にぎやかな旅1ー
「お父様、お母様・・あのね、・・ルナね、お父様とお母様のこと大好きっ!」
「それからね~お姉様でしょ・・それからね!・・それから・・・」
「それから・・?」
幼い娘を優しく見つめる父と母。
「それから、う~んとねぇ、みんな、みんな大好き!!」
やっと思いついたというようにそう言って幸せそうに微笑む幼子。
「私達もみんな、ルナが、大好きよ。」
両親は微笑み合い幼い娘をそっと抱きしめる。
「じゃあ・・・じゃあね・・・ずっと側に居てね!」
幼い娘の言葉に、両親は、黙って抱きしめる力を強める。
その優しい温もりに幼子は、そっと瞳を閉じ
「ずっと・・・ずっと一緒に居てね・・・。」
もう1度尋ねる。
「はい、はい。」
笑い堪える様に答えてくれた母、
「絶対・・絶対ね・・・約束だよ」
重ねて約束を取り付けようとする幼子に対して
「ああ・・・分かっているよ・・・」
父も答える。
「・・・フフ・・甘えんぼさんね・・・」
こだまする笑い声・・・幸せな家族のひととき・・
ずっと永遠に続くと思っていた・・・あの日が来るまでは、・・・
「お父様・・・お母様・・・いやあぁーーーー!!」
「ルナ、ルナ!離れなさい・・お父様とお母様は・・・もう・・・。」
「嘘だ!そんなこと無い!!違うもん!・・ずっと、ずっと・・一緒に居るって
・・・なのに・・・どうしてーーーーっ!!」
・・・優しかった2人・・・幸せだった日々・・・それは一瞬にして終わりを告げた。
・・・無残な両親の死によって・・・・
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ここは、tear moon月の女神の祝福を受けた、魔法と剣の織り成す世界・・・・
・・・・その守護のもと緑あふれ、肥沃な大地が広がっている。
この世界には何でも願いを叶えると言われているムーンティアが、あるという・・・。
・・・数年後・・・・
海に近い商業都市の雑踏の中、旅装束の少女が、一人歩いていた.
何処となく膨れ面で歩くその幼い少女の名は、ルナ・フィリス。
さらさらとしたダークブラウンの髪を肩の上で切りそろえ
瞳は、少し薄い翡翠の宝石のような不思議な緑色をしていた。
少女であることがはっきり分かる可愛らしい顔立ちをしているものの
髪にも服にも飾り一つ付けない格好で、
「もぉ~!信じられない!!ルイドったら、また姉上と二人いちゃいちゃして
姉上は、私の姉上なのに~っ!」
と、つぶやきながら商人達の声の行き交う大通りを歩いていた。
ひしめきあう人ごみと喧騒の中で
ふと少女を呼ぶ声が聞こえたような気がして振り向く。
「そこのお嬢さん、この髪飾り買ってかないかい?」
「その壷は、はるか西の国から・・」
「これもっと安くならないの?」
「もっと良い品は、ないのか~~?」
耳を澄ましてみるがそんな声しか聞こえない。
気のせいなのかと先を急ごうとした耳に再び少年の声が届く。
「ル~~ナ~~!!」
人ごみを掻き分けながら嬉しそうに駆け寄ってきたのは、
少女の同行者の少年、カル。
「もぉ~、どこに行くのかと思ったよ!
僕をおいてくなんて寂しいじゃないかぁ~。」
追いついてにっこりと微笑む少年カルの
深い色合いながら何処か鮮やかな深紅の髪と
好奇心一杯に見開いて人懐っこそうな茶色の瞳を見ながら
少しだけ気まずそうにルナは片目を眇める。
「二人は、いつも一緒だよ~!僕の花嫁さん♪」
いつもの調子のカルのルナへの求愛に
一気にルナは真っ赤になって慌てる。
「だからぁ~!いつ私が、カルのお嫁さんになったの?
そんな事言った覚えないんだから!!」
まだ幼い思春期直前の二人がじゃれあっている様子に
通りがかりの人達がなんとなく温かく見守っているうちに、
「姫様ーー!!」
二人の来た方向から、再び呼び声がして、
青味を帯びた髪、意志の強そうな瞳の青年が姿を現す。
その声と姿にギョッとしてルナは、大急ぎで逃げだした。