にぎやかな旅4
「どうしてルナが来てた事黙っていたのよ、
街に出て行っちゃったじゃないよぅ!!」
サラがルイドの胸を激しく叩く。
「あの子はまだ小さいのに、お父様とお母様に頼まれたのに、
探しに行かなきゃ!!早く探しに行かなきゃ!!」
少し青ざめた顔をして、
そのまま探しに行こうとするサラの腕をルイドがつかんで止める。
「行くなって言ったら・・?」
少し寂しそうに目を伏せ、首はちょっと傾けて見せる。
「・・いっ行くわよ!!」
私を誘惑するつもりかしら、そう思いときめいてしまう胸を押さえ
サラは、ルイドの発する色気に負けまいと強く答える。
ルイドに負けずにルナを探しに行くのだと、心に強く誓う。
「・・ふーん・・俺よりもあの子供を選ぶのか?」
何気ないことを尋ねる様にルイドは、
表情も変えずにそんなことを言った。
つまらなそうにサラの腕を放した後、
ルイドは、忘れ物とでもいうようにサラの髪に口付けた。
驚き振り返るサラと見つめ返すルイド、
見つめ合う二人の後ろで、
宿の庭に涼みに来ていた他の客の集団が、
話をしているのが聞こえた。
「・・・しかしこの街も治安が悪くなったものね。」
「本当本当!!人攫いなんてね・・物騒だよね。
どこに売られるんだか・・女の子で、10~15くらいが一番危険なのでしょう?・・」
それを聞いていたサラは、すっかり血の気の引いた顔になって、
「ル・・・ル・・ルナァー!!」
と叫んだかと思うと慌てて駆けて行ってしまった。
その後ルイドは、一つため息をつくと、宙に手を伸ばし
何かを呟いた。
その頃カイルはルナにもサラにも外に出ないという約束を貰っていたので、
すっかり安心してしまって、
宿の仕事を手伝ったり、賞金の出る武術大会等の情報を集めていた。
「姫様は、私達もやりましょうか?と聞いて下さるけれど、
女王や姫様に苦労はさせられないし、旅費がいるし。」
そう呟き旅費を稼ぎ出す算段をしていた。
カイルは、こんな姿国元の仲間に見せられないとふと思って
微笑んでいた。
「なあ、もしかしたらかなりこいつ高値で売れるかもしれないな?」
「この手、この顔見ろよこりゃあどっかの金持ち娘だぜ~」
下町の古びた建物の一室、ルナをさらって行った男二人は、
そんな会話をしていた。
二人の前には売り飛ばす時に暴れられない様に、気絶されられたルナが寝かされていた。
できるだけ高値で売れるように綺麗な服も着せてある。
「俺達にも運が向いてきたな!!」
「こんなとこでくすぶってたまるかよな?今はこんなことしてても、
今に国の政治を動かすような奴になって・・」
「一生、生活に困らないように・・食い物に困らないようになりてえな!?」
2人熱く自分達の未来を話す。
もう少し金がたまったら今の仕事から足を洗おうという事、
将来二人で商売を始めようということ、子供は2人ほしいこと、
その時静かに部屋の扉が、開いた。
「あ~あ~何だぁ~ルナ気絶させてくれてたんだぁ~ありがとう~。」
そこに居たのは、先ほど2人にあっけなく倒された
深紅の髪の髪の少年であった。
・・・その夜、街からこつ然と2人の男が消えた・・・。