覚醒1
・・・・貴方は気づいているだろうか?
時々私と居ても、周りを親しい人に・・
自分の師匠、友達、護ってくれる自分の国の人達に
囲まれていながらも寂しそうにしているのを、
誰かの姿を捜し求めているのを・・・
失ってしまった家族を探しているのだろう、
掛け値無しに甘えられる人を探しているのだろう・・
幼い貴方だから
でも貴方は気づいていない
貴方が私の中に家族を感じで
必要としてくれるようになったのは
何故だったのか・・
「カルが倒れたのどうしてかな・・・?
私が言ったから?・・・平気そうな顔してたのに・・・
私、間違ってたのかな・・・?
・・・でも、私はいずれ何処かの国の王子か貴族の花嫁にならなきゃ
行けなかったのよ・・そう決心してた・・姉上の役に立ちたいから・・」
確かに貴方はそう言った
恋と言うのを知らない貴方がでも私の求婚を受けて
そう決断した。
その時の私の切なさを貴方は知ってはいない。
貴方は、私を選ぶと言いながらいつも彼を気にして・・
貴方は、家族と彼を探しているのではありませんか?
家族と彼が居ないから埋め切れない寂しさを
感じているのではありませんか?
「・・姫・・・・」
早朝に発ったリュクシスは、
エトナに向かうルナ達と別れ、馬上の人となっていた。
リュクシスと共に向かうのは、サフラの近衛騎士2人、
彼らは他国の皇子であるリュクシスを丁重に、
兄皇子の元へと送り、さらに、
二人を、国元に無事に帰す任務を受けていた。
「・・・また・・・必ず・・・」
別れる時にギュッと抱き締めてくれた
また必ず会いましょうねと
仮だけど、婚約するって約束したのだからと
そう言いながら彼女は、自分のことを家族・・
兄のようにしか見て居ないと、
分かっているのだけれど、
兄としてでも良い、そのまま兄を演じるから
けして想って欲しいと思わないから
・・・もう一度会いたい。
・・本当は、離れたくなかった。
「・・・まさか・・・こんな気持ちを抱くことが
あるなんて思ってもみなかった・・」
小さく囁くリュクシスの声は、風に吸い込まれて誰の
耳にも届かなかった。
「・・・どうしたの?」
シエザの声に思わず俯いていた顔を上げて其方を見る。
やっと手に入った馬はリュクシス皇子に譲ったので
ルナ達は徒歩でエトナに向かう船場まで向かっていた。
「・・・え?・・何?」
「ずっと俯いたままだったからね・・・」
地の聖騎士候補として異国エーティルから迎えられた
シエザは、『自分は守銭奴でお金の為ならなんでもする』と
言いながら結構面倒見が良い事を、ルナは知っていた。
「ありがとう・・・ちょっとね・・」
「皇子と別れて寂しいの?・・・
好きだったの?」
ありがとうと言われて、
照れたような表情を浮かべながら、
ちょっとだけふざけた様にそう言うのに対して
ほんの少しだけ微笑んでルナは思う。
(シエザが敬語を使わないのって照れ隠しって気もする)
ルナは、しばらく考えてから、答える。
「・・・寂しいかな・・・・
カルも王宮が壊れて、行方不明のまま
見つからないし・・・
『好き』って言うのは分からない・・
大好きではあるけど・・・それに婚約したいけど・・」
「ふ~ん~サラッと凄い事言うわね・・」
「それに・・・リュクシスの体心配だし・・
病気なのかな・・・?」
ちょっと考えた表情の後シエザは
「そうね・・・そう言われていたわね
公式行事にもあまり出てこないってことだったし・・・
まあ皇子って言っても、庶子、
それに4番目とかになるとね・・・」
シエザがリュクシスと同じ出身だったと言う事に
今更ながらに気が付いた。
それほどシエザはサフラの言葉が堪能でなじみきっていた。
「あの皇子って王様がお手つきしちゃった
いわゆる旅の踊り子の子でしょう?・・・良くある話よね・・」
「・・・!!?・・・そんな情報どうやって・・・?」
「ふふ・・で、姫様は、リュクシス皇子が
好きなのかしら・・・それともカルとかいう子?」
「おーい!誰かが倒れているぞ!・・・
子供だー!」
リュクシスが好きかそれともカルが好きなのか
別にシエザに言わなくて言いと思う・・・と
憮然としたルナの耳に先を歩いていた者の
そんな声がその時した。