にぎやかな旅2
指の数ほども逃げれずじまいのルナの前で
青年は、サッとひざまずく。
「姫様、姉君が、心配なされます、どうぞおもどり下さい。
と大通りの真ん中で格式ばった騎士の礼をする。
「カイル・・・カイル=イーズ・・外では姫は、ダメでしょ!」
ルナは、そっとカイルの耳元にそっと口をよせて囁く。
しかしルナ達姉妹の国の王宮警備隊の一員である“忠誠の人”カイルは、
「そのようなこと・・・姫様は、姫様です。」
首を振ってそう言い張ろうとする。
ルナが、如何したものかと考え込みカルが面白そうに見つめていたその時、
女達の奇声と周りのざわめきが聞え、人ごみが二つに分かれ
人垣の間を割って、ルナの姉サラ・ルージュと、その婚約者ルイドが出てきた。
「ルナ・・・あまり遠くに行っちゃだめじゃないの・・・」
サラは柔らかい栗色の髪と神秘的な金にも見える鳶色の瞳をした
少し童顔ながらも美しい少女で、
婚約者であるルイドは、絹糸を紡いだような流れる銀の髪、
引きこまれそうなほど深い緑の瞳をした美しい青年、
・・・・二人は、一対の美しい絵のようにそこに立っていた。
「どこに行ったのかと思って心配したのよ、もしこのまま迷子になって夕方のご飯に
間に合わなかったらお腹がすくわよ~!」
すっかり注目を浴びてしまった状況に赤面しながらルナは、
どこか論点がずれてるサラの言葉に、苦笑する。
(こんな風に世間知らな上に、少女趣味だからルイドなんか選んだんだ・・・
私がしっかり姉上をお守りしよう!!)
一つ頷き、ルナは決意を新たにした。
・・・このルナとカル、サラとルイドのカップル、
護衛のカイルの5人の旅はまだ始まったばかり、これから何が起きるのかは、
まだ誰も知らなかった・・。
________________________________________
「姉上?!姉上?どこ?」
宿に戻り食事をとった後、姉がそばに居ない事に気付いたルナは、
自分達が借りた部屋を探しまわっていた。
「あ~あ~ルナのエッチイイン」
きちんとノックして「入ってエエん」と言われて開けたのだが、
中には、どういうことなのか着替え中のカルがベッドで、布団のシーツを持ち
体をよじらせている。
「でっもぉっルナならOK!!」
目をウルウルさせてそんなことを言うカルに
一瞬目が点になり、その後ルナは、部屋に入らないまま
静かに扉を閉めた。
そのまま頭を整理しょうとカルの「ひっどぉ~い」という声を後ろに
階下へと降りて行く。
________________________________________
「なんだったの?」
男の子の免疫〇(ゼロ)のルナは、そうつぶやきながら
ふと階段の途中に設けてある出窓を見てみる。
「きれい・・・。」
そこに飾られた可憐で小さな花に思わず呟きがでた。
「けど、カイルも苦労性だな・・一国の女王と姫がお忍びとはいえ
いいかげんな宿屋に泊まるなんてなりません・・だもんね。」
笑みをこぼしながらその窓から外を見ると、
「あ!!姉上あそこに居た!!」
夜の闇の中ぼんやりとサラの栗色の髪が見えたような気がした。