にぎやかな旅3
「えっと・・童顔と呼ばれる人は、全体的に・・何々?
顔が、短く・・ふんふん!!目が大きいことが、多いっと!!」
「何をしているんだ?!」
『君もこれで童顔追放!!』という本をこっそりと読んでいたサラは、
突然後ろから人の声がしたので驚いて振り向いた。
「な、な、何もないわよ!!」
やたらゆっくりと、もったいぶってサラに近付いてくるルイドから
本を隠しながら、あわてて応える。
ルイドはチラッとサラの後ろに回した手を見ると、
「俺は別におまえが、『君もこれで童顔追放!!』だか言う本を読んでいようが
別に興味はないから大丈夫だよ。」
ルイドは本当に興味なさそうにそう呟きサラの隣に座った。
「ど・・どうして・・それを・・!!」
焦って言葉がつげられないままルイドの方を見るサラを見つめ返しながら
「おまえのことを見ているからだよ、他には興味無い・・。
俺はおまえを見ていることにだけ、面白さを感じるんだ。
・・・お前が考えてる事とかはどうでも良い。」
しばし顔を赤らめていたサラは、その後ふと気付いて
少しすねた様に
「上手く誤魔化されているけれど、何だか私、
行動だけを、ただ観察されているの?!」
小さく呟きそっぽを向く。
その姿を満足そうに見つめながらルイドは、サラの髪をそっとすくい
口付けた。
驚いて身を離そうとするサラの肩を引き寄せその手を頬へとたどらせ
驚きで目を見開いたままのサラにキスするように顔を傾ける。
ガタン!!
物を蹴り倒したような音の後、誰かが、走り去るような音がした。
「フフッ・・サラ、今ルナが来ていたぞ・・・」
口付けを寸前で止めて、ルイドが楽しそうにそう呟いていた.。
「ルナ~さあてわぁ~僕と2人きりになりたかったのかなぁ~
ね~ね~どこに行くの?」
「うるさいなぁ、お願いだからちょっと黙っててよぅ!!」
あの後、サラとルイドがキスしようとしている場面から離れたルナは、
カルを誘って夜の街に出た。
「ちゃんと近くのタルを倒して来たから姉上が追いかけてくるはずだよ!!
それまで家出するの!!」
膨れっ面で、ルナはそう言いながら、
カルの服の裾をしっかりと持って歩いていた。
さすがに夜ともなるとにぎやかだった街も人気がなくなり、かわりに
大通りから路地裏に続く道筋にちらほらと客引きの女達や、
甘い匂いのするタバコを吸って目がうつろになった男達が現われ出す。
「なに?ここどこ?カル・・・知ってるよ、ね?」
「さあ?」
2人は、いつの間にか大通りから外れ下町の一角に入ってしまった様だった。
「さあって・・自信満々に進んで行くからぁ!!・・ああ・・もう!!」
カルを前に行かせたのは、自分自身であった。
「坊や達ぃ~こんな所で何やってるのぉ~?」
「お兄さん達お金が無くて困ってるだけどさぁ~」
声を掛けられビクッとした後、ルナは、恐る恐る後ろを振り向く。
「あれ!!こっちは女の子だぜぇ~」
声を掛けた男2人の内の一人が、
素早くルナの顎に手をかけ顔を確かめ
抵抗する隙も与えずに肩の上に荷物の様に抱え上げた。
気付いて暴れるルナを難なく押さえこむと
「へへへ、中々可愛らしくて
元気なお嬢様だな~これは結構上玉だな
・・こんな子がこんな所にうろついて居るなんて
いけない子だな~」
にやりと笑いルナを連れて行こうとした。
「止めといたらぁ~ん?」
のんびりと緊迫感の無い声と表情でカルが止める。
男達は、その茶目っ気を含んだ茶色の瞳の奥にある、不思議な光に
怯えながらもカルのみぞおちに蹴りを入れた。
「ななんだ!!対した事ないじゃんか~!!
男の子は要らないんだよ!自分も連れて行かれなかっただけ
ましと思いな!」
他愛なく気絶するカルの姿をルナは目を見開き見つめていた。
「カルー!!」
ぐったりとしてしまったカルの名を呼ぶルナの声が、
下町の路地裏にいつまでもこだましていた。