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大切な存在1

「・・・・死んじゃったら・・・何も出来ないよ・・


それで終わり・・・大好きって言ってもらえないし、


大好きって言えなくなる・・」


涙を堪えながらの言葉に袖を握る手に知らず知らず力が入り


引っ張らんばかりの勢いでリュクシスの胸に顔をうずめる。


ルナが思っている人達が誰なのか分かりすぎるほどに分かって


しまってリュクシスはその人達の代わりにルナを抱き締め




「・・・良い・・ん・ですよ・・大丈夫ですよ・・・


この世で一番愛しい子・・・可愛い愛しいルナ姫・・。」


出来るだけ大人っぽく聞こえるように


ルナより遥かに大きな大人が、父や母が子供に言うように


少しだけ大人の少しだけ背が高い14歳の体で心だけれど、


めいいっぱいルナを包んであげて、何度も愛しいと、


好きだと言ってあげたかった。




「・・・魔獣は幸せですよ・・・最後は死んでしまったけど、


少女に好きだって・・・大好きって言ってもらったんですから


・・・・この後が無くても一度でも言ってもらえたんですから・・」










リュクシスは、


サラのように年上だけど、ルナが、しっかりして


守ってあげなければならないと思う人ではなく、


下手すると計略に落とされそうな位の大人びた頭のよさを感じた。


そしてシアリスのように臣下として主を教育するのとは違って


立場が対等で・・・そしてカルのように傍に居てくれるけれど、


気障な言葉や、王子様発言はするけれど、


始終「お嫁さん」と言って、落ち着かない気持ちにする事は無く、


頼りになって、素直に甘えられて


傍に居てくれて、優しくて、ルナは安心できた。


















その夜は盛大に追悼の宴が行われるということになり


村長の家に皆が料理や灯りを点す蝋燭、酒、楽器を持ってきていた。


「皆、これからは月の女神の御許で苦しみもせず、悲しみもせず


その胸に抱かれて共に眠るのだ」


皆がそう言って、


喜ばしい事だと騒いでいるのを、


ルナはリュクシスと一緒に見ていた。




「本当に喜ばしいと・・・思っているのかな?」


「・・・どうでしょうね」








女神の御許に・・・人の生物の生を終え苦しみも悲しみも無い世界で


只女神に抱かれること、それが、喜びなのかは


生きているものには分からないことだった・・・・














「それが、嬉しくて、喜ばしくて・・・


本当にそう思っているのかな?」


「・・・どうでしょうね」


ルナは、村長の家で与えられた自分の部屋の窓の縁に、


置いた両腕を枕に、左頬をつけてブツブツ言っていたが、


不意に、斜め上から縁に掌をおいて


同じ所を見ていたリュクシスを見上げる。




「皇子は、死にたいの・・・・?・・まだ死にたいの?」


「・・・・・・」


庭先からこちらに視線を戻し、


無言で見つめ返すリュクシスに対して、少しだけ


顔を近づけるように身を起し、


ルナはずっと言いたかったことを言う。


気持ちがやはり繊細になっているらしい。




「・・・私は皇子のこと好きよ・・・」


思い切って言った後、ひとつ息をして続ける。




「・・・死にたいのどうして?って私ずっと気になってた


本当のところは、婚約しても良いよって言ったの・・・


そんなこと言う人を、ほっとけなかったから・・・


悲しい目して、興味無い目して、死にたいって


言ったから・・・始めから好きな人がそんなこと言うから・・。」




「・・・ありがとう・・・」


夕暮れの赤い太陽の光に照らされて今にも消えてしまいそうな


儚げで透明な笑顔をルナに向け、リュクシスは、


少し掠れたような声で呟いた。

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