殺したのは3
ルイド・・・ルイドが父様と母様を・・・?」
目覚めた銀の髪の青年の瞳に映ったのは
月の光のようなライトブラウンの髪ときらめく鋭い光と鳶色の瞳だった。
「・・・サラ・・・・?」
まぶしそうに、
何も理解出来ないでいる子供が無邪気に親を見上げるように
ルイドはサラをただじっと見ていた。
「・・・ルイド・・・ここを破壊したのは・・父様と・・
・・か・・さま・・を・・ころし・・たのは・・貴方・なの・・」
刃を持った震える手がその言葉の答えを待っている。
「・・・・うん・・」
ルイドはサラの両手に握り締められた刃を
瞳に映しながらも気にした様子もなく、
上から降ってくる塩の味の雨を
頬に額に受け子供のような表情で頷いた。
「・・・俺の手が体が・・・力が殺した。・・・覚えてる
王を貫いた瞬間を、王妃の体が燃えた瞬間を・・・
魔王が・・・・深紅の魔王が俺の中に入ってきた時を・・」
「深紅の・・・魔王・・?」
呆然と問い返すサラに、目覚めたそのままの体勢のまま手を伸ばし、
起き上がる事さえせず、サラの髪を指で何度も梳きながら答える。
「・・俺の父親。
・・・絶対の守護を持つ王宮の中で動ける器が
欲しかったんだ」
サラの髪に愛しげに頬を寄せる青年の体に幼子の心を持つ
愛しい人をやがて震える腕で
堪らない気持ちでサラは抱きしめた。
「・・・貴方が好きよ・・・やっぱり好きよ・・・」
涙が滲んでどうしたら良いのかサラは分からなかった。
足元には、手に持っていた刃が落ちてしまっていた・・
「カル、早く目覚めたら良いのにね
元気になったら良いのにね、皇子。
そして一緒に遊べたら良いね・・・私が皇子と婚約しても
結婚してもカルは友達だよね、一緒に居てくれるよね。」
少し悲しげに、でも希望に満ちた表情でリュクシスに問い掛ける
ルナにリュクシスはただ「そうですね」と
保証することしか出来なかった。
ぐあああああ!!
もうすぐで倒せるとその場に居た皆が思った時、
「その子を殺さないでー!!」
その声に振り向くと家々の廃墟の間から
一人の少女が飛び出してきた。
繋ぎ目の無い頭からすっぱり被った形の萌黄色の服に
慌てて駆けて来たのか泥が飛び所々が少し汚れている。
「・・・・・あ・・危ない!」
とっさのことに唖然として見過ごしていたルナは、
目の前を通る過ぎようとしている所を
慌てて止めようと2つ、3つ年下らしいその少女の腕を掴むが
跳ね除けるように振り切られてしまう。
「・・・ま・・待って・・魔獣が・・・」
「私のワンちゃんなの!・・怪物じゃないのチイちゃんなの~」
(ワンちゃん?・・・あの・・あれ(魔獣)が・・!?)
瞳に映るのは到底犬には見えない
恐ろしげな姿の魔獣・・・・
でもそれに向かって「わんちゃ~ん!」と
涙を浮かべて駆け寄ろうとしている少女。
「やめてよ・・・殺さないで・・・痛い事しないでチイちゃんに!」
今にも切ろうとしていた火の聖騎士の腕をとり瞳を真っ赤にしながら
涙する少女に聖騎士達も戸惑った様子で思わす武器を下げてしまった。