表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/83

帰還1

「・・・・ご健勝の様子何よりです、

よくご来訪くださいました、お久しぶりですね、

ルゥイシス・カミルフ=リンク・ラトリオ・エーティル皇子。」


謁見の間で、元婚約者に対して、

女王自ら声を掛ける。


(・・・・・姉上・・・・顔がちょっと強張ってるよ・・・。)

王妹として女王である姉上のすぐ傍に居ながら

ルナはサラの様子に、ハラハラしてしかたがなかった。


(姉上は、素直だから・・・・ついつい顔に出てしまう・・

まあ、それが、最大の魅力なんだけれど・・)

苦笑いが浮かんでしまう。


「ありがとうございます、偉大にして美しきサフラの女王

・・・サラ・ルージュ=サフラ女王・・・・・」


エーティル皇子も言葉を返し、

当たり障りの無い会見が続いている。


「・・・・本日は、内々とはいえ、

めでたくご婚約されたという事をお聞きし、

お二人にお祝いの言葉と、

それから、祝いの品を持参して参ったのですが、

その、羨ましいお相手のお方は、今どちらに?」


闘技場で会った、

物静かそうなリュクシス皇子の兄上とは思えない、

かなり引っ込めながらも漏れ出してくる高圧さと、

ルゥイシス皇子のサド目が、キランと輝いているのが

心なしか見える気がする。



「・・・・・・え?・・・ルイドを?・・・・」


案の定、言葉に詰まり姉上は

チラリと私達の後見人でもある老宰相に

視線を送り助けを求める。


「残念ながら、ルイド様は、臥せって居られまして・・・

たいしたことは無いとは思うものの、

大事をとっておられます。

万が一、皇子におうつしする訳には参りませぬので

失礼ながら、席を外されています。」

本当はピンピンしているのに、

老宰相が、何とかそう言って、誤魔化そうとしたが、

殆ど、その言葉に被せる勢いで今度は、

皇子のお供が、発言した。


「・・・・・ルイド様と仰られるのですか、

どちらのルイド様なのでしょう?

さぞかし名の有る名門出身の方なのでしょうね。」


苦笑いと、嘘微笑を取り混ぜて老宰相が答える。


「ルイド様は、大変、強い魔力をお持ちの方で、

女王も命を救って頂いたことがありまして・・・・

その時、お二人は、

運命的な恋に落ちられたのですよ・・・。」






打てば響くように、用意されていた嘘八百と

真実を織り交ぜて返答をする。

もちろん、臥せってもいないし、

(ルイド自身出ようとしないし、

この場に出すのも得策ではないという事で)

もちろん、命など救ったというような

英雄的なことをしたこともない。

(家柄は無いが、巫子大国サフラで

一種至上の価値観を持つ強い魔力を持って、

命を救ったという英雄に仕立て上げる事で)

何とか女王の伴侶としての形を整え様としている。


潤滑油でも塗ったような話術、白熱する水面下の国と意地の闘い

すでに姉上は、白々しい笑顔だけ貼り付けて、

人形のように黙って座っている。


(姉上・・・・・黙って耐えるんだ!)





「・・・・・・・」

「・・・・ということで、ルイド様は、稀に見る魔力の持ち主でして・・・」

意気揚揚と老宰相がルイドの魔力の強いこと、美貌、年が近・・・そうなこと

数々の学識を持って・・・いそうなことを強調し、皇子もしだいに

言葉に詰まりかけてきた、

皇子がお供に付いて来た人達の方に振り返り、

目線で突破する策を促しているようだ。


・・・お供の人達も困ったように頭を下げている・・・・と・・・



「・・・・・ルナ姫・・・・ルナ姫にとっても、

その、この上なき素晴らしい魔力を持つ、美貌の英雄の君は、

義兄上になられるのですよね・・・・女王とそのお方との間に

お子様がお生れになったら今度こそは、きっと、

強い魔力を持つ王子と王女ですね、大変喜ばしいことですね。」


こともあろうに一番年が幼い私に話を振ってきた。



(・・・・・今度こそはきっと?・・・

それは、私が、巫子王国サフラ国の王族にあって、

まったく魔力を持たないことによる・・・

当て付け・・・としか思えなかった。)

今更というものだが、ルナは、思わず

苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。


「今代は、王子に恵まれず巫子王は従兄弟王子とか?・・・・

サラ・ルージュ女王は昔から巫子王に相応しい魔力を持っているので

それを期待されているとお聞きしていたのですが?・・・」


(原則的に国王の最も近しい未婚の兄弟姉妹、

場合によっては伯父・母、甥・姪

が付く巫子王。

歴史上稀に見る魔力を持ち、

巫子王となるのを期待されていた姉上が、

それでも、国王として即位したのは、

・・・・はっきりいって対になる男兄弟が居なかったのと

私が幼かったのと、

私に魔力がまったく無かったので

国王から生まれるはずの

次代の巫子王の可能性が無かったからだ。)



生まれた時から言われ続けてきた

心の傷を抉られて、ルナの

堪忍袋の緒は、爆発寸前

涙腺は、土砂降り寸前だった。



少し切れそうだ・・・・

ああ・・・姉上と、老宰相と・・・カイル、

それから師匠シアリスの視線を横顔に感じる・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ