一人じゃない4
「それで、その張られた結界・・・
しかも最も守護が強いとされていたサフラの
結界をいきなり破られた訳だけど、
おそらく狙いはサフラの国・・・あるいは
サフラの国の何かだけど・・・ちい姫を護れるか!?」
シアリス叔父のその言葉に、カイルは、
暫く黙り込んだ後、深く頷いた。
――――約束した・・・
サフラの姫を渡す事を――――――
――――その姫は私の花嫁―――――
――――私の半身―――――
――――叶えられぬと言うのならば
国を滅ぼすと―――――
・・・ルナ・・・ルナ・・・
僕の・・・大切な・・・
純粋で・・素直で・・とても優しい
穢れの無い女の子・・・穢してはならない大事な子・・
暗い何処までも暗黒が続くその世界で
その深紅の髪だけが色づいていた。
「会いたい・・会いたいよ・・僕は・・」
重そうに開いた目蓋の裏側の瞳の色は黄金
ゆっくりと髪と同じ深紅の睫毛が上がって行くのと
同時に瞳の黄金が濃くなってゆき、
明るい茶色瞳へと変化していった。
「お母様・・・・まだ生まれないの?」
「よほど待ち遠しいのね・・・・
この子は幸せな子ね・・・お姉様も、お母様もお父様も
みんなみんな早く会いたいと思っているのだから・・」
笑みを含んだ幸せそうな女の人と、
小さな女の子の声がする・・・
二人とも何処かで聞いたような懐かしい声、
「お母様、この子は女の子よ・・私には分かるわ
女の子でとっても強い魔力を持っているの
月の女神様みたいな光の輪が見えるのよ
可愛い可愛い私の妹」
「貴方とこの子は私の宝物よ・・・・・サラ」
(サラ!?)
そうだ!この声・・・この声はお母様の声・・・
・・・これは、母上と小さな頃の姉上
どうして?・・・
姉上の妹で、とても強い魔力を持っている?
誰!誰の事を言っているの?
「・・・・何と言う事だ・・・この子が・・・・
私達の愛しいこの子が・・・ルウナ・・・月の女神・・」
「・・・あなた・・・・この子は・・この子は
私達の子です・・サラもルナも私達の愛しい子です」
・・・温かい・・・
温かい何かが落ちてきた額に頬に・・・
「・・・・この子を・・・渡しはしない・・
この力が・・この子を探す標となってしまうのなら
隠してしまおう・・・この子は
ただの魔力を持たぬ人間として・・・ルナ」
「・・・・!!・・・」
暑くも無いのに額から汗が噴出していた。
「・・・夢・・・・!?
・・・なんの夢・・・誰の・・・・」
ウトウトと、ベットの上でうたた寝しているうちに
夢を見ていたらしい。
ズキズキとする頭に手を当て、
先ほどの夢について考えていた・・・
現実感があるようで
幻のようで、でも何故かそのままにしてはいけない気がした。
・・・カルの深紅の髪を見たい・・・
あの髪が懐かしい・・・あの瞳が・・
太陽に照らされた時黄金に見えるその色が愛しい・・・・