大切な存在2
私は、皇子が、初めから好き・・・」
ルナの言葉にリュクシスは、淡く微笑む、
「・・・そう言ってくれて・・・・ありがとう・・」
「・・・・・皇子は他の国の皇子なのにね・・・皇子は皇子の
立場があって・・想いがあるのだと思うけど・・・大好きよ・・・
ずっと傍に居てくれたらなって思うの・・
わがまま・・・ね・・・。」
無性にリュクシスに抱っこされたいような、
「傍に居るよ・・・大好きだよ・・」
と言ってもらいたいような何だか甘えたな気持ちを
心の奥に封じ込めながら
「ごめんね・・」と言って苦笑を浮かべた。
「・・・・・・・姫・・・もし・・もし、私が・・」
ルナの寂しい微笑みにリュクシスは窓の縁においていた掌を両方離し
体全体をルナに向けて唇をかみ締める
視線を落とし躊躇ったような一瞬の間の後、再びルナの瞳に
視線を戻し口を開きかけてまた閉じる。
「・・・もし・・・私が・・・」
リュクシスは目を細め、瞳には切なげな光が宿り、
頬は心なしか朱に染まっている。
「・・・皇子・・・?」
リュクシスの様子にどうしたのだろうかと思い、
ルナは声をかけた。
「・・・ルナ姫・・・私が・・このままサフラに留まりたいと
・・・・婚約を正式なものとして・・・このまま・・国に帰らずに・・
・・死のその時まで・・・私は・・・・」
「・・・どうしたの?・・・皇子?」
「・・・私は、本当は・・仮でも、父や母や兄弟じゃなく
・・・本当に姫のことを・・・!!」
初めて見た、リュクシスの頬を真っ赤にして
必死に何かを言おうとしている姿に
ルナは黙って言葉を待とうと、
リュクシスのどこかキラキラして見える瞳を
真っ直ぐに見つめ返す。
「・・・!!・・・・ウッ・・クッウゥ・・」
リュクシスは言葉を続けるより先に
体をくの字にして突然前のめりに床に膝をついた。
ゴホッ・・ゴホゴホゴホッ・・・ウッ・・
赤いものが見えた気がして
「・・皇子・・!!?・・・皇子?・・・大丈夫?
どうしたの?・・苦しいの!?」
一瞬大丈夫と言ったように口元を押さえたまま
ルナの方を見て微笑みの表情を浮かべるが
ゴホッゴホゴホッ・・ゴホッ・・・
止まらない様子で、再び苦しそうな咳き込みが繰り返された。
ルナは、必死でリュクシスにしがみつき片手で分からないなりにも
少しでも楽にしてあげたくて背中を擦り続けるが、
苦しそうなくせに、そっと握り締めた拳でルナを体から離し
「大丈夫・・」と呟くとリュクシスは部屋から出て行ってしまった。
「皇子・・・・。」
部屋に残されたルナは、不安と心配で
胸が押しつぶされそうだった。