覚醒3
「ルナ~大好きだよ~
う~もお~ん~愛してる~ん」
カイルは、ルナとカルを引っ付かせまいと、
決心したにも関わらず、
ルナの寂しそうな様子に大目に見ることにしたのか
横目で気にしているだけになった、
だからなのか何なのか、
カルが、妙に引っ付いてくる
前から確かに引っ付いて来ていた様には思うけれど・・
ルナは恥かしかった。
「馬鹿!・・・カルの馬鹿!」
だからペシペシとカルの頭を久しぶりに小突いた。
「何だかあいつって妙に積極的だな・・・」
余りにも恥かしかったので、
ルナは4聖騎士候補の方によってきていた。
「何だか・・・・
『ああ・・姫様のことが、好きなんだな』
・・・って全身で表しているな・・・。」
さっきから風のジャラクが、カルとルナを見比べながら、
妙に納得したようにうんうんと頷きながら言ってくる。
のほほんとというか飄々としているジャラクは、
「若いって良いな・・・若いうちに恋の一つもしろよ」
と自分も若いくせにそんなことを言って、
水のシリアムと火のセーンの肩を叩いている。
「特にセーンお前も素直に言わないと
一生気付いて貰えないぞ・・?」
サラッとそんなことを言っている。
「誰に気付いて貰えないのよ?」
地のシエザがいつものように
おせっかいに話に割り込んでくる。
「ちなみに私は、ルイド様とカイル様スキーよ!
ああ・・お可愛そうなルイド様・・・」
自分に酔ったように、地のシエザは、
そんなことを言っているが
その肩の上では主を無視して
精獣のマガンダが、手の平サイズの、
四本足で首が長い身体で、器用に眠っていた。
ふとルナは不思議に思った。
「・・・・ねえ・・・『好き』ってさ・・
なんなのかな?」
一斉に候補達4人が無言でルナの方を向いた。
「え!・・ああ!・・・恋とかって知ってるよ!
知識としては・・ただ、実感が分からないなって思うだけで!」
慌てて付け足すルナには
(実感も無しに、リュクシス皇子と、
婚約しようとしたのか!?)
と言う4人の心の声が聞こえた気がした。
(だって大好きなんだもん・・・)
心の中だけでルナは呟いた
(でも・・・じゃあカルは・・・?)
ルナだってそう思わないでは無い・・・
でも、リュクシスは、大好きで、全部任せて大丈夫と思えて、
国の為にもなるし・・と思ったのだ。
確かに本当に恋をしたら身分の高くない人でも構わないと
思うし、思ってくれるのならそれでも良いと思うけど
それら全てを突き抜けて、カルが好きかと考えると、
そんなことは無い・・むしろリュクシスとここで離れては
いけないと思った。・・断ったらこの世から今にも
いなくなってしまいそうななんでも良いから
縛り付けておかなければならない気がした。
「・・・・私、間違えてるのかな・・・
カルよりリュクシスが好きなのじゃないのかな・・・
カルに対してそんなこと思ったこと無いんだけどな・・・」
フウ・・と一つ溜息をついてルナは言う。
「慌てて決めることではなかったのかも知れないとは
思った・・・・でも・・リュクシスに素直に言ったよ・・・
分からないから、今は(仮)でも良い?って・・・
リュクシスは良いって言ったよ・・・でもカルに対しては
いけなかったのかな・・・でも・・・・分からない・・・
『リュクシスと(仮)に婚約することにしたの』って
カルに言うのは、はっきりしてないように思ったの・・・」
「・・・・これって・・・なんか・・
『恋バナ』って言うやつなのか・・?・・」
自分から始めたくせにいかにも居辛そうに
風のジャラクがそう言う様子に、
ルナはにらんでジャラクの、頭で羽の毛繕いしている
風の精獣のヒューを奪い取って抱き込む。
主は無関心そうな顔をしているのに、
水の聖獣のモリガンが、
普通の犬のように慰めているみたいに
ルナの体に擦り寄ってきた。
「ありがとう・・・モリガン・・・」
火の精獣サラマンダーのトカゲだけが、
そんな中、物言いたげに火のセーンの首の後ろから
視線を送っていたが、気づかれなかった。