である気がした
・・初めてそう思った・・・。